2022.09.19 13:00 | ||||
オリックス・バファローズ | 6 | 終了 | 5 | 福岡ソフトバンクホークス |
京セラD大阪 |
待っていた劇的な決着
逆転優勝を狙う2位のオリックスが、首位・ソフトバンクとの天王山に3連勝。
順位は変わらずも、これで首位とはゲーム差なし。勝率わずか1厘差に詰め寄っている。
打線は初回、ソフトバンク先発・東浜巨に対して宗佑磨が安打で出ると、二死となってから4番・吉田正尚が19号2ラン。ひと振りで先制に成功する。
3回には先頭の福田周平から4連打で2点を加え、東浜を早々にKO。序盤で4-0とリードを拡大した。
しかし、オリックスの先発・田嶋大樹は3回までテンポ良く相手打線を抑えたが、4回に連打で無死一・三塁のピンチ。続く柳田悠岐は三塁へのゴロに打ち取ったが、宗のホームへの送球がバウンドして悪送球に。適時失策で1点を返される。
なおも無死二・三塁で、正木智也は遊ゴロに打ち取るもその間に1点。さらに二死後、牧原大成に適時打を浴びてこの回3失点。一気にリードは1点と縮まってしまった。
迎えた6回、先頭の今宮健太に二塁打を打たれ、続く柳田に四球を与えたところで田嶋は降板。右の正木のところで変則右腕の比嘉幹貴をマウンドに送ったが、相手も左の代打・川瀬晃を起用。ここでバスターが決まり、無死満塁となる。
オリックスベンチはこの窮地に宇田川優希を起用したが、代打・中村晃に適時打を許して4-4の同点。つづく牧原大成の打席では満塁からの捕逸で1点を献上してしまい、一気に試合をひっくり返された。
試合は1点差のまま終盤へ。オリックスはビハインドの展開ながら、山﨑颯一郎から阿部翔太、9回はジェイコブ・ワゲスパックという勝利の方程式を投入。執念で相手に追加点を与えない。
すると、迎えた9回裏。守護神のリバン・モイネロに対し、先頭の若月健矢が四球で出塁。福田周平が安打でつなぎ、無死一・二塁とチャンスを作る。
しかし、宗がバント失敗で一死一・二塁となり、中川圭太は空振り三振。万事休すかと思われた中、吉田正が初球を弾き返してライト前へ。二塁から福田が一気に生還し、土壇場で試合を振り出しに戻した。
延長10回表を本田仁海が2奪三振でピシャリと抑えると、ソフトバンクの10番手として登場したコリン・レイに対し、西野真弘がこの日3本目の安打で出塁。太田椋の犠打はレイが処理するも、一塁への送球が逸れて無死一・三塁。思わぬ形でチャンスが広がる。
野口智哉は申告敬遠で無死満塁。ここで途中出場の伏見寅威に打席が回ったが、変化球に空振りの三振。トップに返って福田も一ゴロで本塁アウト。たちまち二死となってしまう。
それでも、前の打席で犠打を失敗した宗が2球目の155キロをきっちりと仕留め、センターに弾き返す見事な一打。走者を還し、6-5でオリックスがサヨナラ勝ち。ソフトバンクとの3連戦に3連勝するとともに、ゲーム差なしに詰め寄ってみせた。
「やっと始まりみたいな感じ。終わりじゃない」
土壇場9回の同点打を含む、3安打・1本塁打で4打点の大活躍を見せた吉田正尚は、値千金の一打について「僕もシビれました」と笑顔。「ちょっと重苦しい雰囲気の中、繋いでくれたのでなんとか良いところに飛んでくれて良かった」と振り返った。
また、サヨナラ打の宗については「それまで苦しいプレーもありましたけど、最後はやってくれる、決めてくれる男だと思って見ていた」という。
殊勲の宗は激闘を振り返りながら「良くも悪くも今日は僕の日だ、と思って打席に入りました。年齢を重ねるに連れて泣きやすくなっていて……なんかすみませんでした」とファンに頭を下げると、スタンドからは大きな拍手が贈られた。
中嶋聡監督は「ベンチも誰一人諦めていなかった」とし、ヒーローになった宗には「明らかなミスですからね。それを自分で取り返そうと思っていたと思うんですけど、最後の最後にこういうことがあるんですね」としみじみと語った。
ひとつも落とせないソフトバンクとの3連戦に3連勝。最高の形で天王山を終えたが、「こういったあとにポコっと行かれたりしないように、また明日から頑張りたい」と指揮官はすぐに次を見据える。
20日は敵地に乗り込んでのロッテ戦。台風の影響で当日移動となるが、「本当にこの3つを取って挑戦権を得たというか、やっと始まりみたいな感じ。終わりじゃない」と浮かれることなく、気を引き締めた。
ヒーローの宗からは「残り6試合につながる良い勝ち方だったと思う。絶対全員で優勝したいと思います」という新たな決意も飛び出した。
この3連戦は宗だけでなく選手たちから「優勝」という言葉が多く聞かれ、改めて連覇に向けての想いの強さも再確認できた。
残る試合は6試合。優勝が決まるまで、落とせる試合はひとつもない。
取材・文=どら増田