上々の初登板
6日に東京ドームで行われた『侍ジャパンシリーズ2022』の巨人戦。侍ジャパンは終盤の一発攻勢で逆転勝利を挙げた。
この試合で5回頭から2番手として登板したのが、オリックスの宮城大弥。高卒3年目の21歳は大舞台でも普段と変わらぬ落ち着いた投球を展開し、2イニングを無失点に封じる好投を見せた。
日本シリーズで味わった悔しさと喜び
「やっぱり緊張しましたが、そういう最高の舞台に立てたことを感謝しています」と激闘を振り返った左腕。「身体もいつも通り元気だったので、なんとか5回を投げられて良かった」と初の中4日登板も苦にならなかったことを明かし、「僕の中ではすごく良いパフォーマンスができた。今後中4日で行くことがあるか分からないですが、すごく良い経験。ここ2年間で本当に良い経験ができているなと思います」と手応えを語った。
中4日登板の裏には、エース・山本由伸の故障離脱というアクシデントがあった。「いなくて少し寂しい思いもありましたが、みんなでカバーするという気持ちはより深まったのかなと思う」と、大ピンチを迎えて一致団結した感覚があったという。
また、今季限りで現役引退の能見篤史投手兼任コーチを「日本一で送り出す」と語っていたことについては、「言った時はヤバいと思いましたが、叶って安心しました」と安堵のコメント。
能見コーチからは「“良かったね”と。それだけ言われました」とのことだったが、第7戦の試合前には「神宮のマウンドは違うから気を付けてとか、ちょっとしたアドバイスをいただいて助かりました」と助言も受けていたという。
加えて、第3戦での“悔しさ”も第7戦の好投につながる原動力となった。
本拠地で流れを掴みたかった第3戦は、山田哲人に手痛い一発を浴びて敗戦投手に。「初球は良くて、2球目が甘めに入って3ランを打たれた。一番ダメなところで長打を打たれてしまって、すごく後悔というか、寝られないは嘘ですけど、3時間くらいしか寝られなくて。いつもより睡眠時間が短くなって、そんなに悔しい思いをしたんだなって、風呂に入っている時に思った」と、かなりの悔しさがあったと明かす。
「絶対にやり返そうという気持ちで調整していた。抑えられて良かった」。中4日のリベンジ成功は、若き左腕にとって大きな収穫となったことだろう。
「僕は表じゃないと思います」
リーグ連覇を成し遂げ、登り詰めた日本一。常勝軍団への機運も高まる中、高卒3年目にしてリーグ連覇に貢献した宮城には、今後もチームの柱としての活躍に期待がかかる。
自身は「陰ながら引っ張って行けたら。僕は表じゃないと思います」と控えめに話したが、マウンドに上がれば闘志を静かに燃やし、強気な姿勢を崩さない。
侍ジャパンメンバーに選出されたことに関しても、「また違った経験ができる。いろいろな人とコミュニケーションをとって、自分の良い経験につなげたい」と語っており、さらなる成長の糧とすべく、前向きな姿勢で臨んでいる。
高卒3年で通算50試合に登板し、ここまで25勝13敗。リーグ優勝も日本一も経験し、今度は日の丸を背負って世界の強豪との戦いへ。こうした経験を力に、これからどのようなキャリアを歩んで行くのか。宮城大弥の今後が楽しみだ。
取材・文=どら増田