勝負強い打撃にチーム打撃
ロッテの中村奨吾は、今マリーンズで最も替えのきかない存在だ。17年6月28日の西武戦から続いていた連続試合出場が、新型コロナ陽性判定を受けた影響で「630」でストップしたが、4月10日のオリックス戦で一軍復帰すると1試合も休むことなく今季は138試合に出場した。
体が強いというのはもちろんのことだが、何よりも攻撃、走塁、守備での貢献度が高い。打撃面で言えば、6月17日の日本ハム戦、4-4の9回二死満塁から決勝の3点適時二塁打を放てば、7月19日の西武戦で2-3の7回二死一、二塁の第4打席、森脇亮介が1ボール2ストライクから投じた4球目の高めのストレートをレフトへ逆転3ラン。ちなみに7月18日のソフトバンク戦、19日の西武戦、20日の西武戦の決勝打は全て中村だった。
9月8日の日本ハム戦では2-2の8回一死一塁の第4打席、堀瑞輝が2ボール2ストライクから投じた5球目の真ん中高めのストレートをレフトスタンドに放り込む決勝2ラン、9月23日のソフトバンク戦でも2-3の9回にモイネロからレフトホームランテラスに飛び込む値千金の同点ソロを放った。ここぞの場面で、勝負強さが光った。
“勝負を決める”バッティングだけでなく、繋ぐこともできる。4月22日のオリックス戦、3-0の8回無死一塁、髙部瑛斗が二塁盗塁を決め無死二塁となると、髙部を三塁へ進めようと3ボール2ストライクから徹底した右打ちで3球連続ファウル。最後は山崎福也のスライダーを二ゴロで三塁へ進め、レアードの犠飛で4点目につなげた。
5月13日のオリックス戦では、2-1の8回無死二塁の打席で、遊ゴロで二塁走者の髙部を三塁へ進め、佐藤都志也のスクイズで追加点。5月24日の広島戦では、0-0の初回無死一塁の第1打席、一塁走者の髙部が二塁盗塁を決めると、2番を打つ中村は二ゴロで髙部を三塁へ進める進塁打。マーティンの犠飛で髙部が先制のホームを踏んだ。同日の2-0の6回無死二塁の第3打席、一塁へバントを決め、二塁走者の髙部を三塁へ進めると、マーティンの内野ゴロの間に三塁走者の髙部が生還。
ノーアウトの場合、特に二塁に走者がいるときは進塁打を打ちにいくことが多かった。打率は.257で物足りないと思うファンもいるかもしれないが、得点を奪うために自らアウトになり走者を進めていたことを忘れてはならない。
好走塁に好守備
走塁では、“1つ先の塁”を狙う姿勢を見せ続けた。なかなか得点には繋がらなかったが、4月10日のオリックス戦では1-0の4回無死二塁からレアードの一邪飛で一塁手の捕球体勢を見て二塁走者の中村が三塁へタッチアップするなど、中村が二塁走者だった時に内野フライや外野フライで二塁から三塁へタッチアップすることが多かった。
全打順本塁打を達成した6月1日のヤクルト戦では、3-3の6回二死走者なしからレフトへ放った当たりで、レフトが弾いている間に二塁を陥れ(記録は二塁打)、レアードのセンター前安打で決勝のホームを踏んだこともあった。
また二塁の守備でも、4月12日のソフトバンク戦、3-0の9回一死一、三塁からグラシアルの詰まった打球を前にきてダイビングキャッチすれば、5月11日の楽天戦、3-0の7回一死一塁から炭谷が放った一、二塁間のゴロに追いつき難しい体勢で二塁へ送球し4-6-3のダブルプレーを完成させた。
6月8日の中日戦、9-6の9回一死走者なしからビシエドの高く弾んだ打球、バウンドをうまく合わせて一塁へジャンピングスロー、7月18日のソフトバンク戦、1-1の2回無死走者なしで谷川原のセンター前に抜けていきそうな打球をダイビングキャッチし座ったまま一塁へ送球しアウト。2年連続でのゴールデン・グラブ賞とはならなかったが、今季も守備で投手陣を何度も助けた。
来季に向けて、今季取得したFA権を行使せず残留することが決まった。残留を発表した際、球団を通じて「松本球団本部長の熱い想いを聞かせていただき、残る決意が固まりました。マリーンズに縁があって入団させていただき今年で8シーズンが終わりました。まだ優勝できていないので、このチームで優勝をしたいという想いが強いですし、今はその想いがより強くなりました」と力強いコメントを残した。
中村はチームに欠かせない存在だが、本来のポテンシャルから考えれば、打率3割以上、25本塁打、90打点くらいの成績は残せるはず。来季は今季以上の活躍を見せてほしいところだ。
▼ 中村奨吾の今季打撃成績
138試 率.257 本12 点68
文=岩下雄太