高卒3年目・長岡秀樹がゴールデングラブ賞を受賞
近年のセ・リーグでは、高卒の遊撃手が躍進する傾向にある。
昨季リーグ優勝を果たしたヤクルトでは、長岡秀樹が開幕スタメンの座を掴むと、シーズンを通してレギュラーを守り抜いて優勝に貢献。ゴールデングラブ賞も受賞した。
広島では、小園海斗が2年連続で規定打席に到達。長年チームを支えた田中広輔からレギュラーを奪っている。
中日も、昨季中盤から土田龍空が頭角を現してきた。オフにはチームの顔であった京田陽太(現・DeNA)をトレードで放出しており、登録名を変更した「龍空」を起用していく方針なのだろう。
DeNAは次世代のレギュラー候補として森敬斗を育成しようとしている。昨季はオープン戦で故障して出遅れたため61試合の出場にとどまったが、スタメン起用42試合は大和(65試合)に次いでチーム2位。京田が加わり争いも激しくなる中で、どのように育成されるのか注目でもある。
そして長らく坂本勇人がレギュラーを務めている巨人もまた、昨季は中山礼都が42試合で遊撃のスタメンを任された。すぐに世代交代というわけではないが、チームとして次世代の遊撃手候補を育てようとしていることは間違いない。
その潮流に乗るように、阪神では今季高卒5年目を迎える小幡竜平に期待がかかる。
平成以降、阪神の高卒遊撃手で規定到達者は不在
阪神はここ2年、中野拓夢がレギュラーに定着。ルーキーだった2021年には盗塁王、そして昨季はベストナインを受賞するなど、しばらくのあいだ遊撃のレギュラーは安泰かと思われていた。
だが、今季から指揮を執る岡田彰布新監督は、そんな中野を二塁にコンバートしてまでも、遊撃で小幡と木浪聖也を競わせる方針のようだ。
小幡は強肩に定評があり、守備範囲も広い。二塁・三塁も守ることができる器用さも持ち合わせている。
一方、打撃面では苦しんだ。昨季は一軍で49試合に出場し、プロ初本塁打を放ったものの、打率.188(69-13)と結果を残すことができなかった。
とはいえ、昨季は二軍で打率.331(175-58)を記録しており、打力向上の片鱗は示している。守備でアピールしつつ、打撃でも最低限の結果を残すことができれば、レギュラーへの道は近づいてくるだろう。
阪神の歴史を見ると、平成(1989年)以降で高卒の遊撃手が規定打席に到達したことは一度もない。
和田豊をはじめ、久慈照嘉や今岡誠、藤本敦士、鳥谷敬、そして木浪や中野と、つねに大卒か社会人出身の即戦力に近い選手たちが守ってきた。
高卒の選手でも、一時的に田中秀太や北條史也がレギュラーを務めたことはあるが、いずれも規定打席には届かなかった。
現時点での小幡は一軍での実績がないに等しいが、一気にレギュラーを摑む可能性を秘めている。
阪神の遊撃手における、新たな歴史の1ページが開かれることを期待したい。
文=BASEBALLKING編集部