NPBに復帰した澤村(左)と有原(右)

◆ 白球つれづれ2023~第5回・悔しさをバネに日本球界への復帰を決断した澤村と有原

 プロ野球の全陣容が固まってきた今月28日、注目の入団発表が2球団で行われた。

 一人は元レッドソックスからロッテに復帰が決まった澤村拓一投手、もう一人はレンジャースからソフトバンクに入団した有原航平投手だ。

 契約内容は有原が3年総額12億円プラス出来高(推定、以下同じ)に対して澤村の細部は現時点では明らかにされていないが、こちらも複数年で有原に準ずる程度の巨額契約と見られている。

 このオフには澤村、有原に加えて、前ブルージェイズの筒香嘉智選手の去就が注目されていた日本人メジャーリーガーだが、筒香はレンジャースと新たにマイナー契約を結んだ。WBCの侍ジャパンでは、大谷翔平、ダルビッシュ有に加えて鈴木誠也各選手がメジャーから参戦。彼らが「勝ち組」だとすれば、澤村や有原は激しい生存競争から振り落とされたかもしれない。だが、悔しさをバネに新たな選択をした。それはそのまま日本球界の再活性化とパリーグのペナントレース争いに直結する。

 34歳。プロ13年目を迎える澤村は、ロッテの熱意に応える形で3年ぶりの国内復帰を決意した。

 レッドソックスでの2年間は決して不本意なものではなかった。通算成績は6勝2敗13ホールドで防御率3.39。中でも自慢のスプリットを武器に103回1/3の投球回で101奪三振は中継ぎ投手としてトップクラスの数字。それでも戦力外のレッテルを貼られたのはチームの低迷と若返り策によるものだ。当然、他球団からの誘いもあったが、30代半ばに差し掛かる年齢とマイナー契約から這い上がるのは想像以上に厳しい。

 逆にロッテには、どうしても澤村を必要とする事情があった。昨年ロッテに途中入団して絶対的なクローザーを任されていたロベルト・オスナ投手がソフトバンクに奪われる形で移籍。益田直也投手以外にも守護神候補を探していたチーム事情に澤村はうってつけの人材だった。

 2020年にはシーズン途中で巨人から移籍したものの、わずか数カ月でメジャー行きを決断、この時の「借り」を返す意味からもチームへの恩返しを誓った。自らも米国暮らしを経験する吉井理人新監督の存在も大きい。

「ああしろ、こうしろと言われたことは一度もなかった」と3年前の師弟関係を振り返りながら、自主性を伸ばす吉井監督の指導法に共鳴。今度はその指揮官から、投球だけでなく若手の指導やチームの雰囲気を変えるモチベーターとしての役割まで期待される。

 「野球を楽しむためにロッテを選んだわけではなく、勝つチームにするために言いたくないことも言っていく」

 新背番号は54番。黒木知宏新投手コーチが現役時代につけていたものだ。

“燃える闘魂”をチームに植え付けてもらいたいと言う願いに応える番である。

◆ 自らが選択した道で輝きを取り戻せるか真価が問われる

 オスナのソフトバンク移籍が澤村のロッテ復帰に影響を及ぼしたように、有原の場合は千賀滉大投手のメッツ移籍がソフトバンク入団を後押しした。

 このオフのソフトバンクの超大型補強は総額80億円とも言われている。

 日本ハムから近藤健介選手を7年50億円以上で獲得を皮切りに、DeNAから嶺井博希捕手、前述のロッテ・オスナや阪神からジョー・ガンケル投手など手あたり次第に補強を重ねていく。それでも絶対的なエースだった千賀の穴は埋まるものではない。有原の獲得は「ポスト千賀」の傷口を最小限に留めたいとする狙いがある。

 直近の2年間はオリックスの軍門に下っているチームにとって日本一奪還は至上命題。だが、千賀のいなくなった先発陣を見ていくと、東浜巨、石川柊太、和田毅、板東湧梧、大関友久と顔ぶれはいるが、絶対的な存在は見当たらない。そこで昨秋のキャンプから救援役の藤井晧哉、森唯斗両投手の先発転向も検討されている。

 レンジャースでは、故障にも泣かされて不本意な成績に終わった有原だが、日本ハム時代は6年間で60勝を記録した実力者だ。仮に5~10勝近くを稼ぎ出してくれれば儲けもの。まだ30歳の若さを考えれば、チームの救世主に躍り出る可能性もある。

 今季の日本球界には高津臣吾(ヤクルト)石井一久(楽天)新庄剛志(日本ハム)に加えて吉井理人(ロッテ)と松井稼頭央(西武)の新人監督を加えて5人の元メジャーリーガー指揮官が誕生している。

 それぞれの歩みを見ると米国時代は今の大谷やダルビッシュほど活躍できたわけではない。むしろ、苦労を重ねた経験が今に生きている。高津監督に至ってはメジャー挑戦の後、韓国、台湾、国内の独立リーグと渡り歩いてきた苦労人だ。

 今では誰もがメジャーに憧れる時代。世界一の舞台で脚光を浴びれば最高だが、夢破れる者もいる。むしろ、その生き様を問われるのはその後の働きかも知れない。

 澤村と有原。自らが選択した道でどんな輝きを取り戻すのか? 実力者の真価が問われる時期がやって来る。

文=荒川和夫(あらかわ・かずお)

【荒川和夫・プロフィール】
1975年スポーツニッポン新聞社入社。野球担当として巨人、西武、ロッテ、横浜大洋(現DeNA)等を歴任。その後運動部長、編集局長、広告局長等を経て現在はスポーツライターとして活動中。

この記事を書いたのは

荒川和夫

1975年スポーツニッポン新聞社入社。野球担当として巨人、西武、ロッテ、横浜大洋(現DeNA)等を歴任。その後運動部長、編集局長、広告局長等を経て現在はスポーツライターとして活動中

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