完全復活へまたステップアップ
DeNAの三嶋一輝が5日、本拠地で行われた西武とのオープン戦に登板。国指定の難病「黄色靭帯骨化症」の克服、そして完全復活を目指す右腕が、ホームのファンの前で1回無失点の好投を披露した。
出番は3-1とリードした7回、エドウィン・エスコバーの後を受ける形でマウンドへ。先頭の西川愛也は高めのストレートを見せた後のフォークで空振り三振に斬り、外崎修汰にはボテボテのサード前内野安打で出塁を許したものの、昨年は投げることができなかったという“右打者の外角中心”の組み立ても実践。
セットポジションの投球ではボールが先行するシーンも見られたが、後続を外野フライと内野ゴロに仕留めて1回を無失点。8回から登板した山﨑康晃へとバトンを繋いだ。
2019年以来という横浜スタジアムのお立ち台に登った三嶋は、「オープン戦とはいえ、こんなにたくさんの観客の前で投げることができて良かった。改めてプロ野球選手として、ひとりの人間としていろいろな人に支えられているんだなと感じました」と安堵のコメント。
つづけて「またハマスタで投げることが恩返しになる。自分のためにも、いろいろな人のためにも戦っていきたい」と力強く意気込みを語り、喝采と大声援を浴びた。
指揮官も「大きな存在」
三浦大輔監督も「途中ボールが先行していた時は『いつもの三嶋だ』と思って見ていましたけど……」とおどける場面もありながら、「ボール自体は非常に良かったと思いますよ。変化球も意識しながらやっていました。良い形でここまで来ていると思いますし、今の投球を続ければシーズンも非常に楽しみになってくる」と今後に向けて期待を膨らませた。
そのうえで「三嶋がブルペンに戻ってきてくれることで、ブルペンに厚みが増す。大きな存在だと思います」とも語っており、完全復活を遂げ、再びリリーフ陣の中心に返り咲くことを願う。
三嶋は「試合のシチュエーションもすごく良かったですし、声出しも解禁になっていて、その中でハマスタで迎える術後一番初めの試合というところで、オープン戦といえど結果も欲しかった」と今回の登板を振り返りながら、「リリーフカーから出てきた時、スタンドから拍手をもらったりとか、宜野湾でも“第一歩目”と言いましたけど、また違う一歩が踏み出せたのかなと思います」とつづけ、“帰ってきた”ことを改めて実感したという。
投球内容に関しても、「結構、右バッターの外に良い球が行きました。去年はあそこに投げられなかった。そういう意味では良くなっているというか、また新しい自分というか。いろいろな変化球を使って抑えることを考えた」とこれまでとの違いにも触れながら、「まずはバッターにしっかりとボールを投げ込めたことが良かった」と納得の表情。
一方で、「ノースリーにしたところとか、セットポジションがちょっと合わなかったところとか、反省点もあります。それは次回修正する」と課題も挙げながら、「多分これからもっと出力も出るだろうし、この時期に152とか出たことはあまりないので、そういう意味では順調に来ていると思います」とし、“まだまだこんなもんじゃない”と目をギラつかせた。
「去年離脱したということは、結果を求められる。いくら経験があるとはいえ、そこは競争だし、また開幕一軍を勝ち取らなければいけないという気持ちで毎日練習している」と語る背番号17。
もう一度ポジションを奪い取るという覚悟があるからこそ、「結果を出して、勝ち試合でゼロで抑えることはすごく大事だなと思います」と“結果”にこだわる姿勢を崩さない。
「1年間しっかり戦って、戦力になってこそ復活だと思う。いろいろな人が見てくれていることを意気に感じてやることがたくさんある。戦っていくというのはそういう意味も含めている」
不屈の男・三嶋一輝の描く復活劇は、やっとプロローグが始まったばかりだ。
取材・文・写真=萩原孝弘