WBC戦士のNPBでの注目ポイントは?
侍ジャパンの3大会ぶり3度目となる優勝に沸いたワールド・ベースボール・クラシック(WBC)。その余韻に浸る間もなく、NPBのレギュラーシーズンは3月30日に開幕する。注目はやはりWBCで活躍を見せた選手たちだが、彼らのシーズンでの注目ポイントについて紹介してみたいと思う。今回はパ・リーグの野手3人についてピックアップした。
■ 近藤健介
生年月日:1993年8月9日(29歳)
ポジション:外野手
身長・体重:171cm・86kg
投打:右投左打
出身地:千葉県
所属チーム:福岡ソフトバンクホークス
ヌートバー(カージナルス)、大谷翔平(エンゼルス)、吉田正尚(レッドソックス)とメジャーリーガーが並んだ上位打線の中で、彼らに負けないだけの存在感を見せたのが近藤だ。全試合2番で先発出場し、打率.346、出塁率.500とチャンスメーカーとしての役割を見事に果たして見せた。大谷が打者として力を発揮することができたのも、その前を打つ近藤の出塁が大きかったことは間違いないだろう。そんな近藤だが、このオフにはフリー・エージェントでソフトバンクに移籍。その大型契約と、2年連続で優勝を逃しているというチーム事情もあって、これまで以上にプレッシャーの大きいシーズンとなる。過去には腰を痛めて長期離脱となり、昨年はわき腹を痛めて5年ぶりに規定打席に到達できなかったことを考えても、WBCでの死闘による疲労は気になるところだ。ただ世界一を争う大舞台で満点と言える結果を残したことは大きな自信となったはずだ。シーズンでもその卓越した打撃技術で、ソフトバンク打線を牽引してくれることを期待したい。
■ 源田壮亮
生年月日:1993年2月16日(30歳)
ポジション:内野手
身長・体重:179cm・75kg
投打:右投左打
出身地:大分県
所属チーム:埼玉西武ライオンズ
WBC優勝の影の立役者と言えばこの源田を推す声も多いはずだ。1次ラウンド第2戦の韓国戦での走塁で右手小指を骨折。全治3か月という診断を受けながらもテーピングで固め、痛み止めを飲みながら準々決勝のイタリア戦から復帰すると、決勝までの3試合でフル出場を果たし、見事な守備で度々チームを救って見せた。守備にフォーカスが当たることが多いが、出場した5試合全てで出塁し、2つの盗塁を決めるなど攻撃面でも下位打線からチャンスを演出するなどその貢献度は高かった。気になるのは怪我を押して出場したことによる代償だ。開幕からしばらく離脱することは決定的であり、復帰の時期もまだ見えていない。チームにとってももちろん大きな痛手だが、昨年まで5年連続でゴールデングラブ賞を受賞している源田にとってもプロ入り後最大の試練と言える。ただ怪我を抱えながらのプレーでもその守備の技術は圧倒的だったことは間違いない。この試練を乗り越えて、更に一回り大きくなり、またチームを救うようなプレーを数多く見せてくれることを期待したい。
■ 甲斐拓也
生年月日:1992年11月5日(30歳)
ポジション:捕手
身長・体重:170cm・87kg
投打:右投右打
出身地:大分県
所属チーム:福岡ソフトバンクホークス
ここまではWBCで活躍を見せた選手を多く取り上げてきたが、逆に苦しんだ選手も存在していたことは確かだ。そんな選手では期待されたバッティングをなかなか見せられなかった村上宗隆(ヤクルト)の名前が真っ先に挙がるが、もう1人苦しんだ選手と言えば甲斐になるだろう。一昨年の東京五輪では正捕手として金メダル獲得に大きく貢献。しかし今大会では攻守ともに精彩を欠き、準決勝以降は中村悠平(ヤクルト)に先発マスクを譲り、決勝でも出場機会がないまま試合を終えている。まず気になるのはキャッチングだ。オフにはフレーミングを意識して練習に取り組んでいたと報じられていたが、150キロ中盤を超える速いボールにミットがついていけていない場面が目立った。またバッティングも完全にボールに振り遅れるシーンが多く、準々決勝以降では5打席で4三振を喫している。救いはまだまだスローイングの強さがあるところだ。強化試合の中日戦でも大活躍していたルーキーの田中幹也の盗塁を完璧に阻止している。年齢的には中村よりも若く、老け込むにはまだまだ早い。王座奪還を目指すチームにとってもキーマンの1人であることは間違いないだけに、守備、打撃ともに今一度見直して、復活を目指してもらいたい。
文=西尾典文(にしお・のりふみ)