復帰後初勝利後に見えた世界は?
ロッテの種市篤暉は今季2度目の先発となった9日の楽天戦で、6回1安打7奪三振無失点に抑え、プロ初完投勝利・完封勝利を挙げた20年7月25日の西武戦以来、988日ぶりに白星を手にした。
種市が19年4月29日の楽天戦でプロ初勝利を挙げた際、『プロ初勝利を達成したときに見える世界や、壁を超えたとかありますか?』と質問すると、「特にはないですけど、ひとつの目標、通過点だと思うので、今満足してしまったら負けてしまうと思う。去年(2018年)みたいになってしまう。日々成長していけるように考えてやっていこうかなと思います」と初勝利の余韻に浸ることなく、次の登板を見据えていた。
プロ初完封勝利を手にし、再び初勝利を挙げたときと同じ質問をぶつけると、「9回のマウンドに上がったのは、おそらく高校時代もなかったと思うので、そこの部分に関して自信にはなりました。特に完封して何かが変わったということはないかなと思います。完封したからには、毎試合長いイニングは投げないといけない」と現状に満足することなく、高い向上心を持つ種市らしい頼もしい答えが返ってきた。
そして、20年9月14日に右肘のトミー・ジョン手術を受け、長いリハビリを経て、23年4月9日の楽天戦で手術後初勝利。プロ初勝利、プロ初完封勝利を挙げた時と同じ質問をした。
「単純に初勝利のソワソワ感はありましたけど、初勝利はひとつの目標だったので嬉しかったです」。
プロ初勝利した際は“通過点”と話していたが、「今もそれは変わらないかなと思います。たった1勝なので満足することなく投げていければと思います」と、19年当時と心境の変化はない。
野球日記にも進化
「プロに入ってから日記はつけていますね」。プロ入りから日記をつけることがルーティンのひとつになっている。背番号63番を着けていた19年当時、練習用のバッグにノートを入れて野球道具と一緒に持ち歩いていた。
19年取材した際には、「今日投げた感覚のこと。特に気をつけていることは、感情を入れて書いています。たとえば『ここ打たれたから、こういう気持ちになった』とか、『ここをこうしたからちょっと違うな』というのを書いていったら、次の場面で『こういう気持ちだった』みたいなのを思い出して改善ができる」と、試合で試した感覚、試合の中の状況、どのようなボールを投げたかを詳細に書いて、次の登板に向けた準備、自身の振り返りに役立てた。
あれから4年――。野球日記の内容に変化はあったのだろうか。「ブルペンの日、試合の日くらいしか書いていなかったんですけど、毎日書くようになりました。キャッチボールの感覚でも、気づいたことは書きますし、明日やりたいことも書いています」。自身の状態をより知るため、日記の内容もこれまで以上に詳しく書くようになった。
完封するぞ!
客観的に自己分析ができ、常に“進化”しようと高い向上心を持っている種市。
「2年半投げていなかったので、大した目標は設定しておらず、復帰後初勝利を目標にしていました。今の目標は完封したいというのが一番です」。次なる目標に、プロ入り2度目の完封勝利を挙げた。
それには理由がある。「完封して怪我したと言われていますけど、僕の中でそう思っていない。リベンジしたいというか、完封して次の試合も抑えたいと思います」。淡々とした口調ではあったが、種市の中にある熱さがこちらに伝わってきた。
復帰後初勝利から1週間――。14時から行われるオリックス戦の予告先発となっている。。ワクワクしたストレート、落差の大きいフォークで、もっともっとマリーンズファンを熱くさせて欲しい。完封勝利を達成できれば最高だ。
取材・文=岩下雄太