中日・福永裕基 (C) Kyodo News

 26歳。高卒選手ならプロ8年目。鳴かず飛ばずなら、いよいよ首筋が寒くなる年齢だ。

 中日のオールドルーキー、福永裕基選手の活躍が目覚ましい。

 17日現在(以下同じ)打率.312はベストテンの7位。中日勢にあっては細川成也、大島洋平選手らを抑えて最上位に位置する。どん底にあえぐチームにあっては、暗闇の中でわずかに見える光明のような存在である。

 同日の阪神戦では、立浪和義監督が内野陣の“シャッフル”を断行した。動きの緩慢な石川昂弥選手を三塁から一塁に回し、二塁が本職の福永を三塁に。打順も福永を二番に起用するなど、チームの活性化に活路を見出そうとしたが、またも敗戦。借金は両リーグワーストの「11」まで膨れ上がっている。

 背番号68の26歳。福永は昨年のドラフト7位で入団した。

 12球団の大半が5、6巡目で指名を終了する中で、残ったのは広島と中日の2球団。先に広島が久保修選手を指名して、一番最後に名前を読み上げられたのが福永だ。全体で69番目の最下位指名だった。

 スカウティング・レポートには「走攻守三拍子揃った即戦力。リストの柔らかい打撃で左右に安打を量産する」とある。

 社会人・日本新薬時代の20年都市対抗では2本塁打を記録して、一部で注目されるが、プロ入りを前に二度、三度と指名漏れの屈辱を味わった。年齢的にもラストチャンス。それすらあきらめかけた時に、拾われた。

 今季の中日は若手の育成に舵を切っている。昨オフには、阿部寿樹(現楽天)、京田陽太(現DeNA)選手らかつてのレギュラーを放出。代わってドラフトで村松開人(明大、2位)や田中幹也(亜大、6位)選手らの即戦力内野手を獲得。福永も辛うじてその輪の中に加わった。

 キャンプで真っ先に首脳陣の目に止まったのは田中である。

 166センチの小柄ながら、俊敏な守備とシュアな打撃で、開幕二塁の座を射止めかけたが、3月下旬に右肩を脱臼してリタイア。その穴を埋めたのが福永だった。

◆ ドラゴンズの逆襲に欠かせないピースに

 月別の打撃成績を見ても4月が打率.309に、5月は同.320とコンスタントに安打を量産している。今月5日からの対巨人3連戦では、初戦にプロ1号本塁打を記録すると、第2戦では8回に決勝の左前打を放つなど、勢いもついてきた。

「チャンスに打てるバッティングが出来ている。このままチームの見本になって欲しい」と指揮官も最上級の言葉で褒め称える。今ではドラゴンズの逆襲に欠かせないピースとなりつつある。

 これまでも、ドラフトの下位指名から這い上がってきた苦労人は数多くいる。代表例を挙げればオリックスの杉本裕太郎選手は15年ドラフトの10位。ロッテの福浦和也(現同球団ヘッド兼打撃コーチ)も93年の7位。投手として入団後、2000本安打を記録している名選手。指揮官まで上り詰めたのは広島の新井貴浩。98年ドラフト6位から猛練習で、本塁打王などに耀いている。入団時の注目度では上位指名組に譲っても、プロ入り後は横一線だ。

 少し、うがった見方をすれば、福永が、もし巨人の坂本勇人、吉川尚輝や西武の源田壮亮、外崎修汰各選手のような鉄壁二遊間のいるチームに指名されたら現在の活躍はあっただろうか?

 ほんの少しの「運」に見放されて指名漏れの屈辱を味わってきた福永は最下位指名と言う「運」と本人の努力で立浪竜の欠かせない選手にのし上がってきた。

 開幕からまもなく2カ月。相手球団のマークと研究はより一層厳しくなる。こうした“包囲網”を潜り抜けた時、福永の次なるステージが待っている。

文=荒川和夫(あらかわ・かずお)

【荒川和夫・プロフィール】
1975年スポーツニッポン新聞社入社。野球担当として巨人、西武、ロッテ、横浜大洋(現DeNA)等を歴任。その後運動部長、編集局長、広告局長等を経て現在はスポーツライターとして活動中。

この記事を書いたのは

荒川和夫

1975年スポーツニッポン新聞社入社。野球担当として巨人、西武、ロッテ、横浜大洋(現DeNA)等を歴任。その後運動部長、編集局長、広告局長等を経て現在はスポーツライターとして活動中

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