阪神・青柳晃洋 (C) Kyodo News

◆ 開幕投手も務めた虎のエースを襲った不振

 後半戦へのキーマンが、真価の問われるマウンドで結果を残した。タイガースの青柳晃洋にとって、11日のベイスターズ戦(倉敷)は自身の今季を左右しかねない一戦だったかもしれない。

 「誰も期待してない中で、勝てたらいいなってぐらいの気持ちでやる」

 登板前のエースらしからぬ発言には、そこまで味わってきたキャリア最悪の不振があったからだ。

 8年目の今季は、自身初の開幕投手を務めて白星もマーク。会心のスタートを切ったかに思われたがその後、なかなか結果が付いてこなかった。

 ローテーションに定着後はしばらく顔をのぞかせていなかった制球難が目立ち、ボールのキレも欠く。5月19日のカープ戦(甲子園)では5回7失点と炎上して翌日、出場選手登録を抹消された。

 「長かった」と振り返ったように、ファームでは1カ月半を過ごした。首脳陣も無期限での降格という認識。抹消期間が明ける最短10日、二軍で1度投げて……とそこにリフレッシュの意味合いは無かった。

 ならばと右腕はフォームを見直し、一軍では使ってこなかったカーブやカットボールの精度向上に取り組むなど、キャンプでしか取り組めないようなブラッシュアップに着手。実戦登板を重ねて手応えも感じてきていた。

◆ 後半戦も“開幕投手”「ずっと先頭に立って」

 降格前は一軍での投球内容を酷評することも多かった岡田彰布。ただ、背番号17の復調を気にかけていた。

 それが今回の昇格のタイミング。「オールスター明けを想定して投げささんと」と説明したように、後半戦の先発陣の中心となってもらうべく、あえて前半戦の最後に登板機会を与えた。

 当然、状態が上がってきたというファームからの報告もあった上での決断。一方で、この登板でシーズン序盤と同じような結果になってしまえば……。大げさではなく、青柳の今季を占うマウンドだった。

  「(昇格後)一発目である程度投げられて、僕にとっても大きな1勝。やっと帰ってこられました」

 首位争いを演じるベイスターズを相手に粘りの投球で、7回2失点の好投を披露した。

 青柳にとって実に60日ぶりとなる白星は“再発進”の号砲だ。

 “アレ”へ向けて本当の戦いが始まる後半戦。前半戦を総括した指揮官は、真っ先に“開幕投手”に青柳を指名した。

 「また開幕は青柳で行くつもり。後半戦はね、ずっとローテーションで先頭に立って引っ張っていってもらいたいと思いますね」

 7月22日、スワローズ戦の先発マウンドに青柳は立つ。大黒柱の逆襲がなれば、頂点を目指す猛虎の勢いは間違いなく加速する。

文=チャリコ遠藤(スポーツニッポン・タイガース担当)

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