ヤクルト・木澤尚文 (C) Kyodo News

◆ 厳しい7月の戦いを乗り越えて

 ヤクルトの木澤尚文は、開幕から気合のこもった投球でチームを支えてきた。

 シーズンも折り返し地点を過ぎ、疲労も蓄積されていく中で、7月は2試合連続で2失点するなど、10試合に登板して防御率4.22という成績に終わった。

 それでも、7月最後の試合となった30日のDeNA戦(神宮)では5-4と1点差の8回にマウンドに上がり、パーフェクトリリーフを見せた。

 4番の牧秀悟はシュート、5番の佐野恵太はカットボールでともに見逃し三振に切って取り、2奪三振の3人斬り。圧巻の投球にも「四隅を狙い過ぎることなく、ゾーンの中で勝負した結果いってくれたので、結果的にありがたかった」と、右腕は冷静なコメント。

 打線が直後に村上宗隆の19号ソロ、ホセ・オスナの適時二塁打で7-4と引き離し、最後は守護神・田口麗斗が締めて勝利を収めた。

 流れを引き寄せた木澤は「何とかみんなで追いつかれることなくつないでいたので、僕も何とか田口(麗斗)さんにリードしたままつなげられるようにと思って投げました」と振り返る。

 髙津臣吾監督も「ちょっと状態を落としたときもあったんですけど、また彼らしい球が戻ってきたのかなと思います。もう安心して1イニング任せられると思います」と奮闘を続ける右腕を評価した。

◆ マウンド上では熱く、降板後は冷静に自己分析

 今後も上位追撃を目指すチームの中で、欠かすことのできない背番号「20」。暑い夏を乗り切るためには「ちゃんと寝ることですね。睡眠をとるというのが1年間戦う上で大切だなと去年思った」と話している。

 8月最初の登板は3日の巨人戦(東京ドーム)。1-1と同点の7回からマウンドに上がり、二死から吉川尚輝に二塁打を浴びたものの、続く坂本勇人を左飛に仕留めて無失点に抑えた。

 リリーフである以上、気持ちの切り替えは特に重要だ。その点に関しては、木澤も「1年間長いので、精神的にも浮き沈みなく」と語っており、後半戦も日々新たな気持ちでマウンドに向かっている。

 「マウンド上では熱くなりやすいタイプ」という25歳。しかし、マウンドを降りれば、冷静に自身の投球を振り返り、次の登板に備えることができる。

 そんな木澤の魂のこもった投球が、チームの士気を盛り立てる。

取材・文=別府勉(べっぷ・つとむ)

【別府勉・プロフィール】
1981年生まれ。Web業界で取材や執筆、編集などのコンテンツ制作に携わってきた。2018年に「ベースボールキング」で当時ルーキーだった村上宗隆選手にインタビューを行い、現在まで東京ヤクルトスワローズを取材。2020年からコラムを担当。『夢追うツバメたち』連載中。NPB以外では、女子野球の現場にも足を運ぶ。

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別府勉

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