田村の助言で取り戻した本来のツーシーム
「今年はしっかり低めに投げられていると思います」。
ロッテ・中村稔弥のツーシームに手応えを掴んでいる。8月6日の楽天戦、1-2の8回一死二塁でフランコに1ストライクから空振りを奪った2球目の131キロツーシーム、空振り三振を奪った3球目の130キロツーシームはストライクゾーンからボールゾーンに落ちる素晴らしいボールだった。9月6日のソフトバンク戦でも、0-3の8回一死走者なしで近藤健介を1ボール2ストライクから空振り三振に仕留めた132キロツーシームも良い落ちだった。
「吉井監督からも1年目の時からツーシームは低めに低めにと言われていて、(今年は)投げられている確率が高いと思います」。
「感覚が良くなったのはそこからですね」と、2年目以降試行錯誤していたツーシームだったが、昨年8月26日の楽天二軍戦でのブルペンで「田村さんに試合前のブルペンで受けてもらっているときに、『ツーシームの球速が速くなっているよな』と言われて、ちょっと握りを深くというか、縫い目の外にして持ってああいう落ち方をしました。タムさんの一言がなかったら今まで通り投げていたのかなと思います」(22年8月31日オンライン取材)と、同日の試合で内田靖人から真ん中低めに落ちるツーシームで空振りを奪ったのをきっかけに、今季も感覚良く投げられている。
しっかり落とすためのコツを掴んだりしたのだろうかーー。
「コツはないんですけど、狙う位置とか自分でわかってきたかなと思います」。
今季は14回1/3を投げ、イニング数を上回る15奪三振を記録しているが、ツーシームで奪った三振は13個。また、8月以降の奪三振は7だが、そのうち6奪三振がツーシームだ。現時点ではプロ入り後、最も高い奪三振率(9.42)。ツーシームが低めにしっかり落ちていることも要因のひとつといえそうだ。
ロングリリーフ
本来のツーシームを取り戻した中村稔は、ロングリリーフやビハインドゲームでのリリーフで登板することが多い。
勝ちパターンの投手と違って、決まったイニングでの登板ではないが、準備面での難しさは「特にないですね。初回から自分がやることはやってという準備をしているので、難しさはないです」と明かし、「早い段階からどんな形でもやることを心がけています」と続けた。
ロングリリーフはプロ1年目から経験している。「それもありますし、コーチも最初から体とか動かしといてくれというのがあるので、臨機応変にやっています」。
現在一軍には左のリリーフが坂本光士郎、鈴木昭汰、そして中村と3人いるとはいえ、“左のリリーフ”は貴重な存在。中村にはロングリリーフができるという武器もある。「無失点に抑えて、チームに流れを持って来れるようなピッチングがしたいです」。ツーシームを武器に、残りの試合でもパ・リーグの強打者たちを抑えていきたい。
取材・文=岩下雄太