ロッテの茶谷健太は、移籍5年目の今季初めて一度もファームに落ちることなく、1年間一軍で戦い抜いた。
茶谷の経歴を振り返ると18年にソフトバンクを自由契約となり、19年にロッテの育成選手として入団。同年のオフに支配下選手登録となると、20年に31試合、22年は一軍出場がなかったが、22年はシーズン最終盤にショートでスタメン出場するなど57試合に出場した。他の選手に比べると、チャンスは多い方ではなかったが、少ないチャンスをモノにし、自分で一軍の居場所を作った。
吉井理人監督が就任した今季、「とにかくアピールするしかない。結果を残せるように」と意気込み、シーズンオフは「バッティング、守備、走塁も全部レベルアップしないといけない。バッティングと守備がメインになってくる。課題じゃないですけど、そこを一つでも克服できるようにやりたいと思ってやっていました」と、自主トレに励んだ。
今季初の対外試合となった2月11日の楽天モンキーズとの国際交流試合では「その前もいい感じで打てていたんですけど、捕られてしまったので、今度は返してやろうという気持ちで打席に立ちましたとにかく結果が出たことは良かった」と、適時打を放った。
2月14日からのNPB球団との練習試合では19日のヤクルト戦で3安打2打点、21日の広島戦で2安打2打点するなど、打率.360(25-9)とバットでアピールした。
オープン戦に入ってからスタメン出場が1度もなく、1打席勝負という日が増え、打席数を増やすためだろうか、ファームの春季教育リーグでスタメン出場し4打席立つこともあった。オープン戦では打席数が少なかったことに加え、安打がなかなか出なかったが、「打席数もそこまで立っていなくて、1日1試合で1打席立つか、立たないかだったので、そこまで気にしていなかったです」。その一方で、「1打席で結果を残さなきゃいけないというのはありました」と少ない機会で結果を残さなければいけないというプレッシャーはあったという。
オープン戦最終戦となった3月26日の中日戦で、オープン戦初安打を記録し、「本当に素直に嬉しかったです。正直、オープン戦もそこまで出られていなかったので、よかった」と移籍5年目にして初の開幕一軍を掴んだ。
「まずは打たないと試合に出られない。1打席でも2打席でも出たところで、なんとかと思ってやっています」。
開幕してからは今季初打席となった4月1日のソフトバンク戦、「良かったなと思います」とライト前に今季初安打を記録。『6番・三塁』で出場した6日の日本ハム戦で安打、『7番・一塁』で出場した14日のオリックス戦では2安打、29日のオリックス戦で2安打した。
5月に入ると勢いが加速する。「本当に悪くはないと思っていて、ただラッキーなヒットが結構多い。それまでもヒットが出て、調子がいいですね」。5日の楽天戦から3試合連続マルチ安打、11日の西武戦で3安打し同日から5試合連続安打。5月11日の試合後には打率.391まで上昇し月13日の日本ハム戦、0-0の2回一死走者なしで1ボールから加藤が投じた2球目のインコース129キロカットボールを肘をたたんでレフト前に安打は素晴らしかった。インコースの対応について「インコースのボールが増えている感じがあるので、そこを頭に入れながら打席に入っています」と話した。
この時期、外のボールに対してもしっかりと対応。「開かずに常にセンター方向を中心に意識しています」。
茶谷はいい時はセンター方向に打てている時、状態が悪くなると「体の開きが早くなる」と常々口にしている。センター方向に打てていることが、好調につながっているのだろうかーー
「体の開きが悪くなるか、足を使えていなくてバットが出てこなくなるかというのがあるので、そこを意識しながらですね」。
17日のオリックス戦ではプロ入り後初めて4番でスタメン出場するなど、存在感を高め、「まずはご挨拶できるように頑張りたい」と、交流戦で恩師・阪神の今岡真訪打撃コーチとの再会を楽しみにしていた。
阪神との交流戦では6月3日、5日の試合に出場しいずれも安打を放ったが、5日の阪神戦で安打を放ったのを最後に29打席無安打。5月の月間打率.350だったが、6月は月間打率.100、交流戦明け、出場機会も減少していった。
7月11日のオリックス戦で、6月5日の阪神戦以来となる久々の安打を放つと、同日からスタメン出場した試合は5試合連続安打。途中出場した7月23日のソフトバンク戦、8月9日のオリックス戦でも安打を放ち、与えられた機会で結果を出した。
「本当に今日がラストチャンスだと思ってやっていますし、全く打てなかった時期があったんですけど、一軍に置いておいてもらったので、なんとか結果で、少しでもチームの力になれるようにと思ってやっています」。
また、この時期、スタメン出場しない日は「どこで出るかわからないので、毎日ポジションが変わったりするので、そのための準備です。とにかく足を使って捕りにいく。足を使っていくイメージです」と、試合前練習で内野の全ポジションで守備練習を行っていた。
「ショートが一番遠いので、ショートは絶対にどんだけ時間がなくても、ファーストへ強いボールを送球することを意識してやっています」。
全体練習が終わった後も、「守備から入っていかなくちゃいけない人間。まずは守備でどんな場面、どんな状況でも、とにかくどこでも出られるようにと思ってやっています」と、小坂誠コーチが打つノックを受けることもあった。
8月は月間打率.368と再び調子を取り戻し、9月2日の楽天戦では「あれはたまたま打てたので良かったんですけど、その後の試合に出させていただいた時にヒットを打てなかった。出させていただいた時になんとか打てるように」と本人は謙遜したが、1-0の2回一死一塁の第1打席、田中が1ボール2ストライクから空振りを奪いにいった低めの138キロスプリットを見送って、続く5球目のインコース147キロツーシームをうまく肘をたたんで左中間に破る適時二塁打は見事だった。
夏場以降、試合前の打撃練習の中で、「失敗したりとかもしているのでピッチャーの投げる球が一番練習になると思っているので多めに入れてもらっています」と、バントを取り入れるようになり、10月に入ってからは「ピッチャーが投げている球が一番なので」とバックネット付近でバントマシンではなく打撃投手が投げたボールでバント練習。このバント練習が大事な試合での成功に後々繋がってくる。
9月に入ってからは「特に気にしてはいなくて、本当に試合に出させていただいているだけで嬉しいことなので、なんとかどこでもできるようにと思って準備しています」とショートでのスタメン出場が増えた。完全に調子を取り戻した茶谷は『6番・ショート』でスタメン出場した9月27日の日本ハム戦は1打数1安打3四死球で全打席出塁。10月1日の西武戦でも2安打と、オールスター明けは32試合に出場して、打率.350(60-21)、2打点だった。
1年間二軍に落ちることなく完走。「6月は全然ダメだったんですけど、ベンチに置いておいていただいて、守備でも使っていただいたので、なんとか修正できたという感じです」と振り返った。状態が落ちた時も、「とにかくセンター、センターという意識で、ちょっと遅れ気味になってもセンターで。引っ張り気味に」と、センター方向の打撃を継続できた。
そして、クライマックス・シリーズでは、オリックスとのCSファイナルステージ第2戦、同点となった5-5の9回に茶谷が1球で送りバントを決め、続く山口航輝の決勝犠飛に繋げた。CSでも3犠打、オリックスとのCSファイナルスタージ第4戦で2安打放った。
今季は6月に調子を落としながら、夏場以降に調子を上げたのはプラス材料。あとは好不調の波を減らしていければ、内野のユーティリティープレーヤーから卒業し、レギュラーも見えてくる。
取材・文=岩下雄太
茶谷の経歴を振り返ると18年にソフトバンクを自由契約となり、19年にロッテの育成選手として入団。同年のオフに支配下選手登録となると、20年に31試合、22年は一軍出場がなかったが、22年はシーズン最終盤にショートでスタメン出場するなど57試合に出場した。他の選手に比べると、チャンスは多い方ではなかったが、少ないチャンスをモノにし、自分で一軍の居場所を作った。
吉井理人監督が就任した今季、「とにかくアピールするしかない。結果を残せるように」と意気込み、シーズンオフは「バッティング、守備、走塁も全部レベルアップしないといけない。バッティングと守備がメインになってくる。課題じゃないですけど、そこを一つでも克服できるようにやりたいと思ってやっていました」と、自主トレに励んだ。
今季初の対外試合となった2月11日の楽天モンキーズとの国際交流試合では「その前もいい感じで打てていたんですけど、捕られてしまったので、今度は返してやろうという気持ちで打席に立ちましたとにかく結果が出たことは良かった」と、適時打を放った。
2月14日からのNPB球団との練習試合では19日のヤクルト戦で3安打2打点、21日の広島戦で2安打2打点するなど、打率.360(25-9)とバットでアピールした。
オープン戦に入ってからスタメン出場が1度もなく、1打席勝負という日が増え、打席数を増やすためだろうか、ファームの春季教育リーグでスタメン出場し4打席立つこともあった。オープン戦では打席数が少なかったことに加え、安打がなかなか出なかったが、「打席数もそこまで立っていなくて、1日1試合で1打席立つか、立たないかだったので、そこまで気にしていなかったです」。その一方で、「1打席で結果を残さなきゃいけないというのはありました」と少ない機会で結果を残さなければいけないというプレッシャーはあったという。
オープン戦最終戦となった3月26日の中日戦で、オープン戦初安打を記録し、「本当に素直に嬉しかったです。正直、オープン戦もそこまで出られていなかったので、よかった」と移籍5年目にして初の開幕一軍を掴んだ。
与えられたチャンスで打つ!!
「まずは打たないと試合に出られない。1打席でも2打席でも出たところで、なんとかと思ってやっています」。
開幕してからは今季初打席となった4月1日のソフトバンク戦、「良かったなと思います」とライト前に今季初安打を記録。『6番・三塁』で出場した6日の日本ハム戦で安打、『7番・一塁』で出場した14日のオリックス戦では2安打、29日のオリックス戦で2安打した。
5月に入ると勢いが加速する。「本当に悪くはないと思っていて、ただラッキーなヒットが結構多い。それまでもヒットが出て、調子がいいですね」。5日の楽天戦から3試合連続マルチ安打、11日の西武戦で3安打し同日から5試合連続安打。5月11日の試合後には打率.391まで上昇し月13日の日本ハム戦、0-0の2回一死走者なしで1ボールから加藤が投じた2球目のインコース129キロカットボールを肘をたたんでレフト前に安打は素晴らしかった。インコースの対応について「インコースのボールが増えている感じがあるので、そこを頭に入れながら打席に入っています」と話した。
この時期、外のボールに対してもしっかりと対応。「開かずに常にセンター方向を中心に意識しています」。
茶谷はいい時はセンター方向に打てている時、状態が悪くなると「体の開きが早くなる」と常々口にしている。センター方向に打てていることが、好調につながっているのだろうかーー
「体の開きが悪くなるか、足を使えていなくてバットが出てこなくなるかというのがあるので、そこを意識しながらですね」。
17日のオリックス戦ではプロ入り後初めて4番でスタメン出場するなど、存在感を高め、「まずはご挨拶できるように頑張りたい」と、交流戦で恩師・阪神の今岡真訪打撃コーチとの再会を楽しみにしていた。
阪神との交流戦では6月3日、5日の試合に出場しいずれも安打を放ったが、5日の阪神戦で安打を放ったのを最後に29打席無安打。5月の月間打率.350だったが、6月は月間打率.100、交流戦明け、出場機会も減少していった。
7月11日のオリックス戦で、6月5日の阪神戦以来となる久々の安打を放つと、同日からスタメン出場した試合は5試合連続安打。途中出場した7月23日のソフトバンク戦、8月9日のオリックス戦でも安打を放ち、与えられた機会で結果を出した。
「本当に今日がラストチャンスだと思ってやっていますし、全く打てなかった時期があったんですけど、一軍に置いておいてもらったので、なんとか結果で、少しでもチームの力になれるようにと思ってやっています」。
また、この時期、スタメン出場しない日は「どこで出るかわからないので、毎日ポジションが変わったりするので、そのための準備です。とにかく足を使って捕りにいく。足を使っていくイメージです」と、試合前練習で内野の全ポジションで守備練習を行っていた。
「ショートが一番遠いので、ショートは絶対にどんだけ時間がなくても、ファーストへ強いボールを送球することを意識してやっています」。
全体練習が終わった後も、「守備から入っていかなくちゃいけない人間。まずは守備でどんな場面、どんな状況でも、とにかくどこでも出られるようにと思ってやっています」と、小坂誠コーチが打つノックを受けることもあった。
8月は月間打率.368と再び調子を取り戻し、9月2日の楽天戦では「あれはたまたま打てたので良かったんですけど、その後の試合に出させていただいた時にヒットを打てなかった。出させていただいた時になんとか打てるように」と本人は謙遜したが、1-0の2回一死一塁の第1打席、田中が1ボール2ストライクから空振りを奪いにいった低めの138キロスプリットを見送って、続く5球目のインコース147キロツーシームをうまく肘をたたんで左中間に破る適時二塁打は見事だった。
夏場以降、試合前の打撃練習の中で、「失敗したりとかもしているのでピッチャーの投げる球が一番練習になると思っているので多めに入れてもらっています」と、バントを取り入れるようになり、10月に入ってからは「ピッチャーが投げている球が一番なので」とバックネット付近でバントマシンではなく打撃投手が投げたボールでバント練習。このバント練習が大事な試合での成功に後々繋がってくる。
9月に入ってからは「特に気にしてはいなくて、本当に試合に出させていただいているだけで嬉しいことなので、なんとかどこでもできるようにと思って準備しています」とショートでのスタメン出場が増えた。完全に調子を取り戻した茶谷は『6番・ショート』でスタメン出場した9月27日の日本ハム戦は1打数1安打3四死球で全打席出塁。10月1日の西武戦でも2安打と、オールスター明けは32試合に出場して、打率.350(60-21)、2打点だった。
1年間二軍に落ちることなく完走。「6月は全然ダメだったんですけど、ベンチに置いておいていただいて、守備でも使っていただいたので、なんとか修正できたという感じです」と振り返った。状態が落ちた時も、「とにかくセンター、センターという意識で、ちょっと遅れ気味になってもセンターで。引っ張り気味に」と、センター方向の打撃を継続できた。
そして、クライマックス・シリーズでは、オリックスとのCSファイナルステージ第2戦、同点となった5-5の9回に茶谷が1球で送りバントを決め、続く山口航輝の決勝犠飛に繋げた。CSでも3犠打、オリックスとのCSファイナルスタージ第4戦で2安打放った。
今季は6月に調子を落としながら、夏場以降に調子を上げたのはプラス材料。あとは好不調の波を減らしていければ、内野のユーティリティープレーヤーから卒業し、レギュラーも見えてくる。
取材・文=岩下雄太