「1年間いつもの年よりも波がなくて自分のピッチングがしっかりとできる時が多かったかなと思います」。
ロッテ・中村稔弥が今季をこう振り返るように、一軍では17試合・23回1/3を投げ、3勝1敗、防御率2.31、ファームでも11試合・18回1/3を投げて防御率2.45だった。
昨年10月に行われたフェニックス・リーグで真っ直ぐのラインに強いボールを投げること、ツーシーム、カウントをしっかり取れるようにテーマを持って行い、好感触を掴んだ。1月の自主トレではフェニックス・リーグでよかったことを継続し、2月のキャンプに入った。
2月12日に行われた楽天モンキーズとの国際交流試合で「この前のBPから調子は良くなってきていて、真っ直ぐは力が伝わっていたので、ブルペンもこの前も良かったですし、今日もしっかり強く投げられたボールはあったんじゃないかなと思います」と、2回を無失点に抑えると、練習試合がスタートしてからも3試合・9回を投げ、失点は2月28日のソフトバンク戦での2失点のみ。
2月22日のDeNA戦では4回・無安打、無失点とアピールした。「ストレートの調子はいい感じで投げられていますし、自分の中では感覚一通り、指先に伝えられて投げられているかなと思います」。オープン戦でも2試合・3イニングを無失点に抑えていたが、3月12日の楽天戦を最後にファームで調整することになった。
「オープン戦の時は良かったので、調子を維持するためにキャッチボールからフォームとかを崩さないように意識しては取り組んでいました」。
「とにかく二軍では打たれない。無失点で抑える、その中で変化球とかも高さにこだわったり、1球1球意識して投げていました」。
オープン戦でアピールを続けながらも、開幕はファームスタート。モチベーションを落とすことはなかったのだろうかーー。
「チームの方針なのでモチベーションを保って、一軍に呼ばれるように結果を残そうと思っていました」。
ファームでは3試合・4イニングを投げ1失点に抑え、4月12日に今季初昇格。今季初登板となった4月20日の日本ハム戦、走者を出しながらもなんとか無失点に抑えると、続く4月25日の西武戦も1回無失点に抑えた。しかし、そこから登板がなく5月4日に一軍登録抹消された。
「長いイニングを投げられるように体力つけて、暑いんですけどランニングをしっかりして体力つけることを心がけていました」。ファームでは6月20日の巨人戦、6月27日の日本ハム戦では先発し、日本ハム戦では5イニングを投げた。先発で投げてはいたが、「一軍でも長いイニングを投げられるように意識していましたね」と、ロングリリーフを想定して投げた。
7月4日に一軍再昇格。「とにかく無失点で抑えてチームに流れを持っていけるピッチングがしたいです」。再昇格してからなかなか登板機会が巡ってこなかったが、7月15日の楽天戦、4-7“の8回にマウンドに上がり、先頭の村林一輝を遊ゴロに打ち取ると、続く小深田大翔をツーシームで空振り三振、簡単に2アウトを奪う。小郷裕哉にセンター前に運ばれ、続く浅村栄斗の打席中に二塁盗塁を決められたが、浅村をツーシームで空振り三振に奪った。その裏、ポランコの犠飛、角中勝也の押し出し四球、岡大海の2点適時三塁打などが飛び出し一挙5点を奪い逆転に成功し、8回の1イニングを無失点に抑えた中村は勝利投手を手にした。再昇格後は3試合連続、今季初登板から含めると5試合連続で無失点に抑えた。
8月2日の日本ハム戦は、2-1の3回に先発・美馬学が4点を失いなお、2-5の3回一死満塁で登板。伏見寅威を空三振、五十幡を遊飛でピンチを脱したが、「テンポとか悪くなっていますし、先頭打者を出すとキツくなってくるので、あそこはしっかり抑えないといけないな思います」と、続く5-5の4回に3点を失い敗戦投手。1イニング目の3回は見事な火消しを見せていただけに、非常にもったいない登板だった。
この登板以降は、変わらぬ安定した投球。「今年はしっかり低めに投げられていると思います」。特にツーシームの精度が素晴らしかった。
8月6日の楽天戦、1-2の8回一死二塁でフランコに1ストライクから空振りを奪った2球目の131キロツーシーム、空振り三振を奪った3球目の130キロツーシームはストライクゾーンからボールゾーンに落ちる素晴らしいボールだった。9月6日のソフトバンク戦でも、0-3の8回一死走者なしで近藤健介を1ボール2ストライクから空振り三振に仕留めた132キロツーシームも良い落ちだった。
「吉井監督からも1年目の時からツーシームは低めに低めにと言われていて、(今年は)投げられている確率が高いと思います」。
「感覚が良くなったのはそこからですね」と、2年目以降試行錯誤していたツーシームだったが、昨年8月26日の楽天二軍戦でのブルペンで「田村さんに試合前のブルペンで受けてもらっているときに、『ツーシームの球速が速くなっているよな』と言われて、ちょっと握りを深くというか、縫い目の外にして持ってああいう落ち方をしました。タムさんの一言がなかったら今まで通り投げていたのかなと思います」(22年8月31日オンライン取材)と、同日の試合で内田靖人から真ん中低めに落ちるツーシームで空振りを奪ったのをきっかけに、感覚良く投げられるようになった。
しっかり落とすためのコツを掴んだりしたのだろうかーー。
「コツはないんですけど、狙う位置とか自分でわかってきたかなと思います」。
「最初から投げる時にイメージして、イメージしたところに投げられるようになってきた感じです」。
今季は19三振奪ったが、そのうち16三振がツーシームで奪ったものだった。
ロングリリーフとしても今季も存在感を見せた。
クライマックス・シリーズではソフトバンクとのファーストステージ第1戦、中村の真骨頂が発揮された。
先発・佐々木朗希の後を受けて、4-0の4回から登板すると、2回を1安打2四球3奪三振無失点の好リリーフ。ロングリリーフとしての役割を果たした。中村稔はかつてのチェン・グァンユウから教わったロングリリーフの心得を「意識しています」と話し、「テンポよくも意識していますし、2戦目も(鈴木)昭汰とかもめちゃくちゃいいピッチングしていたなと思います」と振り返った。
一軍で結果を残しながら、ファームに落ちたりすることもあったが、シーズン通して、一軍でも二軍でも安定したパフォーマンスを出し続けた。
「ファームに行った期間でも松永さんとかちょっとしたアドバイスをそこで意識高く自分で意識を持って取り組めた。また、一軍に上がって投げられるようにという意識でやっていたのでそこも良かったと思います」。
具体的に松永コーチからどんなアドバイスをもらったのだろうかーー。
「本当に細かいところなんですけど、足の踏み出す足の向きとか、腰のキャッチャーに入って行き方とか、ちょっとしたことなんですけど、それがだいぶ自分の中でハマったかなと思います」。
来季に向けて、秋季練習では「ピッチングはトラックマンとか使って、真っ直ぐも強いボールを高めに投げる意識と、あとは真っ直ぐだけでなく変化球の精度もより上げられるように試してやっています」と話し、オフも秋季練習で取り組んだことを継続。プラス、「体の柔軟性が大事ですし、ランニングとかもしっかり落とさないように、投げる体力もつけていけるようにやっていきたい」と話した。
「来年は1年間通してしっかりチームのために投げられる選手になりたいなと思います」。左投手は貴重な存在。ロングリリーフ、ツーシームという武器がある。来季は自身の武器と課題点を磨いていき、一軍で勝負する時間を増やしたい。
取材・文=岩下雄太
ロッテ・中村稔弥が今季をこう振り返るように、一軍では17試合・23回1/3を投げ、3勝1敗、防御率2.31、ファームでも11試合・18回1/3を投げて防御率2.45だった。
オープン戦で好投も…
2月12日に行われた楽天モンキーズとの国際交流試合で「この前のBPから調子は良くなってきていて、真っ直ぐは力が伝わっていたので、ブルペンもこの前も良かったですし、今日もしっかり強く投げられたボールはあったんじゃないかなと思います」と、2回を無失点に抑えると、練習試合がスタートしてからも3試合・9回を投げ、失点は2月28日のソフトバンク戦での2失点のみ。
2月22日のDeNA戦では4回・無安打、無失点とアピールした。「ストレートの調子はいい感じで投げられていますし、自分の中では感覚一通り、指先に伝えられて投げられているかなと思います」。オープン戦でも2試合・3イニングを無失点に抑えていたが、3月12日の楽天戦を最後にファームで調整することになった。
「オープン戦の時は良かったので、調子を維持するためにキャッチボールからフォームとかを崩さないように意識しては取り組んでいました」。
「とにかく二軍では打たれない。無失点で抑える、その中で変化球とかも高さにこだわったり、1球1球意識して投げていました」。
オープン戦でアピールを続けながらも、開幕はファームスタート。モチベーションを落とすことはなかったのだろうかーー。
「チームの方針なのでモチベーションを保って、一軍に呼ばれるように結果を残そうと思っていました」。
ファームでは3試合・4イニングを投げ1失点に抑え、4月12日に今季初昇格。今季初登板となった4月20日の日本ハム戦、走者を出しながらもなんとか無失点に抑えると、続く4月25日の西武戦も1回無失点に抑えた。しかし、そこから登板がなく5月4日に一軍登録抹消された。
「長いイニングを投げられるように体力つけて、暑いんですけどランニングをしっかりして体力つけることを心がけていました」。ファームでは6月20日の巨人戦、6月27日の日本ハム戦では先発し、日本ハム戦では5イニングを投げた。先発で投げてはいたが、「一軍でも長いイニングを投げられるように意識していましたね」と、ロングリリーフを想定して投げた。
7月4日に一軍再昇格。「とにかく無失点で抑えてチームに流れを持っていけるピッチングがしたいです」。再昇格してからなかなか登板機会が巡ってこなかったが、7月15日の楽天戦、4-7“の8回にマウンドに上がり、先頭の村林一輝を遊ゴロに打ち取ると、続く小深田大翔をツーシームで空振り三振、簡単に2アウトを奪う。小郷裕哉にセンター前に運ばれ、続く浅村栄斗の打席中に二塁盗塁を決められたが、浅村をツーシームで空振り三振に奪った。その裏、ポランコの犠飛、角中勝也の押し出し四球、岡大海の2点適時三塁打などが飛び出し一挙5点を奪い逆転に成功し、8回の1イニングを無失点に抑えた中村は勝利投手を手にした。再昇格後は3試合連続、今季初登板から含めると5試合連続で無失点に抑えた。
8月2日の日本ハム戦は、2-1の3回に先発・美馬学が4点を失いなお、2-5の3回一死満塁で登板。伏見寅威を空三振、五十幡を遊飛でピンチを脱したが、「テンポとか悪くなっていますし、先頭打者を出すとキツくなってくるので、あそこはしっかり抑えないといけないな思います」と、続く5-5の4回に3点を失い敗戦投手。1イニング目の3回は見事な火消しを見せていただけに、非常にもったいない登板だった。
ツーシームの精度
この登板以降は、変わらぬ安定した投球。「今年はしっかり低めに投げられていると思います」。特にツーシームの精度が素晴らしかった。
8月6日の楽天戦、1-2の8回一死二塁でフランコに1ストライクから空振りを奪った2球目の131キロツーシーム、空振り三振を奪った3球目の130キロツーシームはストライクゾーンからボールゾーンに落ちる素晴らしいボールだった。9月6日のソフトバンク戦でも、0-3の8回一死走者なしで近藤健介を1ボール2ストライクから空振り三振に仕留めた132キロツーシームも良い落ちだった。
「吉井監督からも1年目の時からツーシームは低めに低めにと言われていて、(今年は)投げられている確率が高いと思います」。
「感覚が良くなったのはそこからですね」と、2年目以降試行錯誤していたツーシームだったが、昨年8月26日の楽天二軍戦でのブルペンで「田村さんに試合前のブルペンで受けてもらっているときに、『ツーシームの球速が速くなっているよな』と言われて、ちょっと握りを深くというか、縫い目の外にして持ってああいう落ち方をしました。タムさんの一言がなかったら今まで通り投げていたのかなと思います」(22年8月31日オンライン取材)と、同日の試合で内田靖人から真ん中低めに落ちるツーシームで空振りを奪ったのをきっかけに、感覚良く投げられるようになった。
しっかり落とすためのコツを掴んだりしたのだろうかーー。
「コツはないんですけど、狙う位置とか自分でわかってきたかなと思います」。
「最初から投げる時にイメージして、イメージしたところに投げられるようになってきた感じです」。
今季は19三振奪ったが、そのうち16三振がツーシームで奪ったものだった。
今なお守るチェンからの教え
ロングリリーフとしても今季も存在感を見せた。
クライマックス・シリーズではソフトバンクとのファーストステージ第1戦、中村の真骨頂が発揮された。
先発・佐々木朗希の後を受けて、4-0の4回から登板すると、2回を1安打2四球3奪三振無失点の好リリーフ。ロングリリーフとしての役割を果たした。中村稔はかつてのチェン・グァンユウから教わったロングリリーフの心得を「意識しています」と話し、「テンポよくも意識していますし、2戦目も(鈴木)昭汰とかもめちゃくちゃいいピッチングしていたなと思います」と振り返った。
松永コーチからのアドバイス
一軍で結果を残しながら、ファームに落ちたりすることもあったが、シーズン通して、一軍でも二軍でも安定したパフォーマンスを出し続けた。
「ファームに行った期間でも松永さんとかちょっとしたアドバイスをそこで意識高く自分で意識を持って取り組めた。また、一軍に上がって投げられるようにという意識でやっていたのでそこも良かったと思います」。
具体的に松永コーチからどんなアドバイスをもらったのだろうかーー。
「本当に細かいところなんですけど、足の踏み出す足の向きとか、腰のキャッチャーに入って行き方とか、ちょっとしたことなんですけど、それがだいぶ自分の中でハマったかなと思います」。
来季に向けて、秋季練習では「ピッチングはトラックマンとか使って、真っ直ぐも強いボールを高めに投げる意識と、あとは真っ直ぐだけでなく変化球の精度もより上げられるように試してやっています」と話し、オフも秋季練習で取り組んだことを継続。プラス、「体の柔軟性が大事ですし、ランニングとかもしっかり落とさないように、投げる体力もつけていけるようにやっていきたい」と話した。
「来年は1年間通してしっかりチームのために投げられる選手になりたいなと思います」。左投手は貴重な存在。ロングリリーフ、ツーシームという武器がある。来季は自身の武器と課題点を磨いていき、一軍で勝負する時間を増やしたい。
取材・文=岩下雄太