魅力あふれる鷹の若き大砲&獅子の背番号32
2023年は“白熱の関西ダービー”となった阪神とオリックスによる日本シリーズで幕を閉じたプロ野球。また新たなシーズンが始まる前に、各球団のチーム状況を探りながら活躍が期待される若手選手を球団ごとにピックアップ。今回はパ・リーグ編。
●オリックス:椋木蓮(投手/大卒3年目)
リーグ3連覇中のオリックスだが、絶対的エースだった山本由伸がメジャーリーグのドジャースへ、昨季チーム2位の11勝を挙げた山﨑福也はFAで日本ハムへ移籍した。有望株がひしめく自慢の投手陣とは言え、昨季の勝利数トップ2が抜けるのは痛手。リーグ4連覇へ、チームを率いる中嶋聡監督は現有戦力の成長と進化を求める。
その中でブレイク候補の筆頭として挙げたいのが3年目を迎える椋木。東北福祉大から2021年のドラフト1位で入団し、ルーキーイヤー2022年はノーヒットノーラン達成目前の快投を披露するなど2勝をマーク。しかし、同年9月にトミー・ジョン(TJ)手術を受け、長いリハビリに入った2023年は育成契約となった。それでも同年10月のみやざきフェニックス・リーグで実戦復帰。今年は「一軍でしっかり投げたい」と意気込んでおり、支配下復帰は時間の問題だ。椋木以外にも指揮官は新たなローテ候補として、ともに2年目を迎える曽谷龍平と齋藤響介、日本ハムからトレードで獲得した吉田輝星らにも期待を寄せており、キャンプ中から若手のローテ争いが熱を帯びそうだ。
●ロッテ:横山陸人(投手/高卒5年目)
ロッテは2023年に最優秀中継ぎ投手に輝いたルイス・ペルドモの退団が濃厚。新たなセットアッパー候補としてメジャー通算114試合登板のジミー・コルデロを獲得したが、ペルドモのように即フィットするかは不透明だ。また、抑えの益田直也は今年10月で35歳となり、直近の2シーズンはいずれも防御率3点台。将来を見据えた新たなクローザーも候補も育成しなければならない。
そこで注目したいのが高卒5年目を迎える横山。最速155キロの直球を主体とした力強い投球スタイルが魅力だ。昨季は一軍で自己最多の38試合に登板し、防御率は5.26ながら、9.61という高い奪三振率をマーク。シーズン終了後の11月には、各国の若手が集う『アジアプロ野球チャンピオンシップ』の一員として侍ジャパンデビュー。韓国戦で1回無失点と好投し、日本代表の同大会連覇に貢献した。
●ソフトバンク:井上朋也(内野手/高卒4年目)
3年連続でリーグ優勝から遠ざかっているソフトバンク。新生・小久保体制となる2024年シーズンへ向け、西武からFAで山川穂高、巨人とのトレードでアダム・ウォーカーを獲得するなど、今オフは近年のウイークポイントである右の強打者の補強が目立つ。ただ、チームの将来を見据えると若手の突き上げもほしい。その筆頭として期待されるのが2020年のドラフト1位・井上だ。
ファームでは高卒3年目の昨季、チーム2位の9本塁打をマーク。9月6日の一軍デビュー戦ではプロ初安打を含むマルチ安打をマークし、同25日にはロッテのエース左腕・小島和哉からプロ初アーチを放って見せた。右投手への対応力に課題を残すが、昨季は一軍15試合の出場で打率.263、1本塁打、3打点、OPS.712をマーク。本格的なブレイクが期待される今季は三塁のレギュラー獲りを狙う。
●楽天:内星龍(投手/高卒4年目)
昨季まで不動のクローザーだった松井裕樹がメジャーリーグのパドレスへ移籍。その穴埋めとして長年先発ローテーションを支えてきた則本昂大が、今季から抑えに転向することを表明した。新たにチームを指揮する今江敏晃監督にとって投手整備は急務。近年、慢性的な課題となっている先発陣の高齢化も悩みの種だ。
そんな投手陣のキーマンになりそうなのが4年目を迎える長身右腕の内。3年目だった昨季は4月にプロ初登板を果たし、そこからリリーフでフル稼働し53登板で4勝2敗7ホールド、防御率は2.28の好成績を残した。救援投手として素晴らしい成績を残したが、シーズン終了後に先発に挑戦したい旨を新指揮官に直訴し転向が決定。今シーズン内が先発ローテに定着することができれば“先発陣の若返り”という点でも大きい。
●西武:山村崇嘉(内野手/高卒4年目)
昨季はオリックスに次ぐリーグ2位のチーム防御率2.93をマークしながら、攻撃陣がリーグワーストの435得点と振るわず5位に沈んだ西武。オフにはFA権を行使した山川がソフトバンクへ移籍。新助っ人としてメジャー通算114本塁打のヘスス・アギラーを獲得するなど手は打っているが、新シーズンも得点力が課題になりそうだ。
もちろん既存野手のレベルアップは必須。その中でブレイクの予感漂うのが高卒4年目を迎える山村だ。打撃センスは東海大相模高時代から高く評価され、2年目の2022年は二軍戦で打率.297を記録。3年目の昨季は松井稼頭央新監督に能力を買われ開幕スタメンに抜擢された。一軍再昇格となった10月にはプロ1号含む2試合連続本塁打をマーク。幕張での二夜連発にロマンを感じた獅子党も多かっただろう。背番号は、かつて松井監督や浅村栄斗(現楽天)も背負った『32』。先輩に続く大出世に期待したい。
●日本ハム:根本悠楓(投手/高卒4年目)
日本ハムは昨季、リーグ3位の先発防御率3.14をマークしたが、チームトップの9勝を挙げた上沢直之がポスティングシステムでのメジャー移籍を目指しており、2022年にノーヒットノーランを達成したコディ・ポンセは楽天へ移籍。新たにオリックスからFAで山﨑を獲得したが、先発ローテーションの再構築は急務だ。
将来のエース候補として期待されるのが4年目を迎える根本。苫小牧中央高出身の道産子左腕は、3年目の昨シーズン一軍で5試合に先発し3勝1敗、防御率2.88をマーク。さらに、11月に侍ジャパンの一員として出場した『アジアプロ野球チャンピオンシップ』では第2先発として2試合(計5イニング)連続無失点の好救援を披露し侍ジャパンの大会連覇に貢献した。今季の目標に掲げる「先発ローテーション定着」が実現すれば、加藤貴之、上原健太、新加入の山﨑、そしてドラフト1位の細野晴希(東洋大)らと構築するであろう“左腕王国”誕生にも期待も膨らむ。