大文字山に登り、ポーズをとる中日・大野 (C)Kyodo News

◆ 36歳になっても変わらないサービス精神

 36歳イヤーのベテラン中日・大野は中日・大野だった

 肩肘張らないナチュラルさは中日・大野雄大がファンから愛される理由のひとつだろう。

 左腕は年明けの5日、地元・京都市にある大文字山で新年恒例の自主トレを公開した。

 今年36歳になってもスタイルは変わらない。

 登りきった大文字山の頂上で、まずは両手を広げて「大」の字をつくった。能登半島地震の影響でジャンプは控えた。

 その後、カメラマンたちとの間にできた時間の隙間・間に耐えられない。

「ほな、ちょっとだけやりますか。辰(たつ)年にちなんで」

 両手を突き出し、片脚も上げて竜の足を演出した。ジャンプして体全体を使って1年間の決意を表す。

 キャプテンに就任したときは頭文字の「C」も披露。期待に応える、ウズウズして何かしたくなるサービス精神は相変わらずだ。

 山登りは母校・京都外大西高の現役部員と同じタイミング。

 同校は昨年11月の秋季近畿大会で準優勝。左腕が所属した2006年以来18年ぶりのセンバツ出場を確実にしている。

 大野2世のニックネームがつき始めた田中遙音投手(2年)の話題になったときだった。初代・大野は笑った。

「大野でええんかなと思いますよ(笑)。今永2世とか、今だったら宮城2世とかだったらいいけど。ボクが高校の先輩だからそう言われるのでしょうけど、僕が高校生のときよりも(今の田中投手の方が)すごいピッチャーだと思います。まだ2年生の冬。ここから最後の夏まで伸びる可能性の方が多いから、いっぱい頑張ってほしいですね」

 DeNAからポスティングシステムでメジャー移籍を目指す今永昇太、オリックスの先発陣の柱のひとり宮城大弥でなく自分の2世を言われる後輩のことについて語った。

◆ 「立浪監督を勝てる、負けない監督にしたい」

 メディアが喜ぶ話を持っているのは、笑いの神がついているからか。

 伏見稲荷大社のおみくじに「凶後(のち)大吉」と書かれていたという。写真を撮ってあり、報道陣に見せる準備も終えていた。

「ボクにピッタリです。最初に目に入ってきたのは凶。これはビックリしました。今大吉やったらまずいですけど、後で大吉ですから」

 復活イヤーを迎える。昨年の1軍登板は1試合(1敗)。

 4月中旬に左肘のクリーニング手術を受け、9月に実戦復帰。2024年シーズンへのメドを立てて、オフに入った。

 ボールを使ったトレーニングを継続しているのは今季に懸ける意気込み。

「この時期に投げるのは基本的にやってこなかったですね。肘は問題ありません」

 回復を実感しつつ、沖縄での自主トレ、2月のキャンプへの準備を進めている。

 開幕ローテ入りし、シーズンはフル稼働、秋におみくじにある「大吉」を証明する成績を残したい。

「誰よりも(イニングを)投げたいと思っています。ローテで回り続ければ、成績は付いてくると思っています。立浪監督を勝てる、負けない監督にしたいと思っています」

 2019年から2年連続で最優秀防御率のタイトルを獲得し、20年には沢村賞にも輝いた。

 「壁を乗り越えて強くなってきた自負があります」

 京都外大西の建学の精神は「不撓不屈」。そこに、凶後大吉。

 手術から戻ってきた竜のエース大野がペナントレースを盛り上げる。

文=川本光憲(中日スポーツ・ドラゴンズ担当)

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