隠れたファインプレー
ロッテはレギュラーシーズン、チーム防御率はリーグ5位の3.17だが、勝利したゲームは投手陣を中心に守り勝ってきた。12日から始まるクライマックスシリーズでも、少ない点数を守り勝っていく形になっていくことだろう。試合終盤の外野の守りで欠かせない存在になりつつあるのが、現役ドラフトで今季西武から加入した愛斗だ。
10月4日のソフトバンク戦、「難しい打球を難しいように捕るのは誰でもできる。難しい打球をいかに簡単に捕れるか、簡単に捕っているように見せるかが大事だと思います」と、0-1の7回一死二塁で牧原大成が放ったレフト後方のフライ、前進守備を敷いていたが、何事もなかったかのようにキャッチした。
「僕の中では余裕というか、当たり前のプレー。ベンチに戻ってナイスプレーにみんなに言われたので、あれはいい守備だったのかなと。先頭バッターの甲斐さんのレフト前を捕りたかったなというのが一番ですね」と振り返った。
9月8日の楽天戦では、7-5の8回二死二塁で小深田大翔が放ったライトの前安打を捕ってから素早く送球し、二塁走者・小郷裕哉の生還許さなかった。「2アウト二塁からランナー・小郷さんで、ライト前に打たれました。“小郷さんが還らなかったの?”となったら、打球が強かったなとか思うと思うんですけど、なんで(楽天の三塁コーチャーが)止めたかと言ったら僕が早く(ボールを)離したから。そこを突き詰めて僕はやってきているのでずっと」と、愛斗の見えないファインプレーもあり、2点リードのまま8回裏へ進み、ソトの2ランで9-5とした。試合を決めたのはソトだったかもしれないが、8回裏の得点に繋げたのも愛斗の守備があったからこそだ。
練習日にキャッチボールが短い理由
CSでも守り勝っていく中で、1点を争う試合終盤の守備は勝敗を分け、いつも以上に大事になってくる。
「特別何かを変えるわけでもないと思う。僕もそうだし、みんなも今までやってきたことしか出せないと思う。自分のやってきたこと、チーム、ピッチャー、キャッチャーを助ける。それが守備だけじゃなくて、走塁もバッティングもと、思ってずっとやっています」
「それが守備の機会で来るんだとしたら、僕が出る時は大体接戦で勝っている時なので、1点もやれない状況。常にその状況を意識してやってきているので、別にミスしてもしょうがないくらいの気持ちで僕は練習に取り組んでいますし、他人よりも(守備のことを)考えています」
外野の守備に絶対的な自信を見せる愛斗は、試合のない練習日ではキャッチボールする時間が他の選手よりも短く、数球投げただけで打球捕に入る。
「そうっすね、僕が教えてもらってきたのは、高卒で入った時に大崎(雄太朗)さんという外野手の方がいたんですけど、“一軍でレギュラーを取るために守備固め、代走、代打から始まるから、その時っていきなり来るんだよ”って言われたんですよ。キャッチボールができない状況でも、全力で投げないといけない時が来ると言うのを教わったんですよ」。
「大崎さんだけでなく、栗山(巧)さんも言っていて、それを聞いて確かにそうだなと。自分が体験してみて、本当にそうじゃん、そんなことあるのかよと思っていましたけど、1年目なのでわからないじゃないですか。年数を重ねて4年目に守備固めで出るようになった時に、それをめちゃくちゃ感じました。その時は(西武が)強い時で自分のやるべきことが決まっていた。愛斗は代打がいったところの守備固めと言うのが決まっていたから、自分で予測して動かなければいけなかったけど、ここにきて1年目で流れとかわからないじゃないですか。1本のホームランで流れが変わったりするので、いきなりいけと言うのもあると思うんですよ。それでいけってなった時に、キャッチボールしていないから投げられませんじゃダメでしょう。だから僕が意識しているのは球数少なく、肩をどれだけ作れるかなんですよ」。
試合のない練習日にほとんどキャッチボールをしないのも、試合終盤に突然、守備固めでの出場があった時に備えてのもの。12球団でもトップレベルを誇る愛斗の外野守備の裏には、根拠、そして理論がある。
「自分のできること、やるべきことをやるだけだと思います」。CSでも高い外野の守備力で、目の前の打球を確実にアウトにしていく。
取材・文=岩下雄太