「出遅れましたけど、まずはそこが1年間の全て」
「悔しかったし、苦しかったシーズンだったと思います」。
ロッテの山口航輝は今年1年をこう振り返った。山口は22年にチームトップとなる16本塁打、昨季も14本のアーチを描いたが、今季は2本塁打にとどまった。出場試合数も、昨季は自身初の規定打席に到達するなど115試合に出場したが、今季は51試合・181打席だった。
山口は2月1日の石垣島キャンプ初日別メニュー調整となったが、8日に全体メニューに合流し、打撃練習では角度のついたライナー性の打球を飛ばし、2月11日の取材では「今日は良くなかったですけど、まあまあそれ以外の日は低いライナーで打てているんじゃないかなと思います。去年も(キャンプを)いい状態で入りましたし、今年は怪我して入りましたけど、バッティングの状態も良い」と一定の手応えを掴んでいた。
今季に向けて大きな期待が持てる打撃練習をしていたが、シーズン終了後改めて山口は「今年は怪我しましたし、出遅れましたけど、まずはそこが1年間の全てだったんじゃないかなと思います」と怪我で出遅れたことを反省。
「毎年その時期の調整はしっかりできていた。今年は特に追い込みすぎて体がついてこなかった感じがするので、もっと体に気を遣ってやってあげたら良かったなと思います。“やらないといけない”、“結果出さなきゃいけない”、そのためにきついことをしてしっかり追い込んでその結果怪我してしまった」。
「もったいなかったなと思うので、やったことには後悔していない。今年のオフは1人でかなり追い込もうかなと思っているので、そこのケア、怪我しないように自分の限界を超えるぐらいまでのオフシーズンにしたいと思います」。
「自分のレベルが低すぎただけ」
今季も開幕を一軍で迎えたが、自身の打撃不振や故障などもあり、一、二軍を往復。チームがクライマックスシリーズ争いを繰り広げていた9月7日に一軍登録を抹消され、結局CSも出場できず6年目のシーズンを終えた。
今季に向けてデータで打撃を分析したり、確実性を上げていきたいと話していた。そこに関してはどうだったのだろうかーー。
「1年間試合に出た数が少ないので、データ的にどうかはわからないですけど、最初の方は、三振に関しては去年のペースより減っていて、コンタクト率は数字的に上がっていました」。
「ただ、弱い打球が多くて、そこはどうなのかなと思うので、空振りの率とか減っても弱い打球が前に飛んだら結局アウトは一緒。持ち味を活かせられなかった。“こうしないといけない”、“ああしないといけない”という思いで、勿体無い、自分でも納得できない1年になってしまったなと思います」。
今年苦しんだのは相手のマークが厳しかったからなのか、それとも自分自身を追い込んでしまったことが原因なのだろうかーー。
「自分自身だと思います。別にめっちゃ攻められた感じでもなかったし、自分のレベルが低すぎただけだと思います」。
井上の引退。西川の1位指名
来季に向けては18年と19年に24本塁打を放った井上晴哉が現役引退し、同じ右の大砲として一発という部分で山口にかかる期待は大きい。
「右バッターはいっぱいいますし、まずは自分の持ち味として他の右バッターより優っていないとこの世界で生きていけないと思う。(井上)晴哉さんの数(24本)を超えられるようにやっていきたいと思うし、それくらい打たないとロッテの外野のレギュラー争いはどこの球団よりも激しいと思うので、そこで生きてくためには自分の長所を磨いて長打力で勝負していかないといけない。今年みたいにできないことというか、長所を伸ばしていけるようにやっていきたいと思います」。
その一方で、24日に行われたプロ野球ドラフト会議で、ロッテは1位に大学生No.1スラッガーの西川史礁を指名。西川は山口と同じ右投げ右打ちの外野手で選手としてのタイプも被る。山口は同じ右打者の西川が1位指名されたことにどう感じているのだろうかーー。
「今年だけじゃないですし、(石川)慎吾さんが入ってきて、愛斗さんが入ってきて、同じタイプの選手がここ最近、補強されていると思うので、シンプルに悔しい。負けたくないという思いはある。ドラフトに入ってくる選手だけじゃないので、そもそも入ってくる前から競争は激しい。入ってきたからどうとかはないし、今年は周りの人を気にして自分がうまいこといかなかった。周りの人を気にはなると思うんですけど、まずは自分がやることをやって勝負できないと今年みたいなことになる。できることをやりたいと思います」。
来季に向けては「特に数字は決めないで1年間まずチームにいられること、怪我しないこと、優勝したいですし、そこのピースになりたい。今年何もしていないので、貢献したいなと思います」と不退転の覚悟で7年目のシーズンに挑む。ロッテでは数少ない長距離砲。マリーンズファンからの期待が大きいだけに、時に厳しい声もある。その声を歓声に変えるためには打って応えるしかない。来季は山口の魅力を最大限に発揮するシーズンにして欲しい。
取材・文=岩下雄太