工藤監督、モイネロ、ムーア (C)Kyodo News

 9月25日の西武VS ソフトバンクで、ソフトバンク投手陣が9回二死までノーヒットノーランを継続しながら、5番手のロベルト・オスナが野村大樹に中堅フェンス直撃の三塁打を許し、惜しくもNPB史上6度目の快挙を逃した。さらに9月30日の阪神VS DeNAでも、DeNA投手陣が8回までノーノーに抑えながら、9回に守護神・森原康平が先頭の近本光司に初安打を許し、球団では初の継投ノーヒットノーランを逃した。そして、過去にも“継投ノーノー未遂”が何度かあった。

 あと2人で継投のノーヒットノーランが途切れたのが、1999年5月12日のオリックスVS近鉄だ。

 近鉄の先発・小池秀郎は、6回まで2四球と振り逃げの走者の計3人を出しただけの無安打無失点。だが、0-0の7回、佐々木恭介監督はノーヒットノーラン継続中にもかかわらず、香田勲男をリリーフに送る。

 実は、小池は4月28日のオリックス戦の7回二死に左太ももの裏側を吊って途中降板。そのまま登録を抹消され、この日再登録されたばかりだった。

 故障明けを考慮して、当初は5回で降板予定だったが、本人が「もう1回行ける」と志願したため、6回まで続投させた。だが、これ以上無理はさせられず、無安打無失点での交代劇になったという次第。

 4月28日に続いて小池をリリーフすることになった香田は、7、8回と3者凡退に打ち取り、継投ながらノーヒットノーランは継続。味方打線も7回表に吉田剛の2点タイムリーなどで3点を挙げ、あと1イニングで阪急の江田孝、森弘太郎が1941年8月2日の名古屋戦で達成して以来、58年ぶりの珍記録が実現するところまで来た。

 香田は9回も先頭の谷佳知を遊ゴロに打ち取り、あと2人となったが、次打者の藤井康雄に右前安打され、ついに記録は途切れた……。

 香田は後続をピシャリと抑え、被安打1の完封リレーを達成したものの、「(記録を)もっと早く知っていれば……」と悔やむことしきり。それでも、小池に4勝目のウイニングボールをプレゼントできたのは、せめてもの幸いだった。

 一方、土壇場でノーノーを阻止した藤井は、阪急時代の1988年9月3日の近鉄戦では4回にチーム唯一の安打を放ち、90年4月30日の近鉄戦でも、7、9回にチームの全安打2本を記録。さらに89年7月18日の日本ハム戦でも、7回にチーム唯一の安打を記録した“ノーヒットスポイラー”。この日も「相手が一人で投げてたんじゃないから、楽に打席に入れた」と余裕のコメントだった。

◆ 「61年ぶりの快記録」は幻と消えた!

 4人の継投で1失点の勝利ながら、結果的に1本の本塁打がアダとなったのが、2002年8月24日のオリックスVS西武だ。

 西武の先発・潮崎哲也は、1回に先頭打者の副島孔太を四球で歩かせたものの、その後は5回まで打者15人をパーフェクトに抑え、無安打無失点。

 だが、潮崎は右足内転筋を痛めて離脱したエース・松坂大輔の穴を埋めるためにリリーフから先発に回っていたため、これまでも最長で7回、88球しか投げていなかった。こうした事情もあり、伊原春樹監督は「彼は5回戦ボーイ。中盤まで試合を作ってくれれば十分なんです」と迷わず交代を告げた。

 潮崎も「5回までヒットを打たれないのは大満足です。今年は(先発、リリーフの両方で)いいシーズンを送らせてもらっている」と納得して、勝利投手の権利を得た5-0の6回から2番手・三井浩二にマウンドを譲った。

「潮さんは6回に崩れることがあるんで、準備していました」という三井も、6、7回をいずれも3者凡退に切って取り、ノーヒットノーランは継続した。

 ところが、あと2イニングで前出の阪急・江田孝、森弘太郎以来の珍記録達成というところで、8回から3番手で登板した水尾嘉孝が先頭の塩谷和彦に右越えソロを浴び、61年ぶりの快挙は、3年前の近鉄同様、幻と消えた。

 水尾は気持ちを切り替えて後続をピシャリと抑え、9回に登板した森慎二も3者凡退に切って取ったことから、被安打1、失点1の勝利。「あの本塁打さえなければ…」と悔やまれた。

 ちなみに西武は、2日後のロッテ戦でも、西口文也が9回二死までノーヒットノーランに抑えながら、小坂誠に二塁後方にポトリと落ちる不運な安打を許し、3日間で2度のノーノー未遂となった。

◆ 中日「山井・岩瀬以来」の日本シリーズでの快挙が…

 継投によるノーノー未遂は、日本シリーズでもあった。2020年11月24日の第3戦、ソフトバンクVS巨人、ソフトバンクの先発左腕、マット・ムーアは「(チームが)2勝しているし、ふだんどおりを心掛けた」とシリーズ初マウンドの緊張もなく、2四球と2失策の走者4人を許しただけで、7回まで無安打無失点。

 だが、4-0とリードの8回、工藤公康監督は「なかなかこんな大きな舞台でノーヒットノーランなんてね。(ムーアが)少し疲れていたのもわかりました。どうしても勝ちたかった」と意を決し、リバン・モイネロをリリーフに送る。

 モイネロも四死球で一死一、二塁のピンチを招いたものの、8回をゼロに抑え、ノーヒットノーランは継続。9回から守護神・森唯斗がマウンドに上がった。

 森は坂本勇人を二邪飛、岡本和真を三ゴロに打ち取り、2007年の中日・山井大介、岩瀬仁紀以来(完全試合)、シリーズ史上2度目の快挙まであと1人となったが、丸佳浩に中前安打を許し、惜しくも1安打完封リレーとなった。

文=久保田龍雄(くぼた・たつお)

【久保田龍雄・プロフィール】 1960年東京都生まれ。中央大学文学部卒業後、地方紙の記者を経て独立。プロアマ問わず野球を中心に執筆活動を展開している。きめの細かいデータと史実に基づいた考察には定評がある。

この記事を書いたのは

久保田龍雄

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