中村剛也 (C)Kyodo News

◆ 白球つれづれ2025・第17回

 27日、日曜のプロ野球は6試合中4試合が1点差のクロスゲームのスリリングな展開となった。

“伝統の一戦”阪神-巨人戦では9回表にチャンスを掴んだ巨人が岸田行倫選手の左前決勝打。仙台の楽天対ソフトバンク戦は延長11回裏に楽天・渡邊佳明選手が左越えにサヨナラ打を放った。いずれも代打の大仕事だった。横浜ではDeNAのトレバー・バウアー投手の力投で広島に1点差勝ちしている。

 そして本稿の主人公、西武の中村剛也選手である。

 首位を快走するオリックスとの一戦。2-2の同点、9回裏二死一・二塁の場面で代打に起用されると、鮮やかなライナーが左中間を抜けていった。

 プロ24年目の大ベテランともなると、一打ごとに勲章がつく。ただいま41歳8カ月。40代の代打サヨナラ打は球団史上初。パリーグの41歳8カ月以上の年長代打サヨナラ安打となると、阪急時代のダリル・スペンサー以来53年ぶり3人目である。

 チームはオリックス相手に3連戦を勝ち越し。順位こそまだ5位ながら、首位まで2ゲーム差。今年のペナントレースは全く予測がつかない。

 周囲のお祭り騒ぎとは、裏腹にどこかクールに快挙を見つめている。それが通算479本塁打、6度の本塁打王に輝いた“おかわり君”の貫禄であり、矜持なのだろう。

 かつてのように四番に座る機会は減って、代打で起用される場面が増えた。それでも打席で余計なことは考えない。

「気持ちが入り込みすぎると良くない。スタメンで行っている時ぐらいの感覚でいきたい」。

 この日の打席でも、初球はオリックスのアンドレス・マチャドの外角スライダーを大きく空振り。その後2球を見送った後に再び投じられたスライダーがわずかに甘くなるところを見逃さなかった。

 これだけの大打者になれば、打席での「読み」も働く。外角一辺倒なら右に流し打つことを考えてもおかしくない。自身の調子が悪ければ当てに行ってもおかしくない。だが、中村の場合はどこまでも自分の打撃を貫き通す凄みがある。多くの本塁打記録と共に2129個の三振も喫している。

 極論するなら「やるか、やられるか」の一点に身を置き続けてきた。巨人の本塁打王・岡本和真選手が今でも、シーズンオフになると、中村のもとを訪れて打撃指導を仰ぐ。天性のアーチストたちにしかわからない領域があるのだろう。

 この試合では同期入団の栗山巧選手も史上64人目の3000塁打を達成した。こちらも41歳7カ月月の記録到達は谷繁元信(中日)に並ぶ最年長記録だ。

 試合の前半は若手の渡邉勇太朗投手が好投、ドラフト2位ルーキーの渡部聖弥選手が大活躍して、最後は長老が締める。理想的な全員野球が出来れば楽しみも増える。

 ぽっちゃりの“おかわり体型”は変わらなくても、髪の毛には白いものも目立つようになった。長男の勇斗君は今春から父の母校である大阪桐蔭高に入学した。すでに181センチ、91キロの巨漢で、世田谷西リトルシニア時代には神宮球場のスタンドまで一発を叩き込んでいた逸材だ。早くも西武のスカウトなどが熱視線を送っていると言われる。仮に3年後に中村が現役を続けていて、長男がドラフトにかかれば、夢のようなストーリーが出来上がるかも知れない。

「ここまでは投手陣に助けてもらっているし、これからはバッター陣でサポートしていきたい」と、“おかわり君”が語る。

 ちなみに昨年4月終了時点の西武の成績は8勝18敗で首位のソフトバンクからすでに11ゲーム差をつけられていた。それが今季は28日現在、11勝12敗。勝率5割とAクラスも見えている。

 代打と言わず、中村の復活があれば、獅子の逆襲も見えて来る。

文=荒川和夫(あらかわ・かずお)

この記事を書いたのは

荒川和夫

1975年スポーツニッポン新聞社入社。野球担当として巨人、西武、ロッテ、横浜大洋(現DeNA)等を歴任。その後運動部長、編集局長、広告局長等を経て現在はスポーツライターとして活動中

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