柔らかくも的確な解説で知られる真中満氏と、現役時代から変わらぬ明るさと鋭い野球眼を持ち合わせる杉谷拳士氏。DAZNの人気番組『BASEBALL TIME 2025』に主演する二人が、まもなく始まる『日本生命セ・パ交流戦 2025』について大いに語った。
◆ 名プレーヤー&名監督の視線
まず真中氏は「普段行かない地域に行きますので、食事なども楽しみでしたね」と北海道や福岡など、交流戦ならではの土地でリフレッシュしたと懐柔。試合の機会の少ない球場にも「現役時代は意外とシンプルに、通常通りのイメージで戦っていましたね」とし「スコアラーが交流戦の始まる6試合から9試合くらいのデータを取って、先発ローテーションを見るくらいでしたから、そんなに細かくは見ていないですね。僕は感覚的なところを大事にしたかったので」とリーグ戦とあまり変わらぬ姿勢で挑んでいったと告白した。
リーグ優勝も経験した監督時代には「DHはやりやすかったですね」と采配的にはパ・リーグのホームゲームにメリットを感じていたと吐露。「投手交代のときの打順の入れ替えなどは考えなくていいので、シンプルに投手の能力だけで起用できますし、守備的に動きの良くない選手をDHに入れて、そのポジションに動ける選手を守らせるスタイルが基本多かったですね」と攻守両面でDH制をフル活用したと振り返った。

その経験をもとに、今年DHをうまく使えそうなセ・リーグのチームにヤクルトとDeNAを推挙。「ヤクルトは(ドミンゴ)サンタナの動きがあまりいいとは言えないのでDHに据えて、そこに守備的な選手を入れることができますよね。横浜も(タイラー)オースティンや佐野(恵太)辺りをDHに入れやすいでしょう」と理由を説明した。
ただし、交流戦優勝となると「ヤクルトと中日は苦しいかな」と古巣にも忖度なく辛口予想。「上位の4チームは全く差を感じない団子状態。どこか勝つかと言われるとすごく難しいですけれども」と前置きしつつ「タイガースは少しピッチャーは良いという気はしますね」と先発中継ぎ問わず好調の投手力を誇る阪神が“鼻差リード”と予想した。
またパ・リーグに目を向けると「やっぱり日本ハムはピッチャーが揃ってますし、(野手の)選手層も厚いです。優勝争いをしていくイメージが湧きますよね」とリーグ戦でもトップ争いをしている日本ハムを筆頭候補に指名。ダークホースとしては「ピッチャーはすごくいいですからね。ちょっと可能性を秘めているのではないかという気がしますけど」と近年下位に沈みながらも、今年から指揮を執る西口文也監督の下、復活の兆しを見せる西武の快進撃にも期待を寄せた。
◆ ユーティリティ&名エンターテイナーの視線
2022年に引退と、まだ現役時代を色濃く脳裏に刻まれている杉谷氏は「甲子園球場で右中間の打球を追いかけたときの歓声があまりにも大きすぎて『ちゃんと進んでいるのかな?』と思ってしまったのは覚えていますね。あとは前田健太さんからのヒットですね」とリーグ戦では味わえない特別感に感激。慣れていない球場に「フェンスの高さ、硬さ、土、芝が全部違うので、早く練習に入って入念に準備しました」と告白し「打球方向、ピッチャーによってのどういう形で打ってくるのかなど、データを参考にしていました」とユーティリティプレーヤーとして、しっかりとアタマの整理をつけてゲームに臨んだと振り返った。
自らもフル活用したデータは、近年さらに進化していることは承知の上で「どこに何を投げたらある程度こういう形で打ってくると言う予測ができますよね。ディフェンスでもオフェンスでも。そこは見どころになってくると思います」と普段対戦のないチームとの戦いこそ、データ分析の進んでいるチームにアドバンテージがあると力説した。
またパ・リーグ優勢の交流戦には「ここ10年ぐらい、目玉の選手たちがドラフトでパ・リーグに行く傾向はすごく感じていて、その選手たちが順当に育っていってチームの軸になっていますよね」と通算パ1306勝・セ1174勝の差はそこにあると分析。しかしここ4年は2勝2敗、しかもいずれの年も僅差となっていることも踏まえ「今年はどうなるかはわかりませんよ」と白熱した戦いになると期待した。

交流戦のキーのひとつになるDH制に「うまく使えそうなのはタイガースとジャイアンツだと思います」と名門2球団の名前を列挙。「ポジションが被っていてなかなか試合に出られない選手がいるので、そこにDHを使うことによって得点力が上がる感じがありますね。適度に主力をDHに入れて休ませることもできますし」と厚い選手層をフルに活用できると説明した。
その逆、セ・リーグ主催ではDHが使えないことに「投手交代も大事になってくる」とパ・リーグサイドの難しさに言及。ピッチャーに代打起用の可能性に触れ「そうなると(投手の)枚数が必要になるので、ファイターズとバファローズが抜けているかと思いますね」と先発リリーフともに充実している2球団が有利と予想した。
さらに昨年はリーグ戦では芳しくなかった楽天が「順当に打つべく選手たちが全員調子を上げてきましたからね」と一気に優勝を果たした例を挙げたうえで、今年は「ベイスターズの勢いに注目ですね」と昨年の日本一チームをダークホースに推挙。
「(トレバー)バウアーはスーパーピッチャーだと思っているので、本当に中4日で回るのかどうか」と元サイ・ヤング賞投手の存在に着目。続けて「度会(隆輝)くんや松尾(汐恩)くんなど若い選手たちが出てきているので、中堅たちも一気に上がってくると勢いに乗ってくると勝手に思っています」と楽天の再来を予言した。
6月3日から22日まで約3週間、リーグ戦とは違った戦いが繰り広げられる『日本生命セ・パ交流戦 2025』。ここまで順調なチームが勝ち進むのか。それとも大波乱が起こるのか。20年目のメモリアルイヤーもセとパの意地がぶつかり合う。
取材・文 / 萩原孝弘 写真 / 兼子愼一郎