ドジャース・山本由伸

◆ 白球つれづれ2025・第24回

 ドジャースのエースに成長した山本由伸投手が苦悶の表情を浮かべてマウンドを降りたのは、日本時間14日に行われたジャイアンツ戦のことだ。

 大切な首位攻防戦の初戦を任されたが、初回から自慢の制球が定まらない。

 150キロ超のストレートに、多彩な変化球をコーナーに投げ分けて、最後は自慢のスプリットで討ち取っていくのが本来の投球。だが、ジャイアンツ打線は膝元に落ちるスプリットをことごとく見逃していく。そこに輪をかけてこの日の球審は際どい球をボールの判定。これには山本がマウンドで地団駄を踏む。捕手のウィル・スミスもあきれ返り、ド軍ベンチではデーブ・ロバーツ監督が判定にかみついている。一方でジャイアンツの打者からもボール、ストライクの判定に、怪訝な表情を浮かべる場面も見られた。

 最近のメジャー中継では1球ごとにストライクゾーンを示す映像が流れるが半数近くのボール判定が「誤審」に見える時もある。現地の放送でも「これはおかしい」と首を傾げるくらいだから、日本人の“身びいき”とは、言えないだろう。

 3回には3連続四球でピンチを広げて6番のケーシー・シュミットに満塁弾を喫するなど5回途中5失点で5敗目を喫した。

「点の取られ方もすごく悪かったし、1球1球の内容も納得いくものではなかった」と試合後は自分の不甲斐なさを責めた山本だが、外部から見れば、打者と戦う前に球審と戦ってしまった、と言う表現が正しく思える。

 こんな消化不良のゲームの10日ほど前にMLBのロブ・マンフレッド・コミッショナーが注目すべき発表を行っている。来季から「ロボット審判」の導入を勧めようと言うものだ。

 正確には、ストライク判定におけるチャレンジ制の自動判定システム(ABS)導入をMLBの試合運営委員会に提案するものである。

 近年のメジャーでは投球間の時間制限を示すピッチクロックや微妙な判定に正確性を期すチャレンジシステムなど、様々な改革に取り組んできた。

 すでに各競技でもサッカーのVAR(ビデオ・アシスタント・レフェリー)など微妙な判定の可視化が進んでいるが、野球でもより一層のチャレンジシステム改良を進めようと言うわけだ。

 3Aなどのマイナーでは実験が行われ、今春のオープン戦でも採用された「ロボット審判」は、球場に取り付けられた計器(ABS)によって、ストライク、ボールの判定が可能になる。判定は従来通り、球審が行うが、微妙な判定に対しては各球団がチャレンジを要求できるもの。これによってABSが最終判断を下し、チームは2度失敗するまで何度でもチャレンジが可能になる。

 今春の場合は、打者がヘルメットに手をやると、チャレンジを認められてボール、ストライクの判定に使用されていたが、投手からチャレンジが出来るのかは未定。それでも今春のキャンプでABSが利用されたケースで52.2%がチャレンジに成功したと言うデータもある。思わず、先日の山本の投球に検証してみたくなる。

 近年のベースボールは審判泣かせの現実が突き付けられている。

 球速は160キロ近くを記録して、打者の手元に来て変化する球種は増えている。ボールゾーンからストライクに入って来る魔球も珍しくない。捕手のフレーミング技術も進歩している。

 米国でデータ分析を行う「サンノゼ・ポテト」によれば、メジャーにおけるストライク、ボールの判定ミスは年間34000回発生。3Aの実績を当てはめれば誤審率は51%に上ると言う。

 世の中すべてが、機械化では味気ない。バックホームで「アウト」「セーフ」の判定で決着がつくシーンはいつだってしびれる。審判にも言い分はあるだろうし、ミスもまた人間臭さと解釈もできる。

 しかし、メジャーの機械化、可視化の波はもはや止まらない。日本にも、間違いなく「ロボット審判」の時代はやって来る。

文=荒川和夫(あらかわ・かずお)

この記事を書いたのは

荒川和夫

1975年スポーツニッポン新聞社入社。野球担当として巨人、西武、ロッテ、横浜大洋(現DeNA)等を歴任。その後運動部長、編集局長、広告局長等を経て現在はスポーツライターとして活動中

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