スタインブレナー・フィールド

 メジャーリーグはちょうどシーズンの折り返し地点を迎えるところだ。

 昨季のア・リーグ覇者ヤンキースは、4月中旬から地区首位をキープ。先月28日(現地時間、以下同)には、2位以下に今季最大となる7ゲーム差をつけ独走態勢に入ろうとしていたが、今月に入ってからは13勝13敗と足踏み状態で、2位以下との差は一気に縮まっている。

 29日現在、2位レイズとは1.5ゲーム差。3位ブルージェイズとも3ゲーム差で、4位レッドソックスと5位オリオールズが調子を上げてくるようなら、三つ巴から大混戦へと様相が激変しても不思議はないだろう。

 そのヤンキースを急追しているのが、レイズである。レイズといえば、メジャー屈指の低予算チームながら、データを駆使しながら、ドラフトとトレードで若手を発掘・育成。独自のスタイルで高予算のライバルと渡り合ってきた。

 2019年から23年まで5年連続でポストシーズン進出を果たしていたが、昨季は80勝82敗で、7年ぶりに負け越しを味わった。さらに追い打ちをかけたのが、昨年10月のハリケーン被害だ。本拠地トロピカーナフィールドの屋根が強風で吹き飛ばされるなど、球場は使用不可の状態に……。今季は、タンパ市内にあるヤンキースのキャンプ施設「スタインブレナー・フィールド」を借りてシーズンを戦っている。

 同球場はヤンキース傘下のマイナーチームの本拠地であり、フィールドのサイズ感はヤンキースタジアムとほぼ同じ。つまり、打者有利なスタジアムである。

 実際、MLB公式データサイトの『Baseball Savant』によると、球場の特性を評価するパークファクターは101となっており、基準の100よりもやや打者有利な傾向が出ている。二塁打、三塁打が出にくい一方で、本塁打は今季の全30球場の中で、6番目に出やすいというデータも出ている。

 レイズが昨季までプレーしていたトロピカーナフィールドは、昨季のパークファクターが96だったように、かなり投手有利な球場だった。レイズはそんな球場の変化にうまく対応したといえるだろう。

 実はレイズと同じく、今季、別の球場を間借りしている球団がもう一つある。それがア・リーグ西地区のアスレチックスだ。こちらも、昨季までメジャー屈指の投手有利なオークランド・アラメダ・カウンティ・コロシアムを本拠地にしていた。

 しかし、アスレチックスが今季暫定ホームにしているサクラメントの「サター・ヘルス・パーク」はそれとは正反対。今季の同球場のパークファクターは112で、これは標高1600mに位置するクアーズフィールドの111を上回り、メジャー全体で1位である。

 アスレチックスといえば、2年前に50勝112敗と大きく低迷したことが記憶に新しい。昨季は69勝93敗に盛り返していたが、今季は再び勝率を下げている。その大きな要因の一つが、暫定のホーム球場にうまく対応できていないことだろう。

 チームの防御率をホームとアウェイで比較すると、5.67と5.16。ホーム防御率は、昨季の4.05から1.62も悪化している。

 ただ、打者有利な球場なら、打線がそれをカバーしてくれればいいのだが、そうはなっていない。ホームでの1試合平均得点は、昨季の3.99から4.29へ微増にとどまっている。つまり、アスレチックス投手陣が球場の特性に苦しむ一方で、打線はそれを生かし切れていないということだ。

 アスレチックスの間借りは27年まで続き、28年からはラスベガスに誕生する新スタジアムでプレーする予定。ご存じの通り、ラスベガスは砂漠のど真ん中にあり、今以上に打者有利になる可能性もある。アスレチックスとすれば、あと2年半かけて、「打高投低」下でのチーム作りを進めたいところだろう。

 一方のレイズだが、来季はトロピカーナフィールドに戻る予定となっている。しかし、新球場の計画が頓挫し、オーナー陣は球団の売却を進めている状況。条件次第で、州内の他の都市への移転話が浮上してもおかしくない。

 明暗が分かれた借りぐらしの2球団。今季に関してはレイズに大仕事をするチャンスがありそうだ。

文=八木遊(やぎ・ゆう)

この記事を書いたのは

八木遊

1976年、和歌山県で生まれる。地元の高校を卒業後、野茂英雄と同じ1995年に渡米。ヤンキース全盛期をアメリカで過ごした。米国で大学を卒業後、某スポーツデータ会社に就職。プロ野球、MLB、NFLの業務などに携わる。

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