ロッテの小野郁は苦しいブルペン事情の中、開幕一軍を掴んだリリーフの中で唯一、オールスター前の戦いを終えた時点で、一軍で投げ続けている。
小野は楽天にFA移籍した鈴木大地の人的補償選手として入団し、移籍1年目の20年から3年連続40試合以上に登板。23年は開幕かららしくない登板が続き、5月4日に一軍登録抹消となり、同月19日に右肘の手術を受けた。昨年4月6日の西武二軍戦で実戦復帰し、シーズン終盤の9月18日に右肘手術後初となる一軍昇格、同日の楽天戦で一軍登板を果たした。昨季は3試合に登板しシーズンを終えた。
「自分の中で2年間何もやっていないので、最後の気持ちというか、本当に勝負の年かなと思います」。
自主トレでは1年間投げられる体づくりとランニングで汗を流した。春季キャンプは石垣組で過ごし、2・3月の練習試合、オープン戦で8試合・8イニングを投げ、イニングを上回る12奪三振、防御率2.25の成績を残し、2年ぶりに開幕一軍を掴み取った。
「まだ(開幕一軍に)入っただけだと思っているので、しっかり結果を残して、最後まで一軍で投げられるように頑張りたいと思います」。
開幕してからはビハインドゲーム、先発投手がイニング途中で降板した後の2番手、勝ちゲーム、同点とさまざまな場面でマウンドに上がる。
5月18日の日本ハム戦では、1-1の12回に登板し1回を無失点に抑え、その裏、西川史礁のサヨナラ打に繋げた。吉井理人監督は試合後、「よく言われますよね、三者凡退でリズムがというんですけど、その通りになってくれて良かったです」と褒めた。
5月31日の日本ハム戦では、今季初めて3-1の勝ち試合の7回に登板。「勝っている試合を任されているので、やりがいもありますし、これからもそういうところでいっぱい投げられればなと思います」。一死走者なしから奈良間大己にライト前に運ばれたが、五十幡亮汰を154キロのストレートで空振り三振、郡司裕也を二ゴロで無失点に抑え、ホールドを挙げた。
特に先発投手がイニング途中でマウンドを降りた後の2番手投手でマウンドに上がった時も存在感を示している。6月11日の広島戦では、2-2の10回一死一、二塁の場面で登板し、末包昇大を1ボール2ストライクから投じた156キロのストレートで遊ゴロ、菊池涼介を156キロのストレートで投直に仕留め、ピンチを脱した。
イニング途中で登板した時には「ただ抑えるだけなので、深くは考えないようにしています」とのこと。イニング頭で投げる時と、イニング途中で投げる時は同じマインドで上がるのだろうかーー。
「基本イニング途中はピンチなので、変わらないっちゃ変わらないですけど、より一層抑えないといけないかなと思います」。
相手に流れが傾き、難しい場面での登板のように見えるが、「抑えればこっちに流れが来るので、一生懸命抑えるだけです」とキッパリ。
7月2日の楽天戦では自己最速となる159キロを計測するなど、前半戦は27試合・23回1/3を投げ、1勝2敗5ホールド、防御率2.31。5月31日の日本ハム戦から現在12試合連続無失点ちゅうだ。7月26日から始まる後半戦も活躍が期待される。暑い夏を乗り切るためにやっていることは「水をいっぱい飲むだけです!」と回答。
「任されたところでしっかり抑えて、チームの流れであったり、よくなるようなピッチングをしたいと思います」。最後まで一軍でプレーするために、マリーンズのブルペンを支えていく。
取材・文=岩下雄太