ロッテの愛斗は今季、4度の送りバントの機会全て初球で決め、そのうち3度得点に結びついている。昨季も3度のバントの機会全て成功し、ロッテに移籍後、1度もバントの失敗がない。
今季4度送りバントを決めた場面を振り返ると、6月5日の巨人戦、1-1の10回無死二塁、6月11日の広島戦、2-2の9回無死一塁、6月15日のヤクルト戦、4-4の9回無死一塁、8月2日の西武戦、4-4の10回無死一塁と、全て緊張感のある局面。6月5日の巨人戦は髙部瑛斗の押し出し死球、6月15日のヤクルト戦は角中勝也の犠飛でサヨナラ勝ちに繋げ、8月2日の西武戦も藤岡裕大の一時勝ち越しとなる適時二塁打につなげている。
愛斗は100%送りバントを決めないといけない場面について、「自分的には集中しすぎない、絶対決めると思わないというか、(絶対に決めると)思えば思うほど、固まっちゃうので。絶対決めるとか思わない。できるだけ力を抜いて、バットは前に置いとくくらい。ここから角度を変えない。来たらバットに当てるくらいのイメージ」で行っているが、高い確率で成功するのは日頃の準備があるからといえる。
本拠地・ZOZOマリンスタジアムの試合前練習ではバントマシンを相手に入念に送りバントの練習をしているが、バントマシンを相手にバント練習するだけではなく、マシンに近づいてバントを練習する。その意図について愛斗は「近い距離で速いボールでできれば、それより遠くなるのは絶対にできる。楽にできるので、それは自己流ですけど。1回決めたら一歩前に出てというのを何回も繰り返して、一番前までいってやって、一番後ろに下がれば簡単なので」と説明する。
これは、西武時代から行っていた練習なのだろうかーー。
「ライオンズの時にキャッチャーの岡田(雅利)さんがやっていたんですよ。岡田さんが代打バントでよくいっていて、ずっと(バントマシンに近づいてのバント練習)それをやっていた。岡田さんと自主トレも4年間くらい一緒にやっていたので、その時にいろいろ教えてもらいました。自分でも前に行ったほうが良かった。打席に立っていないので、その距離で覚えていかないと、バントもさされたら終わりなので。そのためにやっています」。
バントもそうだが、今季は長打を狙う打撃スタイルでバットを長く持って打ち、オープン戦でも2本のアーチを描いた。ZOZOマリンスタジアムの試合前練習でも、「強く飛ばすことだけを意識しています」と、レフトスタンドに角度のついた打球や、ノーステップで打ったときでもライナー性の打球でそのままライトスタンドに飛び込むパワーもある。
◆ 守備・走塁
走塁でも、7月2日の楽天二軍戦、1-1の3回一死一、二塁で山口航輝の二邪飛で二塁手の捕球体勢を見て三塁にタッチアップするなど、相手の隙をついた走塁も武器のひとつである。
「僕の場合は走塁と守備というのは自分のためにやるもんじゃないというか、人のため、チームのためにやるモノだと思っています。1個の打球判断で、そのバッターの打点が消えてしまったり、1個の躊躇で人に迷惑をかけるじゃないですか、走塁って。守備も外野だと1個のミスが失点につながってしまう。そこは常に自分のために走塁するのではなくて、人のために走塁しています。(守備も)できるだけ前に守って、打ち取った打球を捕る。捉えられた打球も間に合うところまで捕る。そこは何も変えずに守備と走塁の部分に関しては人のために。自分のためじゃないぞという気持ちでやっていますし、みんなを助けられるように走塁、守備するのを意識しています」。
試合前練習でいうと、7日のソフトバンク戦の試合前練習ではライトのポジションで打球捕を受けていた。「毎日ポジション変えたりしながら、打球は別に捕らなくてもいいので、打球の質感、こういうふうにいくんだなというのをわかっていれば、動けるので、試合では。捕る、捕らないではなく、打球を見るというのが大事だと思っています」。
チームが優勝を争う順位にいれば、愛斗の守備、犠打、走塁力というのは勝敗を分ける試合において、非常に重要なピースで、重宝される存在だろう。ただ、チームは現在最下位で、若手主体で経験を積ませている現状、なかなか出番が巡ってこない。それでも、「やることは変わらず。自分のできることだけをやるしかないので」と前を向く。与えられた出場機会で結果を残す準備はできている。
取材・文=岩下雄太