ソフトバンク・近藤健介 (C)Kyodo News

◆ 白球つれづれ2025・第32回

 ソフトバンク・近藤健介選手の活躍が目覚ましい。まさに“V獲りの使者”が帰って来た、と言っていいだろう。

 これぞ、首位攻防戦と唸ったのは、10日のソフトバンクvs日本ハム戦だ。

 前日から始まったライバル対決は第1ラウンドをホークスが制して迎えた第2戦。ソフトバンクのリバン・モイネロと日本ハム・伊藤大海のエース対決は火花が散るほどの緊迫した投手戦となった。

 終わってみれば、モイネロが13奪三振を含めた3安打完封。伊藤も8回を4安打1失点の快投。わずかな差を分けたのは天才職人・近藤のバットだった。

 3回二死二塁から左中間二塁打で牧原大成選手が生還、まさに“虎の子”の1点が決勝点となった。

 試合後の小久保裕紀監督はモイネロの快投を褒め、近藤の働きをこう評した。

「今月に入って無双状態が続いている」

 指揮官が激賞する通り、その活躍は図抜けている。

 10日終了時点で8月は8試合で24打数12安打の打率は5割。打てばヒットばかりではない。2日の楽天戦ではNPB史上7人目となる1試合5四球で抜群の選球眼の良さを見せれば、翌日には5号本塁打を含めた猛打賞と相手チームにとっては手の打ちようもない状態だ。

 近藤の今季はケガとの戦いから始まった。

 開幕直後に腰痛で戦列離脱。ヘルニアの手術を終えて、6月に戻るが、今度は左足のかかと痛でまたリタイア。チームはこの間に柳田悠岐、栗原陵矢、周東佑京、今宮健太ら主力選手が次々に故障を発症。一時は最下位まで沈んだ。

 首位を快走する日本ハムとの差を逆転するターニングポイントとなったのは7月1日からの直接対決を3連勝してからだ。続く7月29日からの3連戦を2勝1敗と勝ち越すと、今回の天王山も3連勝スイープ。何と直近9試合の直接対決を8勝1敗だから、完全にVロードを引き寄せた。

 近藤の打撃は現在の日本球界でナンバーワンと言って過言ではない。

 ソフトバンクに移籍した22年には本塁打王と打点王を獲得。昨年は首位打者でMVP。まさに円熟期を迎えている。

 かつて打率4割に最も近い男と話題を呼んだことがある。左右に打ち分けるバットコントロールに加えて、選球眼が素晴らしいから四球も多い。四球を嫌って勝負に行けば、甘いボールの打ち損じは極めて少ない。
 
 そんな近藤の打撃に長打力が加わったのはソフトバンクに移籍後のことである。広くてホームランの出にくい日本ハム時代の旧本拠地・札幌ドームに比べて、ホームランテラスもあるみずほPayPayドームは一発の出やすい球場と言われていた。そこで近藤の向上心と研究心に火がつく。

「バッティングは絶対的な答えがない。常に課題があって、それに取り組むのが楽しい」と、あるインタビューで安打製造機は語っている。

 新天地で、さらに輝くため、徹底して下半身と背筋を鍛えると、左翼方面に流し打っていた打球は、押し込む力が増したことで飛距離もアップする。

 故障で苦しんできた今季も、復活に向けて丹念に準備をしてきたからこそ夏場の大爆発がある。

 近藤の決勝点で敗れた第2戦の後、敵将の新庄剛志監督は完敗を認めながら「近藤君のところ(二死二塁)で違う勝負の手はなかったのか? 仮に歩かせて山川君に3ランを浴びても」と勝負のポイントを振り返った。

 日本ハムに新庄監督が誕生した翌年、近藤はFAでライバル球団に移籍した。その理由として新庄監督の「日替わり起用」を嫌ったからと言う情報も飛び交った。真偽のほどは定かでないが、決断のひとつのきっかけになったのは想像できる。

 新庄ハムが優勝を狙える位置に立った今季、その前に立ちはだかっているのが同じく日本ハムを飛び出した有原航平投手と近藤と言うのも何かの因縁だろうか。

 チームも8月に入ると8勝1敗。未だに柳田や栗原がいなくても、無双の男がいる限り鷹の進撃は止まりそうにない。

文=荒川和夫(あらかわ・かずお)

この記事を書いたのは

荒川和夫

1975年スポーツニッポン新聞社入社。野球担当として巨人、西武、ロッテ、横浜大洋(現DeNA)等を歴任。その後運動部長、編集局長、広告局長等を経て現在はスポーツライターとして活動中

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