全国高校野球選手権大会 (C)Kyodo News

 今月5日に開幕した第107回全国高等学校野球選手権大会も決勝戦を残すのみとなった。注目の対戦カードは西東京代表・日大三と、沖縄代表・沖縄尚学。これまでに見せた両者の戦いぶりを守備力、攻撃力、投手力の3つに分けて、今夏最後の一戦を展望していきたい。

■守備力

 まず守備で分があるのは沖縄尚学だ。4試合で8失策を記録している日大三に対して、沖縄尚学は5試合で5失策。そのうち4失策を準決勝の山梨学院戦で記録したが、準々決勝までは鉄壁の守備を誇った。

 特に内野の要、ショートの真喜志拓斗は広い守備範囲と素早いスローイング、的確な判断力で投手を盛り立てる。投手への声掛けのタイミングなども絶妙で、キャプテンとしてチームへの貢献度は大きい。

 今大会に限らず守備の綻びから大きく流れが変わる試合も目立つ。どちらのチームも、いかに相手よりミスを少なくできるかがカギとなるだろう。

■打撃力

 打撃に関しては日大三が沖縄尚学を上回っている。5試合で16得点の沖縄尚学に対して、日大三は4試合で21得点。長打の数も11対7と、日大三が圧倒している。

 さらに目立つのが、日大三の四死球の多さ。打線は4試合で21四死球を記録し、5試合で8四死球の沖縄尚学を大きく上回っている。

 日大三打線が徹底しているのは、得点圏に走者を進めること。7犠打の松岡翼を筆頭に、6選手が合計17犠打を決めている。今大会は試合終盤の大事な場面で送りバントを決められないチームが目立つが、日大三は高い確率で犠打を成功させている。相手投手をジワジワと追い詰めていくのが、日大三打線の強みといえるだろう。

■投手力

 最後の投手力は沖縄尚学が上。日大三も4試合で11失点と悪くないが、沖縄尚学は1~2回戦で相手を零封したのを含めて5試合合計8失点に抑え込んでいる。

 沖縄尚学・末吉良丞、日大三・近藤優樹の両―スは、どちらも防御率は1点台を誇るが、大きく違うのが三振を奪う能力だ。奪三振率を比べると、末吉が10.74なのに対して、近藤は4.15。両投手のスタイルの違いともいえるが、日大三は守備にやや難があるだけに不安を残す。

 以上、守備力と投手力で“2ポイント”を獲得した沖縄尚学がやや優位といいたいところだが、もう一つの重要なファクターにも触れておこう。それが疲労度だ。

 今夏も連日酷暑が続き、両チームのナインは疲労困憊のはず。ただ、1回戦から登場した沖縄尚学に比べると、2回戦から登場した日大三は体力的に若干の優位性があるはず。

 特に投手は1週間で500球以内という球数制限がある。直近の6日間で335球を投じている沖縄尚学の末吉には、疲れとともに残り165球というリミットが立ちはだかる。9イニングならその数に達する可能性は低いが、万が一、延長タイブレークになったときはやむを得ず降板というシーンがあっても驚かない。

 末吉に対峙する日大三打線が待球作戦で臨むことも選択肢の一つとなり得るだろう。いずれにしても、両チームには決勝戦の名にふさわしい好ゲームを期待したいところだ。

文=八木遊(やぎ・ゆう)

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