中日に連敗し、混沌としてきたCS争い。本拠地で負けられない中、大阪桐蔭バッテリーの活躍でスイープを阻止した。
移籍後横浜スタジアム初見参の藤浪晋太郎は、初回から2つの空振り三振を奪う上々のスタートを切ると、3回まで6奪三振のパーフェクトピッチングを披露。右打者8人を並べた中日打線を牛耳っていたが、4回に先頭の岡林勇希にこのゲーム初ヒットを許すと、1死後上林誠知の足に当ててしまうなど制球難が顔を出し始める。しかし後続を断ち切り無失点で切り抜けると、気合の表情で吠えながらベンチへ帰還した。
1点リードで迎えた5回には、9連続ボールと嫌な雰囲気がスタジアムに立ち込めたが、球威で押し込む投球でピンチを脱し、勝利投手の権利を手にした。6回にもスコアリングポジションにランナーを背負うも、最後もキレのあるカットボールで空振り三振に斬って取りガッツポーズ。7回にもマウンドに上がるもこの日初の連打を浴び、1死2-3塁と一打逆転のピンチも動じずに後続を断った。その裏に代打を送られ役目を終えた藤浪は、102球で被安打4、奪三振9、与四球2、与死球1の無失点とポテンシャルの高さを見せつけるとともに、大阪桐蔭の10歳年上の先輩を臆せずリードした女房役・松尾汐恩の大胆さも光った。
NPB復帰後初勝利を挙げた藤浪は「冷静ですね」と松尾を評価。「自分のことも打者のこともよく見ていてくれていますし、肝も座っているなと思います。ブロッキング、フレーミング、リードもそうですけれども、素晴らしいキャッチャーだと思いました」と後輩をたたえた。
三浦監督も「汐恩も臆することなく、10歳下とか関係なくしっかりと引っ張ってましたし、晋太郎もそれに応えていました。しっかりここに投げてこいというジェスチャーもやってましたし、勝つために自分のやることをしっかりやってくれました」と絶賛した。
松尾も「初めて組んだので本当に不安が多かったんですけど」と試合前の素直な心境を表したが「試合に入ったら2人でいいものを築き上げられて、いろいろなところでいいものを完成させられたのは良かったと思います」とホッとした表情でゲームを回想。藤浪のボールには「テレビで見ていた球と、受けてみたら全然圧が違いました。すごかったです」と驚きつつ「藤浪さんのいい球を投げ込ませるのが僕の今日のテーマとして持っていたので、そこを徹底してやりました」と胸を張った。
甲子園を沸かせた2人のスターが、時を経て横浜でバッテリーを組み掴んだ1勝。チームにとっても両雄にとっても、ひとつのターニングポイントになりそうな勝利だった。
取材・文・写真/ 萩原孝弘