中日・大野雄大 (C)Kyodo News

◆ 白球つれづれ2025・第37回

 来週9月26日で中日の大野雄大投手は37歳の誕生日を迎える。

 そんなプロ15年目の大ベテランが、左肘の手術を乗り越えて5年ぶりの2ケタ勝利を記録した。

 14日に甲子園で行われた阪神戦に先発。8回を投げて被安打4、三塁も踏ませぬ快投で10勝目をマークした。

 これで自身4連勝。そのうち3勝が阪神相手と言う“虎キラー”ぶりだ。優勝決定後だけなら、相手の気合い不足とも言えるが、シーズンを通してカモにしている。藤川阪神からすれば中日は今季唯一負け越しているチーム。(10勝11敗、14日現在)クライマックスシリーズ進出は厳しい中日だが、最も対戦したくないのも中日であり、大野なのだ。

「まさか今年10勝勝てるとは。諦めずにやってきて良かった」。試合後のコメントにも長い故障との戦いを乗り越えた実感が込められていた。

 2年前に左肘のクリーニング手術に踏み切ると、この年は未勝利に終わっている。昨年も本来の投球を取り戻せず2勝止まり。「大野は終わった」と言う声も聞かれた。

 20年には最優秀防御率(1.82)に最多奪三振(148)の二冠に輝き、沢村賞も受賞した。この前年の9月には阪神戦でノーヒットノーランも記録している。150キロを超すストレートとフォークを軸に、力でねじ伏せる全盛期だった。

 しかし、肩、肘の故障から球威を失い、白星からも遠ざかっていく。

 本格派から、技巧派への転身。大野はスピードを捨て、ツーシーム、カットボールやスライダーとカーブをミックスした「スラーブ」に活路を求めていく。チェンジアップも取り入れた。これらの魔球をコーナーギリギリに制球していけば簡単には打たれない。“二ユー大野”の誕生である。

 10勝はチームの勝ち頭。チームの若きエース・髙橋宏斗が6勝止まりだから、大黒柱復活と言ってもいい。防御率2.05は規定投球回数には達していないが、セ・リーグの投手成績に当てはめるとDeNAのアンソニー・ケイに次ぐ4位相当。村上頌樹(阪神)や東克樹(DeNA)らのエース級を凌ぐ数字は見事の一語に尽きる。シーズンオフには「カムバック賞」の受賞も当確だろう。

 毎年のようにベテランには現役を続けられるか? 退団か? のいばらの道が待ち受ける。

 今年なら巨人の田中将大投手が200勝を目前にして苦しんでいる。同じく巨人の坂本勇人選手も出場の機会を減らしている。メジャーでは先頃、ヤンキースの3Aに所属する前田健太投手が、今季限りでMLBを去り、日本球界復帰を目指すことを明らかにした。いずれも大野と同じ88年生まれのスターたちだ。

 同じ中日に目を向けるとこちらも若返りのチーム方針が見えて来る。

 中田翔選手が今季限りの現役引退を表明。投手陣でも祖父江大輔、岡田俊哉ら共に戦ってきた男たちがユニホームを脱ぐ。37歳にして2ケタ勝利を挙げるのが、いかに至難の業なのかを改めて思い知らされる。まさに“老兵は死なず”である。

 7月のヤクルト戦では、脚をつりながら完封目前の快投を見せた。

 8月の同ヤクルト戦では、京セラドーム5連勝と言うセの投手では唯一無二の記録を樹立する。

 9月も阪神相手の連勝で何と7月以降は7勝1敗の快進撃が続く。

 井上一樹新監督の下でチームは最下位からの脱出と、上位進出を狙ったが現状はBクラスから浮上とはいかない。

 上林誠知、細川成也に新外国人ジェイソン・ボスラーらで組む打線は迫力を増した。ライデル・マルティネスの巨人移籍で空いた守護神の穴は松山晋也投手が見事に埋めた。だがそれでも投打ともに「生え抜き組」の成長は物足りない。

 そんな中で、手本とも言うべき大ベテランエースが帰って来た。だからこそ根尾昂、石川昂弥、金丸夢斗らの“ドラ1組”を中心とした若手の台頭が望まれる。

 大野の2ケタを無駄にしてはならない。

文=荒川和夫(あらかわ・かずお)

この記事を書いたのは

荒川和夫

1975年スポーツニッポン新聞社入社。野球担当として巨人、西武、ロッテ、横浜大洋(現DeNA)等を歴任。その後運動部長、編集局長、広告局長等を経て現在はスポーツライターとして活動中

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