正捕手として確固たる地位を築き、打撃でも首位打者が視野に入るなどの活躍を見せた2024年の山本祐大。しかしクライマックスシリーズに背番号50の姿はなかった。広島とのCS争いの真っ只中の昨年9月15日、右手首に死球を受け尺骨を骨折。驚異的な回復力を見せ、日本シリーズでは4戦からベンチ入りを果たしたが、試合出場は叶わずに終わった。
死球での怪我には不可抗力もある。しかし今年は「去年怪我をして(ファームに)落ちてしまったので、怪我だけは本当に避けようと思ってやっていました。全力でやった上での怪我は仕方がないですけれども、それ以外の防げる怪我は絶対にしないと思ってやってきました」と一軍での完走を誓った結果、2023年と同様フルシーズン戦力として機能した部分には満足感も滲ませた。
そして11日から再びCSへ挑むベイスターズ。「これはもう個人的な思いなんですけれども、やっぱり去年出られなかったので…CSに出たい思いは人一倍あるのかなと思います」とその想いを抱いたまま、あの舞台へと向かう。
まず捕手として、ファーストステージの相手の巨人打線に対し「もちろん岡本さんもそうですし、去年と違うメンバーではキャベッジと泉口友汰は主力として出て今年頑張ってたので」と主力3名の名を挙げ警戒。「そこを勢いに乗せないってところは、すごく初めの段階でも大事だなと思います。そこが繋がり出すと、岡本さんがランナーを返せるチャンスになっちゃうので、なんとかそこを切りたいなと思ってます」と打線を分断させるためにも重要なポイントになると明かした。そのうえで「だからといって5番から8番までが弱いとは思っていませんので、簡単に歩かせるのもどうかと個人的には思っています」と昨年のCSでは岡本との勝負を避けるケースが散見されたが、今年は違う攻め方も視野に入れつつ対策を練る。
次に打撃面では「上げられないままで終わるのではなく、上げられたことは今年の僕の成長だなと思います」と7月終了時の打率は.223と低調だったが、8月の月間打率は.382と一気に調子を上げ、最終的には.262と“打てるキャッチャー”として及第点の数字を残したことは自信になったと告白。また現状タイラー・オースティンとダヤン・ビシエドのCS出場が微妙なこともあり、打順も上がる可能性が高くなることにも「本当にいいところで回ってきますし、いい場面で打席に立つなというのが終盤の僕のイメージですね。このチームは上位にすごく塁を賑わさせてくれる選手が多いので、なんとか1本打ちたいです。でも力んでも仕方がないので自分にチャンスが来たときには、なんとか頑張ろうと思います」とリラックスを心がけ、結果につなげる考えを示した。
そこには「あの場面で任せてもらえたことは、すごく選手として嬉しかったです。バントが悪いとかではなく、何年か前の僕だったら、あそこで打たせてもらえるなんて考えられなかったですから」と5番に座った9月26日、同点の7回無死一・二塁で打てのサインを受け、見事にライト前に弾き返したことに「積み重ねていったことで、そういう評価をしていただけたんだなって思います」と努力で信頼を掴めたことに自信を深めた。成功体験を礎に「メンタルはすごく大事なので、活かしていきたい」といいイメージを持ってCSに臨んでいく。
扇の要として迎える短期決戦。「勢いに乗れるとベイスターズはすごく点が取れるチームだということは自負しています」とストロングポイントを再確認。「守備側では1点でも少なくすれば、最後まで勝機はあると思います。(打撃では)向こうもいいピッチャーしか出てこないと思うので、甘い球を仕留めきれるか、できないかの戦いになると思います」と要点をアタマの中にインプットした山本祐大。今年は昨年の分まで、グラウンドで暴れて魅せる。
取材・文・写真:萩原孝弘