スタンフォード大・佐々木麟太郎 (C)Kyodo News

◆ 白球つれづれ2025・第42回

 今年のプロ野球ドラフト会議が23日に開かれる。

 事前の予測では野手で創価大の立石正広内野手、投手では健大高崎高の158キロ右腕・石垣元気や即戦力の呼び声が高い青山学院大・中西聖輝らが1位指名確実と目されている。

 こうした中で、別の角度から大きな注目を集めているのが米国・スタンフォード大の佐々木麟太郎内野手だ。

 今年の日米間ドラフト指名選手の獲得に関する新たなルール確認でNPBでも指名が“解禁”されたもの。これによって現在大学2年の佐々木でも日米のドラフト指名が可能になった。

 花巻東高時代に高校通算140本塁打の記録を打ち立てた怪物。その時点で日本のドラフトにかかれば1位指名確実だったが、選択したのは米国への大学進学。父親が母校・花巻東の佐々木洋監督で、同校の先輩はドジャースの大谷翔平選手。大谷が高校時代からメジャー志望であったように、佐々木も早い時期から米国での武者修行を決断していた。

 所属するスタンフォード大学は全米でも文武両道を誇る屈指の名門校だ。

 NCAA(全米体育協会)の野球1部リーグは毎年2月に開幕して5月までの間に50試合以上を戦う。同大はメジャーリーガーも多く輩出するなどレベルは高い。もちろん学業をおろそかには出来ないので、佐々木も入学してから、相当苦戦したと言う。

 大学1年目の成績は52試合に出場して打率.269、7本塁打、41打点。春先は好調な打撃で本塁打も量産したが、シーズン終盤には下降カーブを描き収穫と課題が相半ばする1年だった。

 それでも将来性の高い評価は変わらない。現地でも「将来メジャーで活躍の期待される選手」と報じられ、今春には日本から巨人、西武ら複数球団が視察に訪れている。日本のドラフトでも指名解禁となれば、大注目に値する。

 だが、佐々木の指名にはいくつかの高いハードルがあるのも事実だ。

 最大の難関は、日本球団が1位指名しても、来年の7月に予定されるMLBドラフトにも指名が可能なこと。

 さらに詳しく規定を記すと、日本球団が交渉権を獲得しても、現実に交渉と契約が可能になるのは佐々木が次のリーグ戦を終了する5月以降となる。この場合のNPB球団の契約期限は同年7月末まで。仮にメジャードラフトを待たずに日本球団が獲得した場合でも、出場は来年夏以降が最短となる。つまり、日本球団としては大きなリスクを背負って獲得に成功したとしても、来年の即戦力としては計算が立てづらい。さらに「今の打撃では厳しい内角攻めをされたら苦しい」と辛口の評価を下すスカウトもいる。

 こうした事情を勘案したうえで今年のNPB各球団のドラフト事情を見てみる。両リーグで最下位に終わったヤクルトやロッテは新監督に代わって抜本的なチーム改革に舵を切っている。ヤクルトなどは主砲・村上宗隆選手のメジャー流失などで大砲は喉から手が出るほど欲しい。しかし、その前に弱体投手陣の再建が急務。佐々木指名で勝負しても、獲得失敗に終わった時のダメージは大きすぎる。

 今年のドラフトは野手の即戦力候補が少ないと言われる。そうなると効率よい戦略が例年以上に求められる。これが第二の難関である。

 シーズンで上位の成績を収めたチームは、ドラフトにおいて指名が重複した場合にくじ引きを外せば、ウェーバー順で下位チームから優先権が与えられる。

 下位チームは、仮に指名くじを外しても、代替選手へのリカバーは可能だが、上位チームは、次の意中の選手がいないケースもある。

 セ・リーグ3位の巨人は岡本和真選手のポスティング流失問題も抱えているから佐々木ほどのスター性のある大砲役は欲しい。しかし、チームの現状を考えれば獲得失敗のリスクを背負えるか? 大いに疑問だ。

 過去のドラフトで大胆な戦略を執ったり、強引な指名で話題を呼んだチームもある。そうした中で、最も今回に近い例は日本ハムの大谷強硬指名だろう。

 花巻東高時代から「日本のドラフトお断り」と宣言してメジャー入りを目指した逸材を敢然と指名。その後、栗山英樹監督(当時)らの熱心な二刀流育成計画が功を奏して逆転入団を勝ち取った。

 その年のナンバーワン選手を指名するのが日本ハム流のドラフト戦略。加えてチームでは清宮幸太郎、万波中正ら伸び盛りの若手野手が揃っている。大谷獲得時に築いた父である佐々木洋監督とのパイプもある。今のチームの勢いなら仮に獲得に失敗しても許容範囲のトライである。

 一方で、佐々木のスタンフォード進学は単に野球留学にとどまらず「将来、社会人になった時にも生かされる」と言う佐々木家の方針でもある。これだけを見れば大学4年を経ての進路決定も十分にあり得る。

 ドラフト秒読みの20日現在、それでも佐々木指名を公表するチームは現れない。アッと驚くウルトラ策か?それとも冒険回避か?

 審判の時がやって来る。

文=荒川和夫(あらかわ・かずお)

この記事を書いたのは

荒川和夫

1975年スポーツニッポン新聞社入社。野球担当として巨人、西武、ロッテ、横浜大洋(現DeNA)等を歴任。その後運動部長、編集局長、広告局長等を経て現在はスポーツライターとして活動中

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