阪神とソフトバンクの日本シリーズが盛り上がる中、他の10球団はすでに来季に向けて動き出している。
今季セ・リーグ最下位に沈んだヤクルトは、先日のドラフト1~2位で大学生内野手を指名。メジャー流出が確定的な村上宗隆の穴を埋める戦略をとった。
その村上に続きメジャー移籍が濃厚となったのが、巨人の岡本和真だ。村上と同じく球団はポスティングを容認する方向で、球界が誇る和製スラッガー2人が奇しくも同じタイミングでメジャー挑戦を果たすことになりそうだ。
それぞれの契約金額は、村上が300億円規模、岡本も100億円規模といわれているが、果たして2人にその価値があるのだろうか。
左右の違いがあるが、2人の最大の共通点はその類まれなる長打力。2020年から24年まで5年連続でセ・リーグの本塁打王を争い、5年連続でどちらかがタイトルを獲得してきた。
これまでプロ野球で本塁打王を獲得し、メジャーに挑戦した打者は3人。怪物・松井秀喜氏、猛牛軍団の不動の4番・中村紀洋氏、そして昨季途中に古巣に復帰した筒香嘉智である。
3人の中で最もメジャーに適応したのは言わずもがな松井氏だった。巨人での10シーズンで332本塁打の実績を引っ提げ、ヤンキースに入団。長距離砲として期待されたが、メジャーでのシーズン最多は31本止まり。メジャーでの通算10シーズンで175本塁打と巨人時代の約半数に甘んじた。これは、敢えて一発にこだわらず、クラッチヒッターに徹した結果だろう。
一方で、中村氏と筒香は日本時代にそれぞれ307本塁打、203本塁打を放ち、やはり長距離砲と期待されメジャーへ移籍した。ところが、中村氏はチーム事情などもあり、メジャーでの出場機会が限られ、2005年にドジャースでわずか1シーズン、17試合に出場しただけで、豪快なアーチを放つこともなかった。
もう一人の筒香は、渡米した2020年はコロナ禍で出鼻をくじかれ、1年目は51試合で8本塁打を放ったが、打率は1割台に低迷。2年目はシーズン終盤に3チーム目のパイレーツで一定の活躍を見せたが、結局3シーズンで合計18本塁打に終わった。
サンプル数が3人と少ないのは百も承知だが、本塁打王を獲得した日本人の長距離砲3人のうち2人はメジャーで通用しなかったことになる。
そして話を村上と岡本に戻すと、2人にとって大きな不安要素の一つとなるが、ともに本塁打が出易い神宮球場と東京ドームを本拠地としていたことだろう。真っ芯でなくても柵越えが可能な日本と違い、広い球場の多いメジャーの環境に苦しむことは容易に想像できる。
また村上と岡本のNPB通算打率を見ると、どちらも2割7分台。規定打席に到達し、打率3割を残したのは村上が2度、岡本は1度しかない。
ほとんどの日本人打者はメジャーで打率を下げてきた過去もあるだけに、村上と岡本も例外なく打率も下げる可能性が高いだろう。
また、打撃と同じかそれ以上に不安視されるのが守備面だ。どちらも本職は内野手で、外野を守ることもできるが、特に村上の三塁守備には疑問符が付きまとう。今季は春先に外野も挑戦したが、結局ケガなどもあって頓挫した。
2人の肩の強さもメジャーに入れば良くて平均レベル。日本でゴールデングラブ賞の常連だった鈴木誠也でさえ外野失格のレッテルを貼られるほどだ。2人が噂されるだけの大型契約を結べるかは、どの球場を本拠地とするか、どのポジションを守るかにも左右されるだろう。
文=八木遊(やぎ・ゆう)