「一番は悔しい気持ちが大きいですし、自分のやってきたことはこんなものなのかという葛藤がありましたけど、チームの誰よりも自分が練習していると思っている。一番最後まで室内で打っていますし、トレーニングしたりしているので、自分のやってきたこと、自分のやるべきことを曲げなかったことが今年の良かったところかなと思います」。
ロッテ・愛斗は今季、悔しい1年になったが、自分ができること、やるべきことをしっかり1年間貫いた。
今季に向けて、「逆方向もそうですけど、フォームもそうだし、自分がなりたいというか、こういうふうにしていこうというのがあるので大幅にバッティングを変えました」と、“長打”を狙うスタイルに変更。
今年も浅村栄斗(楽天)らと自主トレを行い、「今年はいっぱい聞いて、いっぱい教えてもらって、こういうふうに打つんだ、こういう風に体を使うんだというのをすごく教えてもらった自主トレでした」と多くの学びを得た。
石垣島春季キャンプでは、全体練習後に松川虎生とともにバットを振り、球場を後にするのはいつもチームで最後だった。昨年の石垣島春季キャンプでは、テーマを決めて、全体練習後に打ち込んでいたが、今年は「最後はストレートを打つんですけど、ロングティーやったり、スローボールを打つとか、泳がされる、詰まるときに、完璧なタイミングで完璧なポイントで打てる打席は少ないので、ちょっと泳がされても飛ばす、ちょっと刺されても飛ばす打ち方を浅村さんがやっていた。泳いだら、泳ぎっぱなしではなくて、泳いでも飛ばす、詰まっても飛ばす」と、数をこなすだけでなく、課題を持ってバットを振った。
オープン戦では「頭から行った時にいかに内容よく行けるか、長打を打てれば最高ですし、強い打球、自分のスイングが練習から試合もできていると思っています」と、スタメン出場した3月4日のDeNA戦、6日の広島戦で本塁打を放った。
◆ 開幕はファームスタート
開幕はファームで迎えたが、4月は24試合に出場して打率.319(69-22)、1本塁打、10打点の成績を残すと、5月は15試合に出場して打率.356(59-21)、1本塁打、6打点と打ちまくった。
4月12日の西武二軍戦、3-1の8回無死一、三塁の第4打席、水上由伸が投じた初球、右中間を破る2点適時二塁打をはじめ、右中間に飛ばす当たりが非常に良かった。“右中間”に打っている時は好調のバロメーターのひとつだったりするのだろうかーー。
「そんなことはないですけど、僕はどっちにも打てるタイプ。右方向、引っ張る方向だけじゃなく、両方打てるような意識はしています」。
4月6日のDeNA二軍戦、2-0の5回一死一塁の第3打席、庄司陽斗に対し1ボールからの2球目にノーステップ打法で打ち、130キロのスライダーを詰まりながらセンター前に運ぶなど、“ノーステップ気味”に打つこともあった。
そこに関して「練習からやっていること。試合になったら、臨機応変に対応しないといけないので、自分の1個の引き出しとして持っているという感じです」と教えてくれた。
守っても、4月5日のDeNA二軍戦、3-0の5回二死一、二塁で度会隆輝が放った左中間の安打をセンター・愛斗が素早く処理し、二塁ベース上でオーバーランしていた一塁走者・栗飯原龍之介を見逃さず、二塁へ送球して二塁ベース上でタッチアウト。二塁走者の生還よりも先にアウトにしたため、得点を許さない好プレーを披露した。5月18日のヤクルト二軍戦、0-4の3回無死一塁で、西村瑠伊斗が放ったライトへのノーバウンドかワンバウンドで捕球するか難しい当たりをショートバウンドでキャッチし、素早く二塁へ送球しフォースアウトにするなど、ファームでも持ち前の守備力の高さを何度も見せた。
「守備は何も変えずに自分のやってきたことを出すくらいの感じでやっているので、いい感じなのかなという感じですね」。
走っても、「バッティングだけじゃなく、守備、走塁も結果として見せないと上がれないのかなと。走塁は相手の隙をつくということしかできないと思うので、積極的な走塁というよりは相手の隙をつく走塁を心がけていました」と、4月25日のDeNA二軍戦の0-0の2回一死一塁で、山口航輝が放ったレフト後方のフライアウトで一塁から二塁にタッチアップすれば、5月23日の楽天二軍戦、1-0の5回無死一、二塁で角中勝也の1ストライクからの2球目に三塁盗塁を決めた。同日の楽天戦、4-1の8回一死満塁で大下誠一郎のライトへの犠飛で一塁から二塁にタッチアップし、藤田和樹の適時打で生還するなど、“隙のない走塁”を披露した。
◆ 代打バント
5月27日に今季初昇格。出場機会が限られる中で、代打バントで存在感を見せた。今季は4度の送りバントの機会全て初球で決め、そのうち3度得点に結びついた。
今季4度送りバントを決めた場面を振り返ると、6月5日の巨人戦、1-1の10回無死二塁、6月11日の広島戦、2-2の9回無死一塁、6月15日のヤクルト戦、4-4の9回無死一塁、8月2日の西武戦、4-4の10回無死一塁と、全て緊張感のある局面。6月5日の巨人戦は髙部瑛斗の押し出し死球、6月15日のヤクルト戦は角中勝也の犠飛でサヨナラ勝ちに繋げ、8月2日の西武戦も藤岡裕大の一時勝ち越しとなる適時二塁打につなげている。
愛斗は100%送りバントを決めないといけない場面について、「自分的には集中しすぎない、絶対決めると思わないというか、(絶対に決めると)思えば思うほど、固まっちゃうので。絶対決めるとか思わない。できるだけ力を抜いて、バットは前に置いとくくらい。ここから角度を変えない。来たらバットに当てるくらいのイメージ」で行っているが、高い確率で成功するのは日頃の準備があるからといえる。
本拠地・ZOZOマリンスタジアムの試合前練習ではバントマシンを相手に入念に送りバントの練習をしていたが、バントマシンを相手にバント練習するだけではなく、マシンに近づいてバントを練習する。その意図について愛斗は「近い距離で速いボールでできれば、それより遠くなるのは絶対にできる。楽にできるので、それは自己流ですけど。1回決めたら一歩前に出てというのを何回も繰り返して、一番前までいってやって、一番後ろに下がれば簡単なので」と説明した。
バッティングにおいてバント、右打ちは愛斗が得意にしている部分だが、こだわっていた長打に関して「そこしか見ていない感じですかね。長打にこだわるのは変わらないというか、長打を打つための形、フォームづくりをやっています」と、その姿勢はブレない。
27日まで行われた秋季練習でも、「引っ張ってホームランは誰でも打てるので、浅村さんの特徴として右方向に長打が出る。引っ張ったら高確率にホームランになるというのが最終形態だと思うので、そこを目指して、こう打ったら、いい感じにボールに入れる、飛ぶなというのを考えながらやっている感じですね」と、ノーステップで打ったり、逆方向に打ったり、長打を打つための打撃練習を自らに課した。
「気持ちは試合に出られるように。出してもらえるように、どうすればいいか考えます」。今季最下位に沈むチーム事情で守備固め、代打バントの機会は少なかったが、チームが優勝を争う順位にいれば、愛斗の守備、犠打、走塁力というのは1点を争う試合では重宝がられる存在だ。来季はこれまで取り組んできたことが報われる1年になることを願っている。
取材・文=岩下雄太
 
				 
			 
			 
			 
			 
								 
								 
								 
								 
								 
								 
								 
								 
								 
								 
								 
								