◆ 3年目の巻き返しへ
即戦力の中継ぎとして期待され、23年ドラフト2位の高評価でDeNAに入団した松本凌人。
額面通りルーキーイヤーでは開幕一軍キップを掴み、すぐさまホールドをマークするなど活躍したが、その後は二軍暮らし。今シーズンもわずか4試合登板に終わり「入団して2年間、いい成績を残せていない」と忸怩たる時間を過ごした。
来季には「3年目ということで、去年や今年と比べてチャンスは減っていくと思います。そこは自分でもわかっています」と危機感を募らせる。「2年間ダメだったので目の色を変えてやっていかないと」との思いとともに、今季限りで引退を決めた森唯斗の背番号を引き継ぎたいと球団に直訴し、了承された。
森唯斗の引退試合では一、二軍含めた“オールベイスターズ”が集結するなど、その人望はチームでも随一だった。その中でも「入団してから近くでお世話していただいた」と松本にとってはかけがえのない兄貴分。「来年も一緒にやりたい気持ちもありましたが、そういう形になってしまったので」と共闘が叶わなくなった現実を憂いつつ「背番号をいただくことでいつでも唯斗さんが後ろにいると思ってプレイしたい」と38番を力に変えると意気込んだ。
常勝ホークスのクローザーから「モチベーションだとか、一緒にプレイさせていただいた中で、自分もいい形で野球に取り組めていました」と多くのことを学んだ。
「野球の面も私生活の面も一緒にいさしていただいた中で、練習に対する姿勢だったり、プレーの中でも尊敬していました。チームメイトの好かれ方、愛され方はやっぱり野球だけじゃないところもあると思うんで、そういった人間性のところもしっかりとしたいです。プレースタイルでも気迫あるピッチングや、任されたところでしっかりと抑える姿勢を自分の引き出しとしていきたいです」と決意。「今は何も足元に及んでないと思うんですけど、これからしっかりと越えれるように頑張りたいと思います」と恩返しは結果で示すと目をギラつかせた。
◆ 入来コーチも期待
ファームで指導していた入来祐作二軍投手コーチも「彼の投げる球は、ちょっと桁違いにいいんですよ。特にストレート」と独特のフォームから放たれる150キロ超えのボールには一目置く。
殻を破るために「彼の感覚と、実際に出た数値を自分の中で錯覚をしてるというか。それを今、小杉(陽太投手コーチ)に色々手伝ってもらってやっています。自分が嫌だなと思ったボールも、あいつが自分で思ってることと違って、全然悪いボールじゃない。むしろいいってことなんです。その感覚の違いですね」とデータをもとに分析作業を進めた。結果「次こういう風に投げればいいんだよみたいなことが結構見えてきました。楽しみですよ」と目を細めた。
覚醒必須の3年目。「どんな場面でも任されたところで、一年間走り抜けたいと思います」。迫力十分のサイドハンド右腕は、自らのためチームのため、そして尊敬する先輩のため。不退転の決意で変身を遂げる。
取材・文 ・ 写真/ 萩原孝弘