岡本和真・村上宗隆(写真=GettyImages)

 プロ野球のストーブリーグは、各球団の契約更改が真っただ中。大幅アップを勝ち取った選手もいれば、想定外のダウン提示を受ける選手も……。

 そんな中、今オフに最も大きな注目を集めそうなのが、ポスティングによるメジャー移籍を目指す選手たちの動向だ。

 今年は村上宗隆(ヤクルト)、岡本和真(巨人)の両内野手に加えて、今井達也(西武)がメジャー挑戦の意思を示している。18日には、巨人が岡本のポスティング申請手続きを行ったと発表。今後、メジャーから正式にポスティング公示されれば、メジャー全30球団と最大で45日間の交渉に入ることとなる。

 3選手はいずれも、NPBで実績を積み、世界最高峰の舞台に立ちたいという“夢”とNPBの何倍もの額を稼げる“現実”の両方を天秤にかけつつ、よりフィットしたチームを選んでいくことになる。

 お金という意味では、MLBはNPBの何倍も稼げるというのはファンも知るところ。村上の今季推定年俸は6億円とされるが、メジャーでは7~8年契約で総額300億円近くに跳ね上がるとも予想されている。そうなれば年俸は30億から35億円はくだらない。到底NPBの1球団が1選手に払える額ではない。

 そんな“現実”を直視すれば、やはり、メジャーを目指す日本人選手は今後さらに増えていく可能性が高いだろう。

 その一方で、今季の前田健太(前ヤンキース3A)のようにメジャーでピークを過ぎ、帰国を決断した選手もいる。27歳の若さで渡米し、37歳という年齢で国内復帰を決断した前田の例を取り上げるまでもなく、若くしてNPBで活躍したオールスター級の選手がメジャーに渡り、衰えた頃に凱旋する流れは今後も必然となっていくだろう。

 言い換えれば、NPBがMLBのマイナー化しているこの現象だが、1995年から10年ごとに日本人選手の数を見ると必ずしも右肩上がりというわけではない。

1995年  1人

2005年 13人

2015年  9人

2025年 12人

 ちょうど30年前の1人は、もちろん野茂英雄のこと。パイオニアがメジャーの扉を叩いたちょうど10年後の2005年は、投手と打者合わせて13人の日本人選手がメジャーでプレーしていた。

 その10年後の2015年には、その数が9人と減少したが、野茂の挑戦から30年に当たる今季は12人に回復。これ以外の年を見ても、実はここ20年ほどはメジャーでプレーする日本人選手の数は横ばいが続いている。

 ただし、打者に関しては2008年の8人をピークに減少傾向で、ここ数年は二刀流の大谷翔平を含めても3人だけという年が続いている。

 来季は大谷、吉田正尚、鈴木誠也に加えて村上と岡本が自慢の打棒を見せつけることになる。3年連続MVPを受賞した大谷は別格として、今季前半にMVP級の活躍を見せた鈴木の存在は、村上と岡本には追い風となるだろう。

 村上だけでなく、岡本もまた大型契約を結ぶことが想定されている。巨人でさえ払えない数百億円規模での契約が実現すれば、メジャー挑戦を選ぶ日本人打者の数も増加傾向に転じることになりそうだ。

 NPBがMLBのマイナー化する現象は加速していくことになるのだろうか。

文=八木遊(やぎ・ゆう)

この記事を書いたのは

八木遊

1976年、和歌山県で生まれる。地元の高校を卒業後、野茂英雄と同じ1995年に渡米。ヤンキース全盛期をアメリカで過ごした。米国で大学を卒業後、某スポーツデータ会社に就職。プロ野球、MLB、NFLの業務などに携わる。

八木遊 の記事をもっと見る

もっと読む