「本当に今年は自分で何もできなかったのが正直なところですし、その中でファームに行って自分がやるべきことをしっかり見直して取り組めた時期が長かったので、それを来年活かしてやっていきたい。一軍の戦力として貢献できなかったのは、申し訳ないと思いますし、悔しい思いです」。
ロッテの中村奨吾はプロ11年目の今季、プロ入り後自己ワーストの20試合の出場にとどまり、シーズン終盤の9月8日には福島県内の病院で『腰部鏡視下手術』を受けるなど、不本意な1年だった。
昨季はサードに挑戦していたが、今季に向けて「ずっとセカンドをやらせてもらってきて、そこでいろんな気づき、いろんな経験をさせてもらいました。そこでまたもう1回勝負できるようにと思って、去年1年でセカンドがやりたいという思いが強くなりました。そういうことも含めて、監督にお願いして今やらせてもらっているところです」と志願してセカンドのポジションに復帰。
オープン戦では打率.188だったが、3月22日の巨人戦では2-3の6回二死走者なしの第3打席、ケラーに対して3ボール2ストライクから粘りに粘って13球目の134キロスプリットを見極め四球を選べば、3-4の9回無死走者なしで迎えた第4打席、マルティネスが1ボール1ストライクから投じた3球目の149キロストレートをレフトスタンドに同点本塁打を放ち、開幕に向けて調子を上げていった。
シーズンが開幕してからはなかなか安打が出なかったものの、4月4日の楽天戦で今季初安打を放つと、6日の楽天戦では、0-2の3回無死走者なしの第1打席、先発・古謝樹が1ボール2ストライクから投じた4球目の129キロチェンジアップをレフト前に弾き返す安打を放ち、0-4の8回無死走者なしの第3打席、一塁ベース付近でイレギュラーするライト前安打で今季初のマルチ安打を達成。
チーム全体でこの日放った安打は3本だったが、そのうち2安打が中村が放ったもの。吉井理人監督は試合後、中村について「どっちもラッキーヒットだったんですけど、ああいうのからきっかけ掴むと思うので、今後期待しています」と話した。4月9日の西武戦でも安打を放ち3試合連続安打。代打で出場した4月11日のソフトバンク戦は無安打だったが、4月16日の日本ハム戦で今季初安打を含む2安打。4月18日の楽天戦は3打数0安打だったものの、1-0の5回二死走者なしの第2打席、早川に対し粘りに粘って3ボール2ストライクからの10球目のカットボールを見送り四球を選ぶなどらしい打席。
4月22日の西武戦では、1-1の10回一死満塁の第2打席、平良海馬が1ボール1ストライクから投じた3球目の155キロのストレートをセンターへ弾き返すサヨナラ打。4月23日の西武戦では、3-2の3回一死二、三塁でポランコの右犠飛で二塁から三塁にタッチアップし、寺地隆成の適時内野安打の間に生還した。4月25日の日本ハム戦でも安打を放ち、同試合後に打率.275まで上げたが、この試合を最後に安打がなく、5月6日に一軍登録を抹消。
2017年以来のファーム公式戦出場となった5月16日のヤクルト二軍戦で格の違いを見せる4安打を放つと、5月は9試合に出場して月間打率.429、7月も月間打率.379をマーク。8月は当たりがとまり月間打率.067。8月31日の巨人二軍戦を最後に出場がなく、9月7日に腰の手術を受けた。
中村は23年9月14日の取材で、試合出場に対するこだわりについて、「怪我とか痛いところとかあるのはありますけど、それで出ないよりは痛くても出る方法探したりとか、その中でも自分ができることはたくさんあると思います。試合に出る中でしかできないこともいっぱいあると思うので、休むことは簡単だと思いますけど、今は休養と言って休み日をもらう日もありますけど、本来は全試合出てチームに貢献したいという思いがある。そういった先輩方を見てきているので、怪我を押して出たりとか、連続試合出場している方を見て、そういう選手になりたいとと思ってやっていたのもありますし、試合に出る中で貢献しないといけないというのもあります」と、強い覚悟を持ってグラウンドで戦っていた。
試合に出ることに対しこだわっていた中で、シーズン中の9月に腰の手術を決断した。その理由について「痛みがずっとある中で、その中でも全力を尽くしてきたんですけど、状況が悪くなったというか、状況的に手術して決断したほうがいいんじゃないかという状況だったので手術をしました」と説明。「サブローさん、福浦さんにも相談させていただきましたし、いろんな方に相談させていただいたなかで踏み切ったという形ですね」と明かした。
現在は「今は何も制限することなく動けていますし、もっと出力を上げていかないといけないなという状態です」とのこと。「サブローさんも言っていた通り、打てば試合に出られるとおっしゃっていたので、打つ方、守備ももちろんレベルを上げていかないといけないと思うんですけど、バッティングの方でしっかりキャンプ、オープン戦からアピールできるようにしていきたいと思います」。若手が台頭してきた中で、中村奨吾には相手に球数を投げさせたり、1つ先を狙った走塁、無死二塁の場面で進塁打を打ったり、状況判断がきっちりとできる。来年は魂込めた一打を数多く魅せて欲しい。
取材・文=岩下雄太