ロッテ・石川柊太(撮影=岩下雄太)

 「求められた結果には程遠い内容、結果だった。今年は1年目だったので色々知らない環境だったり、屋外球場でホームで戦う1年間というのは違った。一通り経験したので、来年は言い訳はできない。チームとしても巻き返すところでより一層厳しい目で見られるところはあると思うので、そこにしっかり結果で応えていく気持ちだけですかね」。

 ロッテの石川柊太は、移籍1年目の今季は19試合・103回1/3を投げ、4勝7敗、防御率4.62だった。

 昨年12月11日に「このたび、野球人生の次のステージを千葉ロッテマリーンズさんでスタートさせていただくことが決まりました」と加入が決定。12月19日の入団会見では「期待に応えられるように頑張りたいと思っています」と決意を述べた。

 移籍後初めての石垣島春季キャンプ。「すごくやりやすい環境でやらせてもらっているなというところで、自分のやりたいことがしっかりできているのではないかなと思います」。2月2日に移籍後初のブルペン入りし、佐藤都志也を相手に34球を投げ込むと、2月14日に移籍後初のライブBPに登板し、20球を投げ安打性のあたりを3本に抑え、山本大斗にはインコースのストレートでバットをへし折った。

 2月26日のオリックスとの2025球春みやざきベースボールゲームズで実戦初登板を果たすと、3月4日のDeNAとのオープン戦では3回を投げてカットボールをほとんど投げなかった。開幕に向けての準備も関係していたのか訊くと、「ゲームの中でパーセンテージが変わることはあるので、一概に多くしていこうとか、そういうわけではないですね。ただカットボールが多くなる要因としては他のボールが良くない場合だったり、あるのかなと思いますけど、そもそも満遍なく投げたいというのが自分の感覚です」と教えてくれた。

 オープン戦最後の登板となった5イニングを無失点に抑えた3月18日の楽天戦では、ストレート、カーブ、カットボール、フォーク、チェンジアップと満遍なく投げていた。

 同日の楽天とのオープン戦では、「あんまり自分らしくない部分ではあったので、どちらかというと右バッターのインコースに投げるのが得意だったんですけど、18日の楽天戦の調子だと左のインコースの精度が良かったのでまっすぐを選択したというのがありますね」と、左打者のインコースに質の良いストレートを投げ込んだ。

 3月25日の楽天二軍戦では5回を投げ、一、二軍合わせて5試合・19イニングを投げ、一軍の公式戦を迎えた。

 「怪我せずにファイティングポーズを取れる状態を常に持っとくというのは、大事なんじゃないかなと思いますし、怪我してしまうと戦う姿勢も見せられないので、どこであってもなんていうんですかね、戦っている姿を見せられるように」。

 移籍後初登板となった4月3日のオリックス戦。本拠地・ZOZOマリンスタジアムでの移籍後初登板となったが、「滑ってボールが抜けてしまいました。結果的に危険投球となってしまい若月選手には申し訳なく思っています」と、0-0の2回一死一、三塁で若月健矢の初球に帽子のつばに当たり危険球退場。1回1/3を投げ、3被安打、無失点でマウンドを降りた。

 移籍後2度目の登板となった4月11日の古巣・ソフトバンク戦は、5回・67球を投げ、3被安打、3奪三振、2失点で勝ち負けはつかずだった。0-0の初回一死走者なしで川瀬晃を一塁ゴロに仕留めた外角125キロのカーブ、0-0の初回二死走者なしで柳田悠岐を3ボール2ストライクから空振り三振に仕留めた8球目のインコース128キロのカーブなど、カーブが非常に良かった。

 「基本的にカーブが生命線というか、自分の持ち味だと思います。バッターも変化量が多くて緩急のある球は嫌だと思うので、それが良かったというか、良いのが前提で投げないといけないですし、どんな時でもそれが一番武器である必要はあるのかなと。カーブ、真っ直ぐだけじゃ難しいので、そこからのバリエーションが大事なんですけど、良かったというか、結果取れていたのは大きかったかもしれないですね」。

 ソフトバンク戦では、「やっぱり内容がどうであれ話すことで気づくこともありますし、比較的話さないと自分の意図が伝わらなかったり、向こうがどう思っているか伝わらないじゃないですか。そこら辺はなるべく話したいなというか、話さなきゃいけない。それも仕事の一つなのかなと思うので、そこら辺はそう考えて話しているところではありますね」と、イニングが終えてベンチに戻った後、佐藤都志也をはじめとした捕手陣と密にコミュニケーションをとった。

 4月22日の西武戦は、初回に27球を要したが、5回2被安打1失点とゲームを作った。「最初は自分の良い球というか、自信のある球で攻めていって、そこは相手バッターを意識していない球が全体的にもあったので、フォークを増やしていこうかなと。カットボールの調子が良くなかったので、すごく大変でしたけど、あそこが良くなればもっといいのかなと思いながらという感じですね」。1巡目はストレートとカーブが中心で、2巡目以降は変化球を満遍なく投げた。

 “相手バッターが意識していない球”で言えば、0-1の2回一死走者なしで古賀悠斗を1ボール2ストライクからインコースの132キロフォークで見逃し三振に仕留めたが、打者の古賀は予想していなかった反応を見せていた。「自分も思っていない球だったので結果オーライなので、反省する1球ではありました」と振り返った。

 5回を1失点にまとめながらも、登板後に球団広報から送られてきた談話に「全体的にテンポが悪いピッチングになってしまった」とあった。見ていてテンポの悪さをそこまで感じなかったが、どういったところにテンポの悪さを感じたのだろうかーー。

 「自分のイメージしているボールではないボールがいっているというところで、余計なボール球が多かったかなというのはありますけど、そこが自分の中でテンポが悪かったのかなと思いますね」。

 4月は3試合・11回1/3を投げ、防御率2.38も0勝0敗。抑えていながら、勝ち星に恵まれなかったが、「そこは散々経験しているので、マインド的にネガティブになるものではないので、全然気にしていないですね」と話し、5月の戦いへと向かった。

 5月は3日のソフトバンク戦で5回2/3を投げ5失点で移籍後初黒星を喫すると、3試合・17回2/3を投げ、0勝2敗、防御率5.09。

 6月4日の本拠地・ZOZOマリンスタジアムで行われた巨人戦、「1試合でも早く勝ちたいというところはありましたし、ホームだろうとビジターだろうと、早いに越したことはないので。結果的にホームで勝てたというのは、ヒーローインタビューをホームでやったというところも新鮮でしたし、そこは良かったかなと思います」と、7回・93球を投げ、無失点に抑え嬉しい移籍後初勝利。

 6月20日のDeNA戦では、寺地隆成と公式戦初バッテリーを組み、DeNA打線を4回までノーヒットに抑えるなど、6回1失点で2勝目。6月28日のソフトバンク戦は6回無失点で3勝目と、6月は負けなしの3連勝、4試合・23回を投げ、防御率1.96と安定した投球を見せた。

 7月最初の登板となった9日の日本ハム戦でまさかの5回8失点で敗戦投手になったが、21日のオリックス戦では6回二死走者なしまで無安打に抑えるなど、7回・103球を投げ、1被安打、6奪三振、1与四球、無失点で4勝目。バッテリーを組んだのは寺地隆成ではなく、経験豊富な田村龍弘だった。吉井理人監督は試合後、田村の起用意図について「まず寺地がオールスターに出るので休ませたいというのがあったのと、石川とのコンビネーション、配球がカギになるかなと思ったので、経験のある田村でということになりました」と説明。

 石川は移籍後公式戦では初バッテリーを組んだ田村と抜群のコミュニケーションで、スコアボードに0を並べていく。試合序盤はストレートとカーブを中心にした投球も、5回は9球中8球、6回は26球中21球が変化球と、変化球主体の投球に。

 石川は「自分的にはまっすぐをいきたいと言っていたところを“こっちでいきましょう”という話もありましたし、そこは任せてしっかり投げられるようにというところは話しながら投げられました。うまくリードしてくれたなというところですね」と田村に感謝した。

 オールスター明け最初の登板となった7月30日の楽天戦が4回1/3を投げ7失点、8月6日のソフトバンク戦が5回8失点と悔しい登板が続く。

 それでも、8月26日のオリックス戦、勝敗は付かなかったが、6回・96球を投げ、9被安打、3奪三振、1与四球、1失点。4回は17球投じたが、そのうちストレートは3球のみ。あのイニング変化球が多かったのも、オリックス打線がストレートを狙ってきているように感じたからだったのだろうかーー。

 「そういうわけじゃないですね、狙ってきたよりかというよりは、割合的にバランスよく投げたらバッターが嫌だというのが前提にある。初回からどんどんいろんな球を使って、抑えていくというのが一番バッターは絞りにくいと思います。あそこのイニングに限っては前の打席のつながりとかもあるので、そこら辺は田村が配球してくれますし、自分の中でもどの球でもカウントが取れれば、どの球でもどのカウントで行ける自信がある。その中で投げているというのはありますね」。

 その中で、3-1の4回一死一、二塁で廣岡大志を2ボール2ストライクから空振り三振に仕留めた5球目の外角125キロのカーブが良かった。

 「あのカーブは良かったですね。バッターに一瞬向かっていく感じで、投げ感も良かったんですけど、頓宮にホームラン打たれたカーブとその次の紅林に投げたショートゴロのカーブは紙一重の違いというのがあるんですよ。1つのちょっとした違いでホームランになるか、内野ゴロになるかというのがあるので、そこの精度をもうちょっとあげていきたいです」。

 9月最初の登板となった2日の日本ハム戦、5回8失点で6敗目を喫し、9日のオリックス戦、17日のオリックス戦はQS(6回3自責点以内)を達成したが、白星は手にできず。今季最終登板となった9月29日の西武戦も、5回1/3を投げ、2失点にまとめるも、7敗目を喫した。

 「新体制になって、サブローさんが考えるチーム方針とかあると思うので、秋季練習に選択肢とかじゃなくて、出ない理由の方が少ない。ランニングをしっかりやって課題もいろいろある中で取り組んでいます。ひとつ一つ弱いところを見直して取り組んでいくのが課題という感じですね」と、レギュラーシーズン終了後の10月8日から始まったZOZOマリンスタジアムでの秋季練習に参加。

 「いっても(今季は)100イニングくらいしか投げていない。体を休める必要もないのかなと。野球人生が終わってから休めばいいことですし、マリーンズ1年目というところで、いろんな意味でやらない理由、(秋季練習に)来ない理由はないのかなというところですね。環境がここなのか、自分でやるかだけなので、何も変わらないのかなと。監督が変わったことでコミュニケーションも取れますし、そういった意味でプラスしかない」と前向きにトレーニングに励んだ。

 “一つ一つのところ、弱いところを見直して取り組んでいくのが課題”と秋季練習の時に話していたが、現在はその部分についてどうなのだろうかーー。

 「秋キャンプで怪我しちゃったので、一旦フラットなイメージで体づくりしています。弱いところを秋に考えていたことと、また色々やっていく中で、それが投げるのに秋の練習中にマッチしていたかというと、そこまで投げることに繋がっている感じが下半身でもなかった。経験的にもウエイトをそのままパフォーマンスにつながっている感覚がなかったりするので、ウエイトは要素として大事な部分を取捨選択しながら、自分の感覚を損なわないものを選んでやっているところ。進捗状況としては、必要だと思ったらやる。自分の中で選びながらやるという感じでやっています」

 2年目の来季に向けては「リーグ優勝するためには自分自身としては、しっかり二桁勝たないといけない」と二桁勝利を目指す。チームに慣れた移籍2年目の来季、本領発揮と行きたいところだ。

取材・文=岩下雄太

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