「怪我した後の方が考える時間が多くて、野球人生いろんなステージでやってきましたけど、イチから野球を見つめ直す時間になりました」。
ロッテの立松由宇はプロ1年目をこのように振り返った。中学生の時以来地元・千葉で野球をすることになった立松は内野手登録だが、新人合同自主トレが始まる前にサード、ファースト、キャッチャー、外野の練習を行い、どこのポジションでも守れるよう準備してきた。
1月の新人合同自主トレではキャッチボールは捕手用、ノックでは内野手用のグローブを使っていた。石垣島春季キャンプが始まってからは、初日となった1日、「憧れていたユニホームではあるので、着た瞬間の緊張感もありますし、ずしっと重みも少し感じることはありましたね」と、ピンストライプのユニホームに袖を通してプレーした。
翌2日に同学年の種市篤暉のブルペンの球を受けた。立松は「同級生の一級品のピッチャーを受けられるのはすごい経験だなと思いましたし、変化球の質も社会人の時とは一段違うなというのは受けていて思いました」と話し、スプリットとフォークについては「速いフォークが初見で見ると怖すぎて、頑張って止められるようにしたいです」とその凄さを肌で感じた。
走っても、全体練習終了後の個別練習の時に、「シャッフルの仕方が球団、チームによって違うと思うので、それがわからなくて伊志嶺コーチに誘われて。自分も走塁練習をしたいなと思っていたので、いい機会だと思い参加しました」と、石垣島春季キャンプ第1クール2日目に伊志嶺翔大コーチとマンツーマンで走塁練習を行った。
「日本生命の時は足の速い方だったので、スチールのサインは結構出ていた。社会人のレベルでは盗塁はやっていたんですけど、他の走塁に関しては特にあまりやっていなかったので、新しいいい勉強になったなと思います」と振り返った。伊志嶺コーチも「基本的なシャッフルはどこに行っても変わらないと思います。最終的にタイミングの問題なので、あっているか、あっていないかを確認しているところですね」とのことだった。
2月11日の紅白戦で『4番・指名打者』で実戦初出場し、1打数0安打1四球、試合途中からマスクを被った。紅白戦後には室内練習場でバント練習を行った。2月16日の楽天モンキーズ戦では、捕手の守備から途中出場し、4-3の7回一死二、三塁の第1打席、「やっぱり少しホッとしたというか、ようやく一員になれたのかなとちょっと思ったりしました」と、右のスー・ジュンジャンが1ボール1ストライクから投じた3球目をセンターオーバーの2点適時三塁打で対外試合初打席初安打・初打点をマーク。
この日は捕手だけでなく、途中からファーストの守備にも就いた。ファーストの守備について「景色が変わると緊張具合も変わるので、ファーストの方が最近まだやっていたので緊張することなくプレーできたと思います」とし、春季キャンプ中は捕手での守備練習がメインでほとんど一塁の守備練習を行っていなかったが、「ポジショニングとか、ロッテの考え方とか染み込んでいないので、やれるように“思ったようにやってみろ!”と言われたので、それを意識してやっていました」と振り返った。
2月18日からの対外試合では、12試合に出場して、14打数1安打とアピールできず、3月9日のソフトバンクとのオープン戦を最後にファームでプレー。イースタンリーグが開幕してからは、4月12日の西武二軍戦、2-1の7回一死二塁の第1打席、ロペスが1ボール2ストライクから投じた6球目の外角138キロスプリットをレフト線に技ありの二塁打を放てば、4月23日のオイシックス戦、3-4の8回一死二、三塁の第4打席、三上が1ボールから投じた2球目のシンカーをセンター前に決勝の2点適時打。
一軍の本拠地・ZOZOマリンスタジアムで行われた4月30日の巨人二軍戦、2-1の3回無死走者なしの第3打席、今村が投じた初球インコース高めの143キロのストレートをライトへ本塁打。これが二軍公式戦初本塁打となった。同日の巨人戦から3試合連続打点をマークするなど、1本塁打、7打点の活躍で、5月7日にプロ初昇格。同日の楽天戦、7-3の8回二死一、二塁の場面に石川慎吾の代打で登場しプロ初出場を果たすも、中込が1ボール1ストライクから投じた3球目の139キロカットボールを打ちに行くも左飛。5月9日の西武戦では『7番・ファースト』でプロ初スタメン出場したが、4打数0安打3三振、守備でも失点につながる落球と2失策。5月16日に一軍登録を抹消された。
一軍登録抹消後、再昇格を目指しファームで汗を流していたが、7月に都内の病院で両股関節の関節鏡視下股関節唇形成術を行った。6月29日の巨人二軍戦を最後に一、二軍ともに出場がなく、今季の戦いを終えた。
11月28日に行われた契約更改交渉後の会見で、「キャッチャーの準備もしとけと言われているので、まずはキャッチャーの動きができないと始まらない。そこをやっていきたいと思っています」と話し、来年2月の春季キャンプまでに「キャッチャーの感覚を戻すのと、バッティングが一番持ち味なので、アピールをしていきたい」と意気込んだ。
2年目の来季はマリーンズファンに「まずはちゃんと走れる姿を見せられるように。マスク姿を見せられることを目標に」掲げた。プロ2年目の来季は一軍でプレーする時間を増やしたい。
取材・文=岩下雄太