巨人・石塚裕惺 (C)Kyodo News

◆ 白球つれづれ2026・第1回

 前巨人・岡本和真選手の移籍先はメジャーリーグのトロント・ブルージェイズに決まった。

 交渉期限ぎりぎりの日本時間1月4日に発表されたもので、契約は4年総額6000万ドル(約94億2000万円)とされる。

 ブルージェイズと言えば、昨年のワールドシリーズでドジャースと球史に残る激闘を演じた強豪。今年こそ世界一を狙うチームが、さらに戦力アップを狙って獲得したのが岡本だ。同じくホワイトソックス入りした村上宗隆選手同様に、和製大砲の活躍を祈りたい。

 一方で、四番が抜けた阿部巨人の今季に早くも“黄信号”が灯っている。ペナント奪還に向けて、あまりに明るい材料が見当たらない。

 新たなスタートを切った阿部慎之助監督のスタッフでは、二岡智宏ヘッドコーチが引責退団すると、直後に桑田真澄二軍監督も指導方針の違いで、突如辞任。さらに秋季キャンプ中にオコエ瑠偉選手が謎の失踪と騒がれて、自由契約になるなどお家騒動が続く。

 加えて戦力補強では、獲得に動いた前田健太投手は楽天へ。有原航平投手は日本ハムへ、柳裕也投手は中日残留など、ことごとく失敗。前年こそ甲斐拓也、田中将大、中日の絶対的守護神、ライデル・マルティネス投手などを獲得して「50億円補強」と騒がれたが、近年は巨人ブランドだけでは選手がなびかない傾向も出ている。そこにチーム内の新旧入れ替えもはかどらず、では契約最終年を迎える阿部監督も心穏やかではいられない。

 そんな八方塞がりに近い状態の中で、巨人ファンの期待を一身に担っているのが2年目の逸材・石塚裕惺選手だ。

 昨年限りで現役引退した長野久義氏(現球団スタッフ)が「向こう20年、主力で活躍できる逸材」と激賞した24年ドラフト1位の大型内野手。

 昨年はイースタン・リーグで打率.327、3本塁打、25打点と高卒ルーキーとしては非凡な才能を発揮。一軍でも初安打を記録した。

 さらに秋にオーストラリアで行われるウインターリーグに派遣されると、ここでも大活躍を見せる。アデレードジャイアンツの一員としてチームトップの3本塁打、16打点にOPSは超強打者並みの.959をマーク。これには大リーグ、フィリーズのベンチコーチの肩書を持つアダムソン監督も「素晴らしい野球脳を持っている。将来的にはメジャーでプレーする可能性もある」と素材の良さに太鼓判を押したほどだ。

 大型の遊撃手で高卒2年目に一軍へ大抜擢されたのは2008年の坂本勇人選手。当時の原辰徳監督が、その才能を見抜いて思い切って起用したのが功を奏した。この1月の自主トレでは、石塚が坂本に弟子入りして教えを受ける。まさに「坂本二世」のレールは敷かれつつある。

  岡本が抜け、坂本もレギュラーから遠ざかる。菅野智之がいなくなった投手陣でもスターと言える選手は見当たらない。長きにわたり、球界の盟主を自負して、常にスター選手を輩出してきた名門球団にとって、明らかに曲がり角に立つ時期。若き才能は何が何でも売り出したい。

 新たなシーズンを前に阿部監督は「レギュラーは白紙。みんなで競争して欲しい」と語り「若い選手が出てきたら使いたいし、チャレンジさせたい」と例年以上の“サバイバル戦”を予告した。

 もっとも、石塚の目指すショートには強敵が待ち構える。昨年、チームで唯一3割を記録して、ベストナインやゴールデングラブ賞を獲得した泉口友汰選手だ。現状でその差は大きい。石塚がキャンプ、オープン戦を通じて好成績を残して首脳陣にどれだけアピール出来るかがポイントになる。

 球団では、もう一つのウルトラ策も用意している。遊撃で泉口の二番手となった場合には、三塁手として起用するプランである。

 阿部構想では一塁と三塁に新外国人のボビー・ダルベック(前ロイヤルズ)とリチャード選手を第一候補に挙げ、増田陸や荒巻悠選手らが競りかける形。二塁も不動のレギュラー・吉川尚輝選手が股関節手術のため出遅れる可能性もある。いずれにせよ、全てが未確定の状態だから、石塚の大抜擢の可能性はある。

 昨年はライバルの阪神に8勝17敗と大敗、15ゲーム差をつけられ3位に沈んだ。オフに思うような補強も進まず、新外国人頼みが現状だ。

 こんな時だからこそ、チームの流れも、勢いも変えるニュースターの登場が求められる。

 巨人の高卒野手で2年目からレギュラーを掴んだのは前述の坂本以外には王貞治、松井秀喜ら4人だけ。伸び盛りの19歳、石塚は偉大なレジェンドと肩を並べられるのか? 更なる覚醒を見てみたい。

文=荒川和夫(あらかわ・かずお)

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