【Buffaloes Inside】
災い転じて福となす――オリックスの山下舜平大投手のカーブが、腰痛対策で取り組んだフォーム修正で威力を一段と増している。新球種の「スラッター」で投球の幅も広がり、心技体の万全な状態で3年ぶりの開幕投手を目指す。
「アングル(腕)が下がってカーブのキレが増しました。フォームを変えたことで回転数が少なくなって、カーブらしくなくなるかと思ったのですが、速く鋭く落ちるようになりました。パワーカーブですね」。山下がいつになく胸を張った。
最速160キロ、190センチ、100キロの本格大型右腕。2020年ドラフト1位で福岡大大濠高からオリックスに入団した山下は、2年目から身体の成長に伴う腰痛に苦しめられてきた。3年目にプロ初登板初先発を開幕投手で飾り、9勝3敗、防御率1.61で新人王に輝いたが、腰痛との闘いは続いた。昨季もオープン戦で違和感を覚えて離脱し、大半を2軍で過ごすことに。
この間、ウエートトレーニングやストレッチでリハビリを続けて、腰痛対策。昨年は吉田正尚選手(レッドソックス)を通じて2004年アテネ五輪、ハンマー投げ金メダリスト室伏広治さんにトレーニング方法を学び、アスリートトレーナーの鴻江寿治さんが主宰する「鴻江スポーツアカデミー」では体の使い方を教わった。
フォーム修正もその一環。投げる際、左肩が下がっていたが、腰への負担が少なくなるよう肩の線を水平に直した。背骨が地面から垂直になったことで腰への負担は軽減され「これまで毎回、投げた後にあった腰の張りがなくなりました。(体が)いい軸で回れているということだと思います」と山下は説明する。
フォーム修正で生まれたのが、カーブのキレだった。新しいフォームでは上半身の傾きが直ったことで、リリースポイントの位置が自然に下がり、打者に近いところでリリースするため、ボールに力が加わったという。高校時代、将来を見据えた指導者の考えで試合ではストレートとカーブしか投げず、元々一級品だったカーブがさらに輝きを増した。
「今まで、カーブは上から“抜く”という感じで投げていたので、リリースポイントが下がったことで回転数が少なくなると思ったんですが、リリースが前になったことで回転数が増えたんです」と山下。これまで、ブルペンでのカーブの回転数は2700~2800だったそうだが、3000回転に増え、紅白戦などで対戦した打者からは「落下が速くて鋭い」という評価を得たそうだ。
注目の開幕投手について山下は、「そんなに重きを置いていません。開幕は目指しそこに合わせて調整しますが、違ったらずらせばいいだけ。2戦目、3戦目だろうが、スタートダッシュをすることには変わらない。1年間、フルに活躍して勝ち星を挙げることがチームに貢献すること」と素っ気ない。
「(リハビリが続いた)2年間、何をしていたんだろうと思います」。腰の不安がなく万全の状態だからこそ、6年目にかける思いは強い。
取材・文=北野正樹