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元プロ選手が学生野球の指導を行うために必要なこと ~後編~

「学生野球資格」回復のための研修会


 元ヤクルトのドラ1右腕・増渕竜義氏による「学生野球資格回復制度 研修会」レポート。今回は後編、2日目・3日目に行われる「学生野球研修会」です。

(※前編はコチラ⇒ https://baseballking.jp/ns/99898

 独立リーグを含むプロ野球関係者が学生野球を指導する際に必要となるのが「学生野球資格」。この資格を取得するためには、「NPBプロ研修会」と「学生野球研修会」の2つの研修会を受け、日本学生野球協会からの承認を得ることが必要となる。

 全3日間で開催される「学生野球資格回復制度 研修会」。初日の「NPBプロ研修会」を終えた増渕氏は、のこりの2日間で行われる「学生野球研修会」に臨んだ。


「学生に戻った気分」


 3日間に及ぶ研修会。2日目からは立教大学池袋キャンパスに場所を移しての講義となるのですが、もう初日のプロ研修だけでもきつくて、精神的にやられていました。

 普段味わうことのない緊迫感のある空気が延々と続き、まるで学校の授業。久々に学生に戻ったという気持ちもありましたが、もはや吐き気さえ覚える何とも異様な空気感。初日を終え、すでに精魂疲れ果てていました。


【2日目・3日目】

 休む暇もなく、迎えた2日目。早朝に大学を訪れる感じは、まさに“通学”そのもの。私は高卒なので、これが「大学ライフの風景か...」なんて感傷に浸りながらキャンパスを歩きました。

 キャンパス内の大きな教室が会場です。また初日のような緊迫感あふれる空気になると思うとゾッとしましたが、気持ちを切り替えて席につきます。

 もちろん、昨日参加されていた宮本(慎也)さんも出席でした。前日は「お前、野球教えられるの?」なんてふざけ半分で声をかけてくださった宮本さんも、昨日の研修がこたえたのか少々疲れ気味のようでした。

 アマ研修の講師の方々は、専門分野の方が多かったです。元プロ出身という方もいらっしゃいましたが、それぞれに専門分野があるようで、かなり細かな部分まで教わりました。

 内容的には、初日のプロ研修とほぼ同じです。まずは「ケガ」の問題。練習を開始するにあたっての準備の大切さ、そして事故を起こさないための取り組みなどを、専門的な分野からより細かく教わりました。

 つづいて「体罰」についても教わります。具体例を挙げながら現在の体罰問題についての事細かな説明を受け、体罰やケガによって起こりうる保護者との問題であったり、体罰が発端となって起こるSNSでの拡散など、やはり現役時代には目を向けることがなかった部分について本当に勉強になることばかりでした。

 なお、研修は朝9時頃から始まり、夕方までみっちり行われます。途中に昼食休憩が入るのですが、僕はパッとゼリーを食べる程度で済ませました。

 それほど時間もないので、私だけでなく皆さんもさらっと昼食を済ませます。元プロの大きな男の人たちが教室に集まり、コンビニで買ってきたお弁当をせっせと口に運ぶ光景というのはなかなか新鮮でおもしろかったです。


 そんなこんなで、3日間に及ぶ研修は終了。一言でいえば「つらかった」ですね。

 体を動かしたり、外で具体的な指導法を教わるイメージを持たれる方もいるかもしれませんが、どちらかと言えば完全に“勉強”なんです。前編でも言った通り、勉強が苦手だった自分にとって机に向かって3日間ぶっ通しというのはさすがにきつかったです(笑)


「私たちは恵まれている」


 ただし、この研修は先輩たちの熱意と努力によって設けられた貴重な機会であることは忘れてはなりません。

 研修を受けて資格を取れば学生野球を指導できる、という現行の制度になったのは2013年のこと。それまでは、元プロ選手が学生を指導できるようになるまでにとてつもない壁があり、もっと前にさかのぼると全面的に禁止されていた時代もあるのです。

 実に50年以上もの年月をかけて、ようやく開けた学生指導への道。今回紹介した研修をすべて受け、日本学生野球協会の審査で承認されると、晴れて「学生野球資格」を得ることができます。

 これで「つらい」、「きつい」なんて漏らしていたら、先輩たちに怒られても仕方ありません。あとはとにかく“合格祈願”。受験を控える学生と同じように、私も初詣で合格を祈って来ました。

 未来のプロ野球選手を指導することで、自分を育ててくれた野球への恩返しを――。これからは指導者としても野球界に貢献できる人間になれたらいいなと思っています。
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