はっきりと下降線をたどる中日の投手力
ほんの数年前まで当たり前のように優勝争いを繰り広げていた中日も、昨季は4年連続となるBクラスに終わり、ついには1997年以来19年ぶりとなる最下位に沈んだ。
2010年、2011年に連覇したころの中日といえば、チャンスを生かすそつない攻撃と、広いナゴヤドームをバックに、その少ない得点を守り勝つ野球が持ち味だった。何よりもその野球を支える投手力こそが最大の武器だったはずだ。
当時のチーム成績を振り返れば、そのスタイルがはっきりと反映されている。
2010年のチーム打率と得点はともにリーグワースト2位。しかし、チーム防御率3.29は2位・ヤクルトの3.85に大差をつけて1位だ。さらに、2011年は、打率と得点がともにリーグ最下位。いわゆる“飛ばないボール”だった影響もあるが、チーム防御率は2.46という数字を残している。当然、これもリーグトップの成績だ。
ところが、昨季のチーム防御率はリーグ4位の3.65。先発防御率に限れば、リーグワースト2位の3.95と4点台も目前である。しかも、リーグで唯一、チームの誰ひとりとして規定投球回に達することができず、勝利数も大野雄大と若松駿太がマークした7勝がチームトップ。なんとも“らしくない”成績を残してしまった。
昨季は6勝も、投球内容はチーム随一
低下傾向にある投手力をカバーするほどに打撃力が向上すればいいのだが、おいそれとかなう願いではない。やはり、チームカラーである守り勝つ野球の復活こそが、上位復帰の近道だろう。
その牽引役としては、2年目を迎える小笠原慎之介の注目度も増しているが、12年目の吉見一起に期待したい。
吉見といえば、2011年に防御率1.65、18勝(3敗)という数字を残し、最多勝、最優秀防御率、最高勝率のタイトルを獲得した連覇の立役者だ。
しかし、その後は何度も右肘の手術を繰り返すこととなり、成績も低迷。2008年から5シーズンにわたり続けていた2ケタ勝利も、2012年を最後に途絶え、2013年から2015年までの3シーズンではわずか4勝を挙げるにとどまった。
ところが、昨季は勝利数こそ6勝止まりだったものの、内容は決して悪いものではなかった。100球前後の球数制限をしたなかで21試合に先発し、投球回は131回1/3。これはともにチーム最多である。さらに、3.08という防御率は、チームで10試合以上に先発した投手のなかで最も優秀な数字であり、完全復活の予兆を感じさせた。
春季キャンプでも初日からブルペンで投げ込みを行うなど精力的で、本人も「ローテーションに入るのは当たり前」と意欲十分。負けられない試合が続く後半戦にピークを合わせるとまで語り、当然のようにシーズンを通して先発の柱となることを宣言している。手術明けだった昨年の春季キャンプは二軍で過ごしたことを思えば、今季の仕上がりへの期待は増すばかりだ。
エースの座を奪還し、チームを再び上位へ導けるか...。憎らしいほど強かった強竜軍団の復権が吉見の右腕にかかる。
文=清家茂樹(せいけ・しげき)