白球つれづれ ~特別編・侍“予備軍”を探る~
第4回のワールドベースボールクラシック(以下WBC)が6日、ついに開幕した。
第1回、第2回大会で優勝し、第3回大会はベスト4と常に世界でも上位の成績とあれば小久保ジャパンに課せられた使命は「世界一奪還」しかない。
だが、過去に活躍した松坂大輔やダルビッシュ有、田中将大らの絶対的エースは不在。そのうえイチローのような精神的な支柱もいない。さらにライバル国にはバリバリのメジャーリーガーが数多くいるとあって、世界一の壁はこれまで以上に険しい。
とは言え、侍ジャパンに選出された28名の戦士たちは我が国を代表するスターだ。彼らの球歴とプロ入り後の足跡を追ってみると今後の日本代表を背負って立つ逸材にもある程度の“法則”があることがわかるので紹介したい。
ブレイクまでの道のり
まず、ドラフト指名巡を見てみると、やはり『1位指名』が15人と半数を占めている。これに松田宣浩、平野佳寿の『大卒希望枠』での入団を加えると、実質は17人だ。
以下、2位指名が4人、3位指名が4人で、4位以下になると青木宣親(ヤクルト4位)、増井浩俊(日本ハム5位)とソフトバンクに育成枠4位で入団した千賀滉大しかいない。つまり、入団時から将来性を高く評価されたエリートがほとんどなのだ。いわゆる“雑草派”は、よほどの奮起と大化けが必要となる。
次にプロ入り後、どれくらいの年数をかけて一軍に定着、もしくはスタメンの座を獲得してきたかを見てみよう。打者なら全試合の半数以上で出場。投手なら先発はローテーションに入った年、中継ぎ、抑えは50試合以上の登板を基準とした。
すると野手では、1年目から多くのチャンスをつかんだのは秋山翔吾(西武)ら4選手に対し、投手では菅野智之(巨人)、則本昴大(楽天)ら8選手。ドラフトの上位指名は投手が多いのでこれは順当な数字であるが、注目すべきは大学、社会人出身に比べて素材の良さと将来性を評価されて入団した『高卒の野手』だろう。
今回の小久保ジャパンで該当するのは、坂本勇人(巨人)、山田哲人、(ヤクルト)、筒香嘉智(DeNA)、中田翔(日本ハム)らの8選手だ。嶋基弘に代わって追加招集の炭谷銀仁朗を除けば、いずれも打線の主軸を任される主力ばかり。しかし、彼らが入団1年目から耀けたかと言えば、答えはノーだ。
最短は坂本や山田の2年目で、筒香は3年目、中田は4年目。球界屈指のヒットメーカーである内川聖一(ソフトバンク)も4年目なら、最も時間を要したのは中日の平田良介で一軍定着は6年目のことだった。
将来の侍“予備軍”を探る
スターの誕生にはいくつかの要因もある。ベテラン選手の衰えと新旧交代を図るチーム戦略にあって、坂本や山田はこのチャンスを見事につかんだ。一方で筒香や中田の場合は外野もしくは一塁の座をうかがうわけだが、ここは助っ人外国人が起用されるケースが多いから狭き門となる。
若き大砲は、プロのスピードや制球力と言った厚い壁に一度ははね返されるもの。ファームで数年かけてじっくり育てる場合が多く、ここで大輪の花を咲かせられるかが二流以下との分かれ目となる。侍戦士の高卒野手は、これに鈴木誠也(広島)を加えて7人。それでも一軍定着の平均は3.5年だからさすがというべきか。
この観点から、近い将来の侍戦士“予備軍”を探ってみると森友哉(西武)、西川遥輝(日本ハム)、北條史也(阪神)といった名前が挙がってくる。
森はプロ2年目の2015年に17本塁打を放ってブレーク。今季は肩痛でキャンプに出遅れたばかりか、3月5日に行われたキューバとの強化試合で左ひじを骨折。災難続きで開幕出場は絶望視されているが、本来の力量を発揮して定位置を確保できれば、近い将来の侍ジャパンからの指名は確実だ。
日本ハムの西川も、4年目の14年に盗塁王に輝くなど実績はある。同じく4年目の昨季、122試合に出場して今季の更なる飛躍が期待される北條も楽しみな逸材だろう。
WBCの話題の裏で、12球団はオープン戦の真っただ中。3月も中旬になると戦力の振り分けが行われる。
昨年のキャンプでゴールデンルーキーともてはやされたオコエ瑠偉(楽天)は故障もあって一軍にすらいない。今年の大物・田中正義(ソフトバンク)や佐々木千隼(ロッテ)らの即戦力ルーキーたちは、順調に滑り出して日の丸戦士への道を歩みだせるのだろうか?
スター軍団と、その“予備軍”の力量を比べてみるのもこの春の楽しみである。
文=荒川和夫(あらかわ・かずお)