奪三振数、奪三振率ともにトップ
開幕後、いまひとつ波に乗れなかったソフトバンクのエンジンがようやくかかってきた。
4月18日からのロッテ3連戦は投打がかみ合い3連勝。なかでも、千賀滉大、東浜巨、バンデンハークの先発陣がそれぞれ8回・自責点1、7回・自責点0、8回・自責点0ときっちり結果を残したことが大きい。
特に千賀は自己最多タイの13奪三振を記録した4月11日の日本ハム戦(8回・自責点0)に続く好投とあって、和田毅や武田翔太の相次ぐ離脱など不運が続いている先発陣のなかで数少ない明るい材料を提供している。
今季の千賀の投球で光るのが、その高い『奪三振力』である。最速156キロの直球と縦のスライダー、“お化けフォーク”と称される落差の大きいフォークのコンビネーションによりもともと奪三振数が多い千賀だが、今季はその力にさらに磨きがかかっている。
初登板となった4月4日の楽天戦こそ、WBCの疲労もあってか4回7失点と打ち込まれたものの、それでも投球回数と同じ4奪三振を記録。以降の2試合ではともに2ケタの奪三振を記録し、これまでに奪った28三振は菊池雄星(西武)と並ぶリーグトップの数字だ。
1試合(=9イニング)当たりの奪三振数を表す奪三振率は12.60と一流のクローザー並みの数字を残しており、こちらも3年連続でパ・リーグの奪三振王に輝いている則本昂大(楽天)の10.42を抑えてリーグトップである。
初の個人タイトル獲得へ…
ちなみに、過去10年の両リーグ規定投球回到達者延べ294人のなかでの最高奪三振率は、2015年に大谷翔平(日本ハム)が記録した「10.98」。今季の千賀の登板はまだ3試合のみということで、現時点で過去の成績と比較するのも無理はあるが、千賀がいかにハイペースで三振を奪っているかがわかる。
今季開幕前に開催されたWBCでは、世界の名だたる強打者を相手にポーカーフェイスで自身の投球スタイルを貫き、日本勢ではただひとりベストナインに選ばれた千賀。全国区の人気を手に入れた育成枠出身の苦労人が目指すは、初の個人タイトルだ。
上でも触れた通り、パ・リーグの最多奪三振のタイトルは3年連続で則本が手にしている。今季は則本の“連覇”を阻み、悲願の初タイトルを掴むことができるだろうか。
まだ24歳と、伸び代も十分な年齢。大きな飛躍を果たした昨季以上の成長を見せる可能性も大きい。新・奪三振王への道を歩み始めた千賀から目が離せない。
文=清家茂樹(せいけ・しげき)