◆ 攻撃陣、投手陣ともに好調なわけではない?
メジャーリーグは4月を終え、優勝候補のシカゴ・カブスやクリーブランド・インディアンスなどが地区首位に立つ一方、ナ・リーグ西地区では前評判がそれほど高くなかったコロラド・ロッキーズが2位のアリゾナ・ダイヤモンドバックスに0.5差をつけ首位を走っている。
ロッキーズといえば2011年から6年連続でシーズン負け越しが続くなど、近年は苦しい戦いを強いられているが、松井稼頭央(現楽天)が所属していた2007年にはワールドシリーズに出場している(ボストン・レッドソックスに0勝4敗で敗退)。チームカラーは、1993年の創設から一貫して「打高投低」。本拠地を置くコロラド州のデンバーが標高約1マイル(約1600メートル)の高地にあり、打球がよく飛ぶため、投手にとっては非常に厳しい環境である。
昨季はDJ・ルメーヒューが首位打者、ノーラン・アレナドが本塁打と打点の2冠を獲得。得点数はリーグ1位を記録した。しかし投手力は改善されず、チーム防御率はリーグワースト3位の4.91と低迷。特に救援陣はメジャー全体でもワーストとなる5.13と大きく崩れた。シーズン成績は75勝87敗で地区優勝を果たしたロサンゼルス・ドジャースから16ゲーム差の3位に終わった。
今季は、開幕から自慢の打撃陣の調子が今ひとつ上がっていない。現時点で3割打者は一人もおらず、1試合平均得点もナ・リーグ7位の4.58である。そしてチーム防御率は、昨季と同じリーグワースト3位の4.58と投手陣も決して好調なわけではない。
◆ 要因は「接戦時の強さ」
では、なぜロッキーズが現在16勝10敗で地区首位に立っているのだろうか。その要因は、「接戦時の強さ」にある。ロッキーズの全26試合中1点差試合は8試合あるが、すべてに勝利している。今季、1点差試合を一つも落としていないチームはメジャー全体でもロッキーズだけである。
接戦に強いロッキーズを支えているのが抑えの切り札、グレグ・ホランドの存在だ。ホランドはここまで12試合に登板し、防御率は1.50。11度のセーブ機会をすべて成功させている。ホランドは、カンザスシティ・ロイヤルズ時代の2013年から14年の2年間に合計94セーブを挙げるなどクローザーとして大活躍。2年連続でオールスターにも選出されている。
2015年は右肘痛に悩まされながらも32セーブを挙げたが、9月に戦線を離脱すると、10月にはトミー・ジョン手術を受けた。ホランドの離脱後もロイヤルズは快進撃を続け、30年ぶりの世界一に輝いたのは記憶に新しい。
ホランドは、2016年をリハビリに費やし、一度も登板することなく終えると、オフにはロイヤルズを解雇されてしまう。そこでホランドに白羽の矢を立てたのがロッキーズだった。今年1月に1年契約を結ぶと、開幕からクローザーとして定着。今に至っている。
2年前の世界一の瞬間に歓喜の輪に入れなかった悔しさを胸に、ホランドは新天地で完全復活を果たせるだろうか。
文=八木遊(やぎ・ゆう)