コラム 2017.05.05. 15:30

好調・福良オリックス、1勝2敗からの脱却と「また明日」の意味

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オリックス・福良淳一監督(C)KYODO NEWS IMAGES

どら増田のオリ熱魂! ~第1回~


 ペナントレース開幕から1カ月が経過したプロ野球。昨年パ・リーグ最下位のオリックスはここまで16勝10敗、貯金6の2位と好調を維持している。(※5月4日現在)

 この2年間は、2014年に最後まで壮絶な首位争いを繰り広げたチームとは思えぬほど、チームも、球団も、そして何よりもファンが、もがき、苦しみ、悔しい思いをしてきた。

 本拠地で開幕を迎えた今季も、楽天を相手にいきなりの3連敗。「今年もダメか…」と落胆したファンも多かっただろう。しかし、その後の西武戦で連勝したのがキッカケとなり、4月8日の日本ハム戦に勝利すると、以降は実に3年振りとなる貯金生活を送っている。


“1勝2敗”からの脱却


 「プロ野球というのは、2勝1敗すれば優勝で、1勝2敗だと最下位なんですね。今年のウチは1勝2敗だったということです」

 昨秋、オーナーへのシーズン報告のためオリックス本社を訪れた福良淳一監督とともに会見に臨んだ宮内義彦オーナーは、このように持論を展開した。

 貯金生活に入ってから、チームが連敗を喫したのは4月12日からのロッテ戦(ZOZOマリン)と、5月3日からの楽天戦(Koboパーク)という2連敗が2回のみ。ロッテ戦で連敗した後も5連勝で持ち直し、貯金消滅の危機を乗り切ってきた。シーズンはまだ始まったばかりだが、宮内オーナーの言葉を借りれば、今のチームは“1勝2敗のチーム”ではない。


確かな成長と、残る課題


 「選手も何とかなると思っている」

 4月27日の西武戦で今季初のサヨナラ勝ちを収めたオリックス。その試合後、福良監督はベンチのムードについてこう語った。今年は1点差ゲームを4勝3敗と勝ち越しているほか、敗れた試合でも最後まで反撃をする場面が多く見られる。

 また、16勝のうち実に13勝を先発投手があげていることからもわかるように、先発投手が試合を作れず、5回未満に降板した試合はわずか3試合のみ。うち2試合は中継ぎ陣の踏ん張りと打撃の援護により勝利を収めている。

 個人投手ランキングには金子千尋、西勇輝、ブランドン・ディクソン、松葉貴大の4選手が名を連ねており、チーム防御率2.78はリーグトップ。先発防御率2.55は12球団トップの数字だ。試合が大きく崩れていないのも「何とかなる」と選手が思える要因だろう。


 「まだミスは多いですよね。そこが課題」

 指揮官は手応えを口にしつつも、注文も忘れない。

 かねてから掲げていた「隙のない野球」をするため、昨年の高知秋季キャンプから今年の宮崎春季キャンプと、監督、コーチ、選手、スタッフの全員が一体となり、守備や走塁、バント、そしてチームバッティングの練習に徹してきた。

 選手にとっては地獄のキャンプだったわけだが、シーズンが始まるとこれまで失敗が多かった送りバントが「33」と12球団トップになったり、逆方向のバッティングで塁を進める場面も少なくなく、厳しい練習の成果はしっかりと現れている。

 その一方で、失策17はリーグワースト2位と依然として多い。守備のミスが失点に絡むケースもあるだけに、「隙」が「仇」になる前に修正しなければいけない。


チームに浸透する「また明日」


 「監督が試合後の囲み会見の最後に『また明日がんばります』って言いますよね。1戦、1戦をどう勝っていくのかを考えるだけで、チームはまだ先を見る余裕なんてないんですよ」

 開幕からチームに帯同している森川秀樹広報部長に「この連戦は勝ち越したいですね」という話をすると、こんな答えが返ってきた。取材メモを読み返してみると、確かに福良監督の談話からは勝敗に関わらず「また明日」という言葉で締められていることが多い。

 また、選手のヒーローインタビューからも「また明日」、「1戦、1戦」という言葉がよく聞かれる。そのことからも、今年はチーム全体がひとつの方向を向いていることがわかる。T-岡田が下山真二打撃コーチに相談する形で始めた選手ミーティングも、チーム内の意思疎通を図る大きな役割を果たしているようだ。

 「みんな自分がやらなきゃいけないことを、ようやくわかるようになってきた」

 そう語る指揮官の表情は“仏の福良”そのもの。「隙のない野球」の先には球団統合後、まだ誰も見たことがない未知なる世界が待っていると信じたい。


文=どら増田

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