◆ 東京ドームで2勝目も…
ケガで苦しみ続けた男が完全復活を印象づけた。
5月17日、巨人戦の先発マウンドに上がったヤクルトの由規が今季初勝利をマーク。巨人戦での白星は2011年9月3日以来、約6年ぶりだという。
何よりも7回2安打無失点というほぼ完璧な内容が光る。しかも、150キロを超える直球を連発し、かつて自身の代名詞だった豪腕が戻ってきた。昨季、投手陣の崩壊により5位に沈んだチームにとっては、この上ない朗報だろう。
しかも、東京ドームでの勝利という点にも大きな価値があった。ヤクルトは翌18日のゲームも石川雅規の好投により1-0で競り勝ち、東京ドームでの今季2勝目をマーク。昨季の同球場における勝利数を早くも上回った。そう、昨季のヤクルトは東京ドームでわずか1勝(10敗)という散々な成績だったのだ。
リーグVを果たした2015年でさえ、東京ドームでは3勝8敗、勝率.273という苦しい成績。チームにとっては鬼門とも言える球場で“昨年超え”を果たし、ここから上昇気流に乗っていくかと思われた。ところが、あれから10日が経った今、チームは最下位と0.5ゲーム差の5位というポジションにいる。
◆ ホームでの強さを相殺するビジターでの弱さ
東京ドームに限らず、実はビジター全般を苦手としているヤクルト。下記は、セ6球団のホーム・ビジター別の成績だ(5月26日終了時点)。
【セ6球団のホーム・ビジター別成績】※H:ホーム、V:ビジター
▼ 2017年
阪 神 H:14勝9敗(勝率.609) V:12勝9敗(勝率.571)
広 島 H:17勝5敗(勝率.773) V:10勝14敗1分(勝率.417)
巨 人 H:10勝10敗(勝率.500) V:13勝12敗(勝率.520)
DeNA H:11勝13敗1分(勝率.458) V:10勝10敗1分(勝率.500)
ヤクルト H:13勝9敗(勝率.591) V:6勝17敗(勝率.261)
中 日 H:12勝11敗2分(勝率.522) V:6勝15敗1分(勝率.286)
▼ 2016年
広 島 H:51勝20敗1分(勝率.718) V:38勝32敗1分(勝率.543)
巨 人 H:40勝31敗1分(勝率.563) V:31勝38敗2分(勝率.449)
DeNA H:38勝33敗1分(勝率.535) V:31勝38敗2分(勝率.449)
阪 神 H:31勝39敗1分(勝率.443) V:33勝37敗2分(勝率.471)
ヤクルト H:40勝30敗1分(勝率.571) V:24勝48敗(勝率.333)
中 日 H:32勝36敗3分(勝率.471) V:26勝46敗(勝率.361)
昨季に続き、広島のホームでの異常なまでの強さも目を引くが、ヤクルトのホームとビジターの成績のギャップもまた異常と言える。
昨季、ホームでは2位の巨人を上回る勝率.571を残しながら、ビジターでは最下位・中日をも下回る勝率.333。今季はホームで6割近い勝率を誇る一方で、ビジターでは勝率.300を割り込むなど、昨季以上にホームとビジターの成績格差が広がっている状況だ。
試合数が多い本拠地球場に合わせたチーム作りを行うことは当然であり、その点では「ホームで強い」ことはチーム編成の成功を表している。とはいえ、さすがにビジターにおけるここまでの低成績は問題である。
26日の中日戦も、勝利まであとアウトひとつというところからの4連打でまさかの逆転サヨナラを許すという悪夢を見た。どこかでこの嫌な流れを断ち切り、“内弁慶”を克服することこそが、ヤクルトが上位進出するための鍵のひとつだと言えそうだ。
文=清家茂樹(せいけ・しげき)