右の大砲に開花の兆し…
現在セ・リーグ2位につける阪神。「夏の甲子園」開催期間の長期ロードも16勝10敗1分と6つ勝ち越して終え、2年ぶりのAクラス入りへ順調に歩みを進めている。
戦力的には大黒柱のメッセンジャーを故障で欠いており、残る1カ月強の戦いは厳しくなることが予想されているが、そんなチームの中で熱視線を浴びる若手選手が出てきた。24歳の外野手・中谷将大である。
福岡工大城東高から2010年のドラフト3位で入団し、今年でプロ7年目。期待とは裏腹になかなか出番を得られないでいたが、昨季は若手を積極的に起用する金本知憲監督の下でキャリア最多となる64試合に出場。打率.266、プロ初含む4本の本塁打を放つも、レギュラー奪取までは至らなかった。
それが今季はここまでで107試合に出場。過去6年間の通算を上回る出場を果たすと、打率は.242も本塁打は16本に激増。8月22日からの対ヤクルト3連戦では3試合連続で本塁打を放つなど、その素質は開花寸前だ。
新庄以来の快挙へ!
阪神はここまで115試合を消化し、今季の残り試合は28試合。この間に中谷があと4本のアーチを描けば、シーズン20本塁打に到達する。
大砲不在、特に日本人の若き長距離砲が長らく出ていない阪神。25歳以下の日本人選手によるシーズン20発到達はというと、1993年の新庄剛志が最後。中谷が20本塁打に届けば、実に24年ぶりという快挙になるのだ。
ちなみに、新庄は1993年に21歳の若さで23本塁打をマーク。それ以前にさかのぼると八木裕(1990年/25歳)や岡田彰布(1981年/24歳)、掛布雅之(1976年/21歳)、藤田平(1971年/24歳)、田淵幸一(1969年/23歳)...と球団史にその名を刻んだ偉大な打者たちが並んでいる。(※年齢は満年齢)
このように、中谷は阪神に現れた待望の新・和製大砲候補なのだ。今年が満24歳の中谷にはもう1年チャンスがあるとはいえ、まずは今季中に偉大な先輩たちに続く記録を打ち立ててもらいたいところ。
ただし、大きな期待がかかる一方で、まだまだ課題が多いのも確か。たとえば今季記録している16本の本塁打は全て左方向に引っ張って叩き込んだものであり、長距離砲としてレベルアップしていくためには広角に打球を飛ばす技術というのも必要になってくる。
また、ヤクルトとの3連戦では大暴れを見せたものの、その3戦目の第2打席で一発を放って以降は15打席に渡って無安打を継続中。巨人との3連戦では走者を置いた場面での凡退が目についた。いかにムラを少なくし、好調な時期を維持できるかというところも成長の大きなカギとなる。
29日からは久々に本拠地・甲子園に戻っての戦い。相手は3戦連発を決めたヤクルトだ。まずは連続無安打に終止符を打ち、17本目の一発を…。甲子園に帰ってくる若き大砲候補に注目だ。
文=八木遊(やぎ・ゆう)