規定到達捕手は12球団で2人だけ…
“不動の正捕手”という考え方は時代遅れなのか…?
今季もここまでで規定打席に到達している捕手は12球団で2人。ヤクルトの中村悠平と巨人の小林誠司だけで、パ・リーグには一人もいない。
そんな数少ない規定到達捕手を輩出している巨人でさえも、クライマックスシリーズ争いで負けられない戦いが続くなか、2年目捕手・宇佐見真吾を一軍に抜擢。“正捕手”の小林の代打で出場させたのを皮切りに、8月25日の阪神戦では先発マスクを託すなど、思い切った起用を見せている。
一軍での経験には乏しいものの、宇佐見の打棒は小林に刺激を与えるのに十分すぎるものを発揮。ファンからは「もっと宇佐見を見たい」という声も挙がっているほどだ。
このように、143試合もある長いシーズンをひとりの捕手で乗り切ろうという考えは、現在のプロ野球界では少数派となりつつある。
もちろん主戦捕手は据えるものの、かつてのように絶対的な存在ではなく、故障や休養に備えて2番手・3番手の捕手を用意するのが一般的。レギュラーと控えの差が少ないチームほど、好成績を残す傾向にあるのは間違いない。
併用が当たり前になっている今、各球団の『捕手別の投手成績』はどうなっているのか。なかでも各捕手のリードの傾向が如実に出るであろう“スタメンマスク時の成績”をしらべてみた。
先発投手との相性が大きなポイント
【セ・リーグ】
▼ 広島(119試合:71勝44敗)
※先発に勝敗がついた試合=82試合 53勝29敗/防御率3.73
・捕手
会沢 翼(73試合)34勝18敗/防御率3.81
石原慶幸(42試合)18勝10敗/防御率3.46
磯村嘉孝( 3試合) 1勝 0敗/防御率5.00
白浜裕太( 1試合) 0勝 1敗/防御率6.75
▼ 阪神(115試合:63勝51敗)
※先発に勝敗がついた試合=81試合 40勝41敗/防御率3.65
・捕手
梅野隆太郎(80試合)26勝30敗/防御率3.32
坂本誠志郎(21試合) 8勝 7敗/防御率4.89
岡崎 太一(14試合) 6勝 4敗/防御率3.82
▼ DeNA(115試合:59勝52敗)
※先発に勝敗がついた試合=74試合 43勝38敗/防御率3.85
・捕手
戸柱恭孝(80試合)25勝31敗/防御率4.18
嶺井博希(21試合)11勝 3敗/防御率2.94
高城俊人(14試合) 7勝 4敗/防御率3.33
▼ 巨人(115試合:57勝57敗)
※先発に勝敗がついた試合=85試合 48勝37敗/防御率3.36
・捕手
小林 誠司(107試合)47勝30敗/防御率3.19
実松 一成( 5試合) 0勝 5敗/防御率6.20
宇佐見真吾( 2試合) 1勝 1敗/防御率8.00
相川 亮二( 1試合) 0勝 1敗/防御率3.86
▼ 中日(117試合:48勝64敗)
※先発に勝敗がついた試合=78試合 34勝44敗/防御率4.20
・捕手
松井雅人(57試合)18勝19敗/防御率4.31
杉山翔大(28試合) 5勝10敗/防御率3.79
木下拓哉(27試合) 9勝13敗/防御率4.37
武山真吾( 5試合) 2勝 2敗/防御率4.45
▼ ヤクルト(117試合:40勝75敗)
※先発に勝敗がついた試合=81試合 28勝53敗/防御率4.29
・捕手
中村悠平(98試合)23勝45敗/防御率4.19
西田明央(16試合) 4勝 7敗/防御率5.06
井野 卓( 3試合) 1勝 1敗/防御率3.66
【パ・リーグ】
▼ ソフトバンク(117試合:78勝39敗)
※先発に勝敗がついた試合=89試合 58勝31敗/防御率3.46
・捕手
甲斐拓也(68試合)34勝16敗/防御率3.36
高谷裕亮(47試合)24勝14敗/防御率3.53
鶴岡慎也( 2試合) 0勝 1敗/防御率5.79
▼ 楽天(109試合:64勝44敗)
※先発に勝敗がついた試合=80試合 45勝35敗/防御率3.46
・捕手
嶋 基宏(82試合)37勝24敗/防御率3.61
足立祐一(20試合) 7勝 8敗/防御率3.09
細川 亨( 5試合) 1勝 3敗/防御率2.35
下妻貴寛( 2試合) 0勝 0敗/防御率4.00
▼ 西武(115試合:65勝48敗)
※先発に勝敗がついた試合=87試合 52勝35敗/防御率3.78
・捕手
炭谷銀仁朗(81試合)35勝25敗/防御率3.65
岡田 雅利(34試合)17勝 7敗/防御率4.14
▼ オリックス(112試合:51勝60敗)
※先発に勝敗がついた試合=79試合 33勝46敗/防御率3.64
・捕手
若月健矢(76試合)19勝32敗/防御率3.50
伊藤 光(33試合)14勝11敗/防御率3.81
山崎勝己( 3試合) 0勝 3敗/防御率5.19
▼ 日本ハム(112試合:43勝69敗)
※先発に勝敗がついた試合=82試合 28勝54敗/防御率4.47
・捕手
大野 奨太(43試合) 9勝16敗/防御率4.22
市川 友也(40試合)14勝19敗/防御率4.32
清水 優心(22試合) 3勝15敗/防御率5.32
黒羽根利規( 7試合) 2勝 4敗/防御率4.50
▼ ロッテ(113試合:38勝74敗)
※先発に勝敗がついた試合=84試合 27勝57敗/防御率4.35
・捕手
田村龍弘(79試合)23勝41敗/防御率4.33
吉田裕太(31試合) 4勝14敗/防御率4.18
江村直也( 2試合) 0勝 1敗/防御率9.00
金沢 岳( 1試合) 0勝 1敗/防御率6.00
やはりというべきか、両リーグ首位を快走する広島とソフトバンクはレギュラー捕手と2番手捕手の差があまりなく、巨人やヤクルトのようなレギュラー捕手が固定されているチームは2番手以降の捕手が脆弱になりがちだ。
また、レギュラー捕手を起用しているときに負け越し、2番手以降の捕手が先発時に勝ち越している阪神やDeNA、オリックスに共通するのは、投手によって合う/合わないがあると推測できる。
たとえば阪神で言うと、今季11勝を挙げてブレイクした秋山拓巳。右腕のここまでの全4敗は、いずれも梅野が先発マスクを被ったときだった(勝ち星は6つ)。DeNAも浜口遥大と今永昇太の両左腕は、正捕手の戸柱と組むよりも浜口-高城、今永-嶺井コンビの方がそれぞれ成績はいい。
こうして調べてみると、意外な事実も浮かび上がってくる各チームの捕手事情。シーズン終盤の勝敗はもちろん、投手のタイトル争いにも直結してくるだけに、注目してみると面白いかもしれない。
文=福嶌 弘(ふくしま・ひろし)