球団史上初の“新人4番弾”
9月1日、阪神のスタメン発表でどよめきが起こった。
「4番・一塁 大山」――。大卒ドラフト1位ルーキーが初めて4番の座に就いたのだ。
22歳は聖地・甲子園でその重圧に負けること無く、3回の第2打席で先制の適時二塁打をマーク。1安打1打点の活躍を見せると、翌2日の試合では2-4と2点を返された直後の3回に貴重な6号ソロ。いきなりの4番抜擢にも関わらず2試合続けて打点を叩き出した男に対して、指揮官も「大したもの」と賛辞を贈った。
阪神の新人選手による4番での本塁打は史上初の快挙。若手選手を積極的に起用していく金本知憲監督の下、新たな和製大砲候補がその才能を開花させようとしている。
ファンに広がる「大山で良かった」の声
思えば昨年のドラフト会議では、大山の1位指名に疑問を抱く人が多かった。
たしかに『大山悠輔の単独1位指名』は、最大のサプライズであった。もともと阪神の1位は佐々木千隼(現ロッテ)を予想する声が多く、競合も覚悟の上で特攻するものと思われていたのだ。
それがフタを開けてみれば大山を指名。すると各球団が牽制しすぎたあまり1巡目で佐々木を指名する球団がなく、まさかの佐々木を単独指名できていたという展開に。そんな流れも相まって怒りをぶつけるファンも少なくなかった。
「阪神のドラフトは失敗」…。こんな心無い声も多く挙がり、こうした外野の声は大山の目や耳にも当然入っていたことだろう。
しかし、今になってみるとどうだろうか。佐々木は11試合の登板で2勝7敗、防御率5.61とプロの壁に苦しみ、二軍でも防御率4.03と大苦戦。7敗目を喫した7月5日の楽天戦を最後に一軍登板から遠ざかっている。
一方の大山は一軍デビューこそ佐々木よりも遅くなったものの、ここまで53試合の出場で打率.264、6本塁打、27打点と活躍。特に8月以降は打線に欠かせない存在として輝きを放っている。
プロ入り前の評価を実力で覆す――。阪神・大山悠輔のこれからに期待が高まる。
文=清家茂樹(せいけ・しげき)